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韓国と日本 いつ「友達」と呼べるのか 5月2日(日)

 Yさん、先日は長電話をしてしまい、失礼しました。

 1910年に日本が韓国を植民地にしてから、今年で100年になります。節目の年にYさんの祖国を久々に取材してみたいと思い、最近の様子をうかがった次第です。

 Yさんが長野市の松代大本営跡の見学に来たのが1990年。早いものであれから20年です。

 この間、濃淡はあるものの韓国の戦争被害を取材したり、友人たちと情報交換をしたりしてきました。限られた体験ですが、日韓の距離が近くなったと実感する半面、ある面では溝が広がっているのではとの思いもあります。

   <「韓流」の定着>

 「日韓関係が深まった」と感じるのは、「韓流ブーム」の定着でしょうか。

 2002年に韓国で放映された「冬のソナタ」は翌年から日本に上陸し、大人気になったことはご存じの通りです。

 「シュリ」や「友へ チング」といった映画も忘れられません。日本のドラマや映画にはなかった人間関係の描き方や現代史が新鮮に映りました。

 近所のレンタルビデオ店に行けば、韓国作品のコーナーが必ずあります。語学講座に通う人たちが増え、簡単な会話ができるようになったと話す女性たちは周囲に何人もいます。韓国旅行はごく当たり前になりました。

 「だからといって、歴史の理解が深まったとはいえないのでは…」。Yさんは先日の電話で、こう言いましたね。

 韓流ブーム以前、韓国で日本のアニメや音楽などへの関心が高かったのに比べ、日本では韓国文化への関心はさほどではなかった。それを考えれば、画期的な変化だと思いませんか。歴史へ理解が広がる好機だと思います。

   <加害責任はどこへ>

 ただ、気掛かりな点があるのは事実です。

 例えば、日本の植民地支配や韓国の戦争被害についての記事に対する読者の反響の変化です。過去の日本の外交政策を正当化する立場からの声が多くなったと実感しています。

 先日も、戦前の「創氏改名」について触れた記事に、「自由意思であり、強制ではなかった」といった反論が寄せられました。反響は歓迎ですが、都合のいい内向きの解釈や物語が広がっていないか気になるのです。

 1991年の秋に韓国を訪ねて、Yさんの通訳で戦争の被害者を何人も取材したときのことを思い出します。

 長野県で働かされ、体が不自由になったと話す男性、旧日本軍に徴用されて犠牲となった夫への思いを語る老婦人、従軍慰安婦としての体験を語り始めた女性、在韓被爆者…。

 「日本の警察に拷問された」「正装して出掛けたら、墨汁をかけられた人もいる」「日本風に名前を変えさせられた」−。植民地支配の実態や置き去りにされた補償問題について、せきを切ったように証言が飛び出しました。

 シリーズで記事にしたところ、「もっと知りたい」「日本に来て証言してもらいたい」といった声が、数多く寄せられました。実際に元従軍慰安婦の証言を聞く集会などには、若い人たちもたくさん参加していました。

 韓国の民主化が進み、当事者たちの戦後補償の運動が活発になってきた時期でした。韓国人被害者の声が、直接日本に向けて発信されたのです。

 裏返せば、戦争の「被害者」としての意識が強かった日本人が、「加害者」の実像を突き付けられたと言っていいでしょう。

 同じ敗戦国のドイツは、終戦直後から近隣諸国から加害責任を厳しく問われ続け、さまざまな和解の道を探る道を歩いてきました。いまは欧州連合(EU)の中軸を担う存在です。

   <「EU」への道は>

 日本と韓国は、戦後45年ほど経過した90年前後に、ようやく「本音」の議論ができる土壌ができつつあった−。欧州の戦後から半世紀近く遅れて巡ってきたチャンスだったと思っています。

 その機会がいまに生かされているのか、自問せざるをえません。この20年の間に日本のどこが変わり、どこが変わらなかったのか。日韓関係のなにが変わり、なにが変わらなかったのか、と。

 目に見える変化は経済でしょうか。90年当時の国民1人当たりの国内総生産(GDP)は、日本は韓国の約4倍でしたが、08年には2倍まで縮んでいます。このところ、中国の台頭が著しく、アジアの経済地図は大きく塗り変わりつつあります。

 「アジアはEUのような関係とはほど遠い」。電話の向こうのYさんの言葉が耳に残っています。経済の流れが距離を縮めるとしても、「近しい」と実感できるまでには、日韓双方の懸命の努力が必要になると考えます。続きはまたゆっくり話しましょう。

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