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宇宙飛行士の山崎直子さんが天から詠んだ一句、〈瑠璃(るり)色の地球も花も宇宙の子〉。飛んだ者だけに見える世界がある。大気の変が花を遅らせ、政治までが春寒の中にあった4月の言葉から▼沖縄で「なんくるないさあ」といえば「なんとかなるさ」の意。「いい言葉。でもそれでは勝てない」と、春の甲子園を制した興南高校の我喜屋(がきや)優監督。「子どもの可能性は無限大。選手たちは毎日生まれ変わっている」▼普天間飛行場の県内移設に反対する県民大会に9万人が集う。「危険を危険と感じなくなる怖さ。この状況が日常になりすぎ、私の感覚は鈍くなった」と普天間高校の岡本かなさん(17)。「フェンスで囲まれているのは基地? 私たち?」。首相が「なんくるないさあ」では困る▼唱歌「春の小川」のモデルは都心の渋谷川支流。暗渠(あんきょ)となった川を復活させる運動を立ち上げた尾田栄章さん(68)は「川が埋まって50年以上。街の記憶のフタを開けることから始めないと」と語る▼「ドバッと」など関西のオノマトペ(擬音、擬態語)を仲間と本にした豊島美雪さん。「この時代、互いに共通の認識を持ちたいがために厳密さを求めがち。相手の受け止め方に遊びを残すオノマトペは関西人の優しさの象徴です」▼帝国ホテルの地下にある靴磨きコーナー。40年以上働くキンちゃん(77)は、米軍将校に習った腕でスターの足元も光らせてきた。「心をこめてシューシャインすれば、靴はアンサーしてくれる。この10分だけは世界の一流たちを独占できる」。グッドな心意気。