【コラム】グローバル・スタンダードが通じない中国

 ヘビがゾウを飲み込んだ-。先ごろ、中国の自動車メーカー、吉利汽車がスウェーデンのボルボを買収した際の中国メディアの評価だ。1998年に設立され、12年目を迎える吉利汽車は、世界の自動車業界ではひよこのような存在にすぎない。中国での市場シェアは4%で、やっと10位圏内に入る規模だ。吉利汽車の昨年の売上高は24億ドル(約2240億円)で、ボルボの124億ドル(約1兆1600億円)の5分の1にも満たない。さらに、吉利汽車はボルボの買収費用18億ドル(約1680億円)に加え、9億ドル(約840億円)を追加投資する意向を示した。つまり、年間売上高を上回る投資を行うことになる。

 

 自動車業界では、国際的な合併・買収(M&A)の成功例がほとんどない。しかし、吉利汽車の「ギャンブル」には注目すべき点がある。まず、背後に中国政府が存在している点だ。中国の国有銀行が「賭け金」を提供し、工業情報化相が買収契約の締結式にも出席した。自動車業界に対する中国政府の関心の高さが読み取れる。

 吉利汽車はボルボの中国での販売台数を昨年の3万台から2015年までに20万-30万台に増やすと宣言したことも注目点だ。海外が駄目なら、中国の内需市場でボルボの再生を図れるとの計算だ。中国の自動車市場が米国を上回る世界最大規模に浮上したことに対する自信感があふれている。

 中国は今や「世界の工場」であると同時に「世界の市場」でもある。自動車をはじめとする消費財の需要が爆発的に伸びており、高速鉄道、原子力発電などインフラ整備も世界で最も活発だ。改革開放30年間の高度成長で中産階級が大きく増えた上、世界的な金融危機で中国政府が強力な内需拡大策を取っているおかげだ。

 中国市場の巨大化に伴い、世界経済や外国企業もその恩恵を受ける。しかし、払うべき代償も大きい。ドイツのシーメンスがサウジアラビアでの高速鉄道事業の単独入札を放棄し、中国のコンソーシアムに合流したのが好例だ。中国は高速鉄道の建設が韓国より10年遅れた。しかし、既にサウジアラビアやベネズエラで高速鉄道事業を受注する成果を上げた。中国での高速鉄道建設に参加した先進国のメーカーから半ば強引に技術供与を受けた結果だ。韓国が海外で初受注を目指すブラジルの高速鉄道事業も中国の攻勢で先行きが不透明だ。原子力発電分野でも今後同じことが起きるだろう。

 先進国は「中国が外国の高速鉄道技術を盗み、海外受注に乗り出している」と批判するが、これといった対応策はない。中国の自動車業界が露骨なコピー車種を売りさばいても、先進国のメーカーが手をこまぬいているのと同じだ。法的手段を講じても補償を得るのは困難な上、中国市場を失いかねないからだ。

 中国の経済的地位が高まり、市場の力が強まる中、グローバル・スタンダードが通じない中国経済の不公正さが一種の「チャイニーズ・スタンダード」となってきており、その傾向は強まる一方だ。それが世界経済の新たな火種となっている。

金基天(キム・ギチョン)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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