大地を喰らう


<オープニング>


 誰もいない。
 誰もいない。
 くらいよるの路。
 くらい、くらい、よるの神社。
 小さな影ひとつ、ひたひたと忍び、歩き往く。
「ちょっとアンタ、ちゃんと見張ってなさいよね!」
 大きな影ひとつ。
 五つの闇従え、虚ろな視線を虚空へ向ける。
 小さな影の頬が月光を弾く。
 女だ。
 背の低い、小さな、小さな、少女だった。
 少女はその静謐たる大地に視線を向ける。
 手を伸ばし、懸命にそれを刻んだ。
 大地に。
 大地に、刻んだ。
 ――がりがりと、がりがりと、音が響いた。
 描くはたったひとつ。妖しき紋様。
「よっし、これで完成っと」
 少女は満足げに口の端を引き上げる。
 それから、懐に手を忍ばせた。
 取り出したるは光り輝く神秘の力。
 さらりとそれを振りかけて、少女は待った。
 じっと、じっと、待った。
 ――そうして、異変は起こされる。
「任務完了っと」
 地面に描いた紋様をぐりぐりと踏み消して、小さな妖狐は腰に手をあて振り向いた。
 視線を受けた黒尽くめの男の長いコートの裾が翻る。
 頷くわけでもない。
 ただ生気の無い顔をして、男は虚ろな視線で一点を見詰め続けた。
 一歩踏む。
 闇に紛れ埋もれていた男の切っ先が、がりりと砂利を掻く。
 月光が滑り刃が艶かしい色を帯びる。
 五つの影が従うように歩き出す。
 じゃらり。
 じゃらり、じゃらりと鎖鳴る。
 少女はまた、ひそり嗤った。
 嗤って、そして。
 ひたひたと闇の中へ還りゆく。

「皆さん集まりましたね。それでは、始めま」
 がんっ――ごん。
 鈍い音が響いた。
 一咲・花名(高校生運命予報士・bn0287)は小さく呻きながら顔を上げると、悲愴な面持ちで視線を逸らし、じっとあらぬ方を見た。
「これは、妖狐の文曲さんが偶然手に入れた情報です」
 こほん。
 小さな咳払いをして、花名は地面に座したまま手にしていたしわくちゃの資料を広げた。
「妖狐たちが今度は稲荷神社を使って悪さを企んでいるようなんです」
 今回の事件では一般人が巻き込まれるといった事はないが、放っておけば全国に六万社以上とも言われる稲荷神社を使った一大情報網が構築されてしまうらしい。
「放っておくわけには、いきません」
 花名は集まった能力者たちの顔を確認し、こくりと頷いた。
「この作戦を行っているのは、妖狐と小規模の百鬼夜行の地縛霊です。しかも、どちらかといえば隠密仕様――戦力としては然程高くはないと思います」
 花名はそこまでを言い終えると、しわくちゃのリストに視線を落とした。妖狐が現れる稲荷神社の場所をリストアップしたものだ。
「皆さんには北海道北部にある稲荷神社へ向かって頂くことになります。神社の周囲に隠れていれば妖狐の方から近付いてきます。そこを逃がさず倒してください」
 妖狐は周囲に一般人がいないのを見計らって現れるため、一般人の被害などを考える必要はない。
「敵は背の低い、赤毛の妖狐です。そして、その妖狐が従えているのが――百鬼夜行の地縛霊、です」
 百鬼夜行の地縛霊は黒衣の男。
 動きは俊敏で真っ先に切り込んでくる。手にした刀で連続で斬りつけ、近接する者全てを一閃で薙ぐ攻撃を放つ。
「体力に秀でたパワータイプです。一撃は重く、深い。……けれどまだまだ半端者ですね。援護ゴーストは全部で五体です」
 内二体は女の地縛霊。それから鬼が二体、残りは狸に似た姿をした妖獣だ。
 黒髪の女の地縛霊は、超眠りを与える攻撃や、遠距離爆発攻撃を放ってくる。また、対象を強化する癒しの力も持っている。
 栗髪の女の地縛霊は、超麻痺を与える攻撃や、暗殺効果のある直線攻撃を放つ。範囲回復の技も持っている。
 笑顔と憤怒、相反する表情を浮かべた二体の鬼。知能は低く、兎に角全力で殴りかかってくる。
 サラシを巻いた狸は、追撃や気絶効果のある攻撃を放ってくる。まだ、尻尾で殴られると猛毒に掛かってしまう。
「決して油断してはいけません。妖狐は形勢不利と悟れば地縛霊に足止めをさせて、自分は逃げようとする可能性もあります。逃走を阻止するような工夫があると良いと思います」
 花名は説明を終えると、顔を上げて能力者たちを見た。
「妖狐の組織の強大化は、何としても阻止しなければなりません。儀式の後でこの情報網を消すことはできないんです。だから、まずは確実にここを止めましょう」
 

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参加者
神夜・遥斗(血濡れ鬼の刻印・b03993)
氷采・亮弥(青藍ヴィエチニー・b16836)
北坂・理都(クローバーのお姫さま・b17841)
黒霧・慎(蒼黒の使者・b26081)
二瀬・颯軌(風天・b38458)
シュカブラ・キアロ(白従・b41558)
一七夜月・氷辻(運命を結ぶリボン・b44022)
桜庭・景(桂跳・b56009)
川辺・結花子(夢現を彷徨う者・b60907)
四宮・菊里(軍星・b65501)



<プレイング>

プレイングは1週間だけ公開されます。

神夜・遥斗(血濡れ鬼の刻印・b03993)
稲荷神社を使った一大情報網か…、全く碌でも無い
さて、仕事の時間か、――果すべき役目の

先ず二手に別れ、出入口付近で隠れて待機を
出る時は一斉に、氷采の合図を開始として前後からの挟撃

俺はA班(道の前側/敵進行方向)でB班の氷采と男の地縛霊牽制に
合図を出す氷采に攻撃が集中しない様にフォローを
距離があり廻り込めなければ、初手は魔眼で男を狙い
可能ならば近接し通常攻撃を仕掛け牽制を始めよう
移動後に近接しきれなければ、奏甲で強化の後に近接を目指す
(無茶な突出と孤立はしない様には注意)
A班は近接まで余裕あればフォローして貰えたら幸い、他の敵の撃破は頼む

悪いが余所見はしないで貰おう
男の力の使い様はきっと俺と同じ、なら力で衝突するまで
……さて行こうか

紅蓮は最後まで温存、魔眼での引き付けを主流に
呪いの視線を只――、気分は如何だ?
……答えは期待しちゃいないが

常に不意打ちに警戒、範囲は直撃しない様に確り構えて
追撃や吹き飛ばしも武器でのガードを試み、可能なら回避を
吹き飛んだ際は直ぐに体勢を立て直す

回復は攻撃の手が休まらない様に氷采とタイミングを合わせ
奏甲目安は体力の半分、使用は自分と氷采のみ
牽制を出来るだけ継続させる様、耐える様

敵が男のみになれば、もうやる事は一つだ
残した紅蓮撃で全力で
――赤の地獄に焼け堕ちろ、命の遣り取りは終わりにしようぜ?

撤退条件は皆と同じ認識で
妖狐は戦闘不能にし連れ帰る方向
最後まで気は抜かず、だな

氷采・亮弥(青藍ヴィエチニー・b16836)
――静かな夜だ
闇に蔓延り広がるは情報網、か。悪い冗談だな
何を企んでいるかは知らんが、全力で止めてみせる

○戦闘前
俺はB班の皆と物影に隠れ息を潜め
出入口付近で待機、妖狐たちが出入口を過ぎ充分境内に入ったら
「行くぞ、逃がすな!」
と大きく鋭く呼びかけ合図。高Iniを活かし素早く飛び出し
俺は道の後側、敵の背後をつく形で挟撃の陣の一端に

○戦闘
前衛
攻撃優先順位は狸≧鬼1>栗>妖狐=黒>鬼2>男
徐々に妖狐を包囲するよう意識し動く

俺は遥斗と男性地縛霊の牽制役
皆が攻撃に集中しやすいように
「お前の相手は、俺だ」
黒霧にフォローを願いつつ
高Iniで牽引、皆の動きを引っ張った上で
初手から躊躇の間も置かず男性地縛霊に肉薄し
クレセントを見舞う
速さ勝負で俺が負けるわけにはいかん
牽制だが倒すくらいの勢いでクレセントを連打

吹き飛ばしや追撃もガードを試み
追加効果が出ないよう腰を据えて構える
範囲も無防備に食らわんよう留意、但し退いたりはしない

妖狐逃亡時も男性地縛霊の牽制に専念。余所見は赦さんぞ
動線を塞ぎ、クレセントを叩き入れ進路を阻む
妖狐への援護など断じてさせん
皆を信じ身を張って壁になる覚悟だ。――抜かせるか!

ライカンは強化用ではなく回復用
火急時に備えHPには余裕を持ち
遥斗とタイミングを合わせ
男性地縛霊への攻撃の手が止まらんように使う

「付き従うのはいいが、…盲従とは感心せんな」
男性地縛霊を最後に止め

妖狐は逃がさんよう捕縛、確り見張る

北坂・理都(クローバーのお姫さま・b17841)

いつかは仲良くできるかもしれないけれど、今は手加減なしだからね☆
ちっちゃいからって負けてあげないよ♪


身を潜めて敵を待ち、B班として敵の背後を取り挟撃を狙う。

「うぇるかむ・とぅ・まい・らいぶ♪」
初手は必要なら有効範囲に移動してダンシングワールド使用。
地縛霊からの回復は織り込み済みで、序盤の手数交換を狙う。
(1体でもBSがかかれば、すぐに回復されても回復役とあわせて
2回分の行動を1手で制限できるので)

「いぇいっ、はーどこあ☆」
ダンシングワールドの成否を問わず、その後は味方の攻撃が
集中していないほうの鬼を攻撃し牽制。
十分に引き付けている状態ならブラストヴォイスで攻撃。

栗色の髪の地縛霊が倒れたら、ダンシングワールドを再使用。
護衛対策と妖狐の逃走阻止を兼ねているため、牽制の間から、
できるだけ妖狐に近づくようにしておく。

ヘブンズパッションは、
・気絶・超マヒ・超眠りが発生
・瀕死の味方がいて、サポート2人が赦しの舞使用
のいずれかの場合に使用。
優先度はサポート2人→男地縛霊の牽制役と自分→その他残HPの少ない順。
他の回復役に言葉で回復タイミングと対象を知らせ、回復漏れに留意。

撤退条件
本参加者半数の戦闘不能、かつ勝機のないこと。


お仕事終わりっ☆妖狐の子は連れて帰るのかな?かな?
よく考えたら、カッコいい男の子が何人もいるんだよねっ☆
ね、ね、メアド交換しようよ♪
って、もしかしてみんな彼女もちかな?かな? 残念★

黒霧・慎(蒼黒の使者・b26081)
全国6万以上のネットワーク……か。
ピンと来ないが、相当凄いことになりそうだ。
まあ、構築させなければ良い話だな。


一応灯りを準備。隠れている時には消しておく。

二手に分かれAが妖狐達に対して前、Bが後ろを取る形で前後挟撃。
俺はBの氷采、北坂、川辺、桜庭、木村の班。
隠れられそうな場所を探し、出入り口付近で身を潜めて待機。


氷采の合図で即戦闘へ。
まずは氷采が男性地縛霊の抑えに回れるようサポート。
こちら側に居(来)れば後衛に来させぬよう暫定的な壁に。
反対側に居れば他の敵が氷采の進行を邪魔しないよう牽制攻撃。
その際はダークハンド。複数巻き込めるようであれば暴走黒燐弾。

のち、俺は前衛として敵を抑える。主に鬼を抑えられれば。
黒燐奏甲で自己強化し、回復力も高めておく。
回復は旋剣の構えを主としHPが半分を目安に使用するが、
鬼の一撃が重い場合は早めの回復を心掛ける。

優先順は狸≧鬼1>栗>妖狐=黒>鬼2>男
栗色を倒すまでは回復誘発BS防止の為暴走黒燐弾優先。撃破後は複数巻き込み期待出来る時に。
妖狐が逃走を図れば最優先で妖狐へ攻撃。

鬼への単体攻撃の際は、気魄が通りづらそうなので攻撃アビの消耗を避け通常攻撃。
または次優先順の対象への攻撃とする。

撤退条件は皆に準じる。


妖狐へのとどめは避け、捕縛を目的。
戦闘不能後黒燐弾を使うことがあれば意識的に対象から外す。
連れ帰って色々と聞ければいいが、そう簡単に喋ってはくれないか。

二瀬・颯軌(風天・b38458)
今度も一体何を企んでるのやら。
まぁ良いことじゃなさそうだし、阻止させてもらうよ。


【用意】
サポートの木村さんの白燐光もあるけど
念の為懐中電灯を体に固定した状態で用意(待機中は消灯)


【班】
A:遥斗 シュカブラ 菊里 氷辻 颯軌 朱那
道の前側(敵進行方向)

B:亮弥 慎 理都 結花子 景 小夜
道の後側(敵背後)


【作戦】
二班に分かれ神社周囲に隠れ、イグニッション済の状態で待機。
亮弥君の合図で一斉に飛び出し敵を前後から挟撃に。

敵の退路を塞ぐためにもできる限り
敵を囲む形に陣形がとれるといいんだけど。


【戦闘】
優先順位
狸≧鬼1>栗髪の女>妖狐・黒髪の女>鬼2>男地縛霊

目標の敵が遠くにいる場合は陣形の維持を優先して近場の敵を狙う。


僕は前衛でクレセントファングでの攻撃。
後衛の仲間を守りつつ敵の数を減らす。
敵妖孤の動向にも気をつけておきたいけど
ずっと見てるわけにも行かないんで
仲間の声だけは聞き逃さないように。

ちっさいのには親近感沸きつつでも悪い子には容赦しません。
でっかいのにはもっと容赦しません。
ところで戦う時ってものすごい怒った顔相手より
ものすごい笑った顔の方が怖いね…!

クレファンが切れたらストランダムに
折角だから武器封じになってしまえー。

自己回復はHPが防具分を切ったら使う。
(移動後に攻撃が届かない場合は強化のため使用)


【戦闘後】
敵妖孤は捕縛、学園に連れ帰る。


【撤退条件】
本参加者の内5人戦闘不能勝ち目なしとみたとき。

シュカブラ・キアロ(白従・b41558)
●行動
A、B班に別れ神社の出入口付近で敵が来るまで隠れて待機。
リョウヤの合図で【A】は敵進行方向『前』側、【B】は『後』側に布陣。
まず挟撃にして、敵の逃走経路を断つ狙い。

俺は【A】で行動。
出るタイミングがずれないように集中して合図を待つ。

●戦闘
前衛。
アビは【ローリングバッシュ】を使用。

攻撃優先順は
【狸≧まず鬼1体>女(栗色)>妖狐=女(黒色)>残りの鬼>男】
陣形を維持できる範囲内で上の順にそって
優先度の高い敵から集中攻撃で叩いていく。

近接攻撃しかねえから戦闘はどうしても動き回ることになるが
包囲に穴空けたんじゃ本末転倒…敵の範囲攻撃への警戒も必要か。
特にA側で同じ前衛になる颯軌の動きは見逃さないように
動く時にも声をかけて立ち位置に注意できるようにしておく。

優先度の高い敵が遠い場合は無理に進まず手近を攻撃して牽制。
上手くJCが出て気絶させられれば御の字なんだが。
…バッシュって「しっぽゆるして」と内容的には同じなんだよな。
何この負けてられない感じ。もふもふは無いが俺だってやる時はやるぞ。
アビが尽きたら気魄で通常攻撃を。

回復は癒し手任せ。世話になる。
疲弊が激しい場合は少し退いて回復を待つが
自分でもガードや回避を出来るだけ試みる。

妖狐は不殺の方針。
逃走に出た場合は何を置いてもその阻止へ。
逃げるなよちっさいの、おにーさん達は怖くない。
叶えば戦闘不能に追い込み捕縛、学園につれていく。

撤退条件は皆に倣う。

一七夜月・氷辻(運命を結ぶリボン・b44022)
この夜、全国で同じように狐が暗躍しているようね
人を脅かすようなネットワーク、そんなものを作らせるわけには行かないわ

二手に分かれて出入り口付近で待ち伏せ
妖狐たちの前後をふさぐような形になるように
彼らが来るまでは物陰に隠れて見つからないように

わたしはA班
敵進行方向・前側に戦闘態勢を取れるようにしておく

亮弥さんの合図で挟撃
戦闘位置はわたしは後衛
初手からナイトメアランページで攻撃

攻撃の優先順位は、男性霊は抑えのお二人にお任せして
「狸≧鬼1>栗>妖狐=黒>鬼2」というのを念頭に置き
なるたけ沢山の敵を巻き込めるよう位置取りに気をつけつつナイトメアランページを叩き込むわ
貴方達の企みはわたしたちで潰してみせる
わたしにとっての大切な場所や人を守りたいように、誰かにとっての大切な場所や人を、きっと守ってみせるわ

周囲や自分のHPが半分以下になったらサイコフィールドで補強と回復
その際、他の人と回復が過剰にかさならないように十分注意

必ず、この戦いを勝ちましょう

妖狐が逃走しようとするのに気付いたら、止められそうな人に声をかける
逃がさないようこちらで攻撃できそうで、ランページが残っていたらそれで攻撃

戦闘不能になった妖狐は捕縛、学園に連れ帰る

戦闘が終わったら、お賽銭入れてお稲荷さんに手を合わせておくわ
お騒がせしてごめんなさい
おかげさまでこの夜の平和は守られました

撤退条件・本参加者5人戦闘不能で勝ち目ないとき

桜庭・景(桂跳・b56009)
銀ばら撒いて連絡網、…ねえ
詠唱銀てのは全く便利で厄介なこった
悪巧みは潰されて然り、だろ?
さ、大人しく正義の味方に倒されといてくれっかな(にや)


A:神夜/キアロ/四宮/一七夜月/二瀬/鴻影
B:氷采/黒霧/北坂/川辺/桜庭/木村
の二班に分かれ出入り口左右に潜伏
氷采の合図で
A班が敵進行方向前方側
B班が後方側
に飛び出すようにし、挟撃


優先順:狸≧鬼1>栗>妖狐=黒>鬼2>男

あたしはB班後方砲台
初手ミストファインダーで射程強化後
クレセントファングで只管削る
基本標的は立ち位置から届く相手で優先順
他の奴等の攻撃と合わせて敵数減らし出来る様に
但し狐は逃亡しそうとかありゃ最優先に攻撃
折角後ろに立ってんだしね、狐にゃ良く気を配っとく
幾らちっさくても、其の目立つ赤毛じゃ見失わないね(くっくと笑い)
不審な動きがあれば声上げて皆に知らせる
「どっこへ行くのかなー、そこのちっこいの!」
いざと云うときにゃ身体張って止めに行くよ
アンタ逃がしたらさ、こちとらお話にならないんだよね

ミストは初手以降、ブレイク時に掛け直し
回復は他所任せでギリギリまで攻撃に徹する
ミストが切れたら前に出て攻撃に加勢

前衛が苦しそうなら一時場所を変わって戦線建て直し
後衛に被弾してる子が居れば斜線上に割り込んで庇うよ
後衛にしちゃ頑丈なのが取り得なんでね、臨機応変に

狐は戦闘不能にして可能なら学園にしょっ引く

…にしても、何か愉快なご一行だったな
でっかくてちっさくて

川辺・結花子(夢現を彷徨う者・b60907)
◆心情
妖弧さんたち…
今度は、何をはじめるんだろう…?
仲良くできると、良いんだけど…。

いまちっさくても多分、大きくなれると思います、よ?
(中学入って一年で5cm近く伸びた子)

◆待機
入口の左右に分かれて待ちます。
なるべく身を潜めて、耳を澄まして、鋭敏感覚をフルに使って。

◆戦闘開始
初手はなるべく大勢巻き込むようにサイコフィールド。
次手以降から後ろ班の後衛位置へ移動して、
優先順位通りに攻撃します。
ブレイクを受けたり、傷を受けた人が多かったり
攻撃アビが尽きたらサイコフィールドを使います。
こっちも尽きたら枕で射撃。

戦闘中は、弱ってきた敵の場所を知らせたり
妖弧の動向を見て逃げそうなら声をかけたり
地縛霊たちが遠隔で狙いそうな場所があったら警告したり。
私なりに、出来る事を。

◆優先順位
狸≧鬼1>栗>妖狐=黒>鬼2>男

ランページが使えるうちはあまり拘らずに、たくさん巻き込むようにします。

◆けるさんへ
慎先輩や亮弥先輩と仲良くしてね。一緒の前衛だからね。
最初は妖弧の集団を回り込む様な感じで接近。
退路を断つ方向で、囲い込んで連爪撃を使ってね。
移動する必要が無さそうだったら、そこからなるべくたくさん巻き込んでアイアンチャージ、だよ。

「けるさん&ないとめあっ、ごー!」
ダブル直線攻撃、上手く嵌るといいなぁ。

◆妖弧さん
一緒に学園へいこうよ。
けるさんも戦いの場で会ったの。
ご飯食べてゆっくり休んで、それからお話しようよ。

四宮・菊里(軍星・b65501)
不穏な動きを見せる以上は
何であろうと放ってはおけませんよね

大人しくお縄に…とは
そう簡単にはさせてくれそうもないですが
頑張りましょう

◆戦闘前
A班とB班、二手に分かれて出入口付近に身を隠し
敵さんを待ち伏せます

氷采先輩の合図と同時に
Aが敵前方、Bが後方に回って挟撃
俺はA班後衛で、同班の皆さんと合わせて動きます
いつでも飛び出せるように感覚を研ぎ澄ませ

◆戦闘
直線や爆発対策に
なるべく他の方と重なり・固まり過ぎないように注意して立ち回ります

初手はどちらかの鬼を目標に
出来るだけ多くの敵を巻き込める場所に幻楼火を放ちます

以降は
「同班内で体力が半分を切った方が出た場合、白燐奏甲で回復」>
「敵妖狐がアヤカシを放った後等
複数名が負傷している時は
少しでも相殺出来るようにアヤカシの群れを放つ」>
「回復せずとも余裕がある時は
再び鬼を狙って幻楼火(優先順の低い方へ牽制)」
の優先順で、回復や援護を
同じ妖狐でも
敵さんに比べれば未だ未熟なのでしょうが…
この力が、少しでも役に立ちますように

但し幻楼火は一体しか巻き込めない場合は不使用で
アビが尽きるか幻楼火が使えない時は
「狸≧鬼1>栗>妖狐=黒>鬼2>男」の優先順に従って
他の方が集中している敵に念動剣で射撃を

妖狐の動向には特に注意しておき
逃亡の気配が見られれば直様皆さんに報せます

万が一の場合の撤退条件は皆さんに従います

◆戦闘後
妖狐は捕縛して学園に…ですね




<リプレイ>

●闇潜む
 さわ、さわわ。
 風に翻り、揺れる。
 闇に浮かぶ白月はゆるゆる舞い降り、瞬く葉裏を綺羅と弾いた。
 凪ぐ度辺りはしんと静まり返り、静寂が更なる闇を連れてくる。
 さわ、さわわ。
 影が躍り、静寂が募る。
 ――静かな、夜だった。

 そろ、と何かの影が動いた気がした。
 影々を縫い闇をひた進む気配。
 ひたりと止んで、また。
 影が、動いた。
 来た、と或る者は考えただろう。
 漸く、と或る者は思っただろう。
 決意と疑念。
 企みと呆れ。
 足音を忍ばせ小さな影がひとつ、闇の中から這い出した。
 月明かりがそのか細い腕を白く照らし出した。来い、とでもいうようにひらりと闇に舞う。
 じゃら、じゃらり。
 何かを引き摺るような音が地を這い震わせる。
 ぽつ、ぽつ、と影が続いた。
 小、大、小。影が連なり、最後に異様に大きな二つの影が過った。
 刹那。

「行くぞ、逃がすな!」

 声が響いた。
 闇を突き破るように鋭く発せられたそれを皮切りに、次々影が飛び出し彼らの前後を囲う。
「なっ――!?」
 進路を断たれ、退路を断たれ、小さな影がたじろぐように足を止める。それを守るように大きな影が素早く前へと飛び出した。月に照らされ男が行く手を阻む者達をじろりと眼だけで辿る。
「何を企んでいるかは知らんが、全力で止めてみせる」
 闇に響いた声が、再び。
 素早く駆け出した氷采・亮弥(青藍ヴィエチニー・b16836)の進路を塞がんとする二対の巨壁の前に、闇より尚暗く冷たい漆黒の刃を手に黒霧・慎(蒼黒の使者・b26081)が立ちはだかる。
「貴様の相手はこっちだ」
 慎は憤怒の表情を浮かべ遥か頭上から己を見下ろす鬼を牽制し斬り付けた。
 一瞬、ぐっと動きを止めた巨壁の合間を影がするりと抜ける。
「お前の相手は、俺だ」
 振り向き身構える男の眼前、地を蹴り跳んだ亮弥の身体がふっと横へ逸れる。思わず足下の砂利を鳴らした男の背後、天に高々と闇と血潮よりも紅く暗い二対の刃が閃いた。
「悪いが余所見はしないで貰おう」
 どっ――と深く穿たれた鈍い衝撃に、男は更に足を滑らせぐっと堪える。不意を突くように放たれた亮弥の蹴撃が空を裂き、男目掛け月の軌跡を残し振り下ろされた。
 がくん、と男は大きく首を揺らした。亮弥に向かう深淵の眼が紅走り、異様なまでにぎらついた輝きが浮かべられる。
「……さて行こうか」
 神夜・遥斗(血濡れ鬼の刻印・b03993)は深紅の瞳をふっと細め見た。男の地縛霊もまた、すらりと身を起こし肩越しに遥斗を一瞥する。
 男が月に艶めく長い刃を横薙ぎに振り抜けば、じりりと足裏で地を掻く二つの影が揺らめいた。
 互いに力の使い様は同じ。拮抗する力は己が理念を超え衝突するのみ――ぶつけ合い、目の前のそれを力で捻じ伏せるのだ。
 彼らは手にした刃を、互いにかつりと構え直した。
 闇に、きんと震える金音が響いた。

●ちっさい
 とんっと軽く地を蹴り闇に身を躍らせる。
 身体に固定した明かりがふわと浮き上がり、トルク・アトラスが地面を捉えた。
 白燐蟲で照らされる範囲にも限界がある。光源と逆位置の者が明かりを持つのは正しい判断だ。
 不意を突く襲撃。利を活かした挟撃を前に、敵の陣などあってないに等しい。男は包囲を振り払う様子もなく二人と相対し、敵の進路を塞ぐ六人の前には壁など無いも同然だった。
「今度も一体何を企んでるのやら」
 二瀬・颯軌(風天・b38458)はふっと息を零し、軽快な足音を立てながら素早い動きで狸を翻弄する。
「まぁ良いことじゃなさそうだし、阻止させてもらうよ」
 ととっと地を踏む音が響く。同時、夜空に月の紋引く高速の蹴りが斜角から狸の肩口に打ち込まれた。ぐらりと傾く狸目掛けぐっと深く身を屈めたシュカブラ・キアロ(白従・b41558)が高速回転しながら飛翔突貫する。
「そうだな、まぁ碌なことじゃねえだろうな」
「不穏な動きを見せる以上は、何であろうと放ってはおけませんよね」
 二人の後方で四宮・菊里(軍星・b65501)がさらりと零れ首筋を滑る艶やかな漆黒の合間から狐の耳を。風揺れる尾をふっさりと生やし、ついと視線を向けた巨壁の只中に幻想的な焔を落とした。
「大人しくお縄に……とは、そう簡単にはさせてくれそうもないですが」
 ぐらり。妖しく揺らめく焔に蠱惑された一体が、張り付いた笑顔のままぴたりと動きを止める。
 直線上の敵すべてを巻き込み一七夜月・氷辻(運命を結ぶリボン・b44022)と川辺・結花子(夢現を彷徨う者・b60907)の呼び出したナイトメアが戦場を駆け抜ける。
「銀ばら撒いて連絡網、……ねえ。詠唱銀てのは全く便利で厄介なこった」
 桜庭・景(桂跳・b56009)が霧のレンズ目掛け放った脚撃は阻む鬼を超え狸の背へ達する。
「いぇいっ、はーどこあ☆」
 北坂・理都(クローバーのお姫さま・b17841)が笑顔でギターを振り上げた。

 ごすっ☆

 鬼が怖い顔で理都を見た。それでも理都の笑顔は崩れない。
「いつかは仲良くできるかもしれないけれど、今は手加減なしだからね☆」
「悪巧みは潰されて然り、だろ? さ、大人しく正義の味方に倒されといてくれっかな」
 にや、と嗤う景にぴくりと妖狐の眉が動いた。
「邪魔臭いやつら! 謝っても許さないんだからね!」
 憤ったように言い捨てる。赤毛の娘は両手を腰にあて、偉そうに顎をしゃくり見下すような視線を能力者達に向ける――が、身長的な問題でとてもではないが誰一人見下せそうにない。
 颯軌は僅かに親近感のようなものを抱きつつ、小さな妖狐をそっと見下ろした。
 ――でも悪い子には容赦しません。
 首を傾げるようにふわと微笑む。何故か妖狐はびくりと肩を跳ねさせた。
「あ、謝っても許さないんだからね!」
 自身を奮起するようにもう一度同じことを口にして、妖狐はびしりと指差した。
 途端に颯軌、シュカブラ、氷辻の元へ揺らめく幻楼火が燈される。回避し損ねた氷辻が炎に囚われるも、すぐに淡く輝く琥珀を手にした木村・小夜(神様よりも大切なもの・b10537)がふわりと銀の髪を揺らし月下に舞う。
 妖狐が口惜しげな表情でだむだむと地面を踏み鳴らす。
 狸がもっふりしっぽをふるふる震わせた。高速回転飛翔突貫する狸にばちこん殴られたシュカブラは、何とかその意識を保ちながら、目を覚ますようにふるりと幾度か首を横に振った。
 ――何この負けてられない感じ。
「もふもふは無いが俺だってやる時はやるぞ」
 彼の胸の内で、狸に対するライバル心が火炎噴射機を噴きかけられたようにめらっと超速で燃え広がった。
 栗髪の女が痺れて動けない笑顔の鬼を一瞬見た。が、ほわわと微笑みながらおでこつーんする。颯軌の額にすこーんと直撃し突き抜けたそれは後方の菊里の元まで達したが、彼は辛うじてそれを退き交わす。
 颯軌は一瞬、額を押さえて蹲りそうになるのをぐぐっと堪えた。
 なんかおでこがじんじんする。
 黒髪の女が手をわきわきさせて狸の尻尾を見た。癒しを享受した狸の毛艶が蘇る――が、何故か狸は非常に複雑そうにぴるぴるひげを震わせた。
 すかさず鴻影・朱那(ヘルラビリンス・b33577)の呟いた言葉が呪いと化して狸の身に深く穿たれる。颯軌とシュカブラは視線を交わし、地を蹴り超マヒに陥った狸の眼前へ肉薄した。
 風切音を響かせ放たれた脚撃にぐらりと大きく揺らぎ、貫くような回転撃が追い打つ。堪らず狸は意識を失うようにがくりと地に伏し消え失せる。次の瞬間、女がめらっときたように彼らを見た。

●やっぱちっさい
 ナイトメアが駆ける。
 地が震え、鈍い音を響かせ憤怒の鬼が頽れた。
「この夜、全国で同じように狐が暗躍しているようね」
 氷辻が零す。麻痺から解き放たれた鬼の笑みが深められ、巨大な拳が勢い良く振り下ろされる。剣の柄を握る慎の腕がびりりと震えた。彼は僅かに眼を細め、淡く輝く刃で旋剣の構えを取る。
「全国六万以上……か」
「闇に蔓延り広がるは情報網、か。悪い冗談だな」
「全く碌でも無い」
 零した言葉に遥斗が頷き、亮弥は地を蹴った。己の挙動を見極めんと油断無く構える男の呼吸を乱すように、彼は軽やかな足捌きで翻弄する。
 不意に放たれた一撃をやはり交わし損ね、男は黒い靴底でずざりと煙を撒き上げた。息つく間も無く、奥底に禍々しい怨念を秘めた眸が男を睨み据える。ぐ、ぐっと歪ませるように身体を低め、毒に侵された男は歯を食い縛った。
「――気分は如何だ?」
 答えは期待しちゃいないが。
 男は返答代わりにがすりと地面に刃を突き立て、すべてを引き裂き一筋の剣閃を残して遥斗の胸目掛けそれを解き放った。ボッと火でも点いたかのような音を響かせ、遥斗の身体が吹っ飛ぶ。咄嗟に敵の剣戟を防ぐように交差させた刃に、おんおんと震えが走る。
 小夜の呼び覚ました癒しの力が彼の背を押した。痺れるような痛みの走る手で柄を握り直し、彼は即座に体勢を立て直す。
 敵に比べれば恐らく未だ未熟。それでもこの力が少しでも役に立ちますように。そんな思いを込めながら、菊里は妖狐に対抗しアヤカシの群れを放った。
 黒髪の女の握り締めた拳と栗髪の女の渾身の蹴りが颯軌とシュカブラ目掛け放たれる。朱那が宵闇を淡く彩るリボンをひらと揺らし祈り舞う。氷辻と結花子の幻夢のバリアが能力者達の守りを一層堅くした。
「うぇるかむ・とぅ・まい・らいぶ♪」
 景の放った一撃に栗髪の女が倒れ、理都のダンシングワールドに嗤う鬼が踊りだす。立ち上がったシュカブラの前で黒髪の女ががくりと意識を失った。
 崩壊し始めた自陣を前に妖狐は歯噛みし、じりと足を後退させた。
「どちらへ……?」
 その動きを逃さず捉えた菊里の朱華が闇を喰らい妖狐に喰らい付く。
「どっこへ行くのかなー、そこのちっこいの!」
 幾らちっさくても、其の目立つ赤毛じゃ見失わないね。
 景は咽喉の奥で噛み殺すようにくっくと笑いながら、レンズ目掛け蹴りを放つ。慎の影より這い出た闇の腕が妖狐の身体を引き裂いた。
「けるさん&ないとめあっ、ごー!」
 結花子とけるさんのダブル直線攻撃が地に伏す黒髪の女目掛け放たれる。
「貴方達の企みはわたしたちで潰してみせる」
 自分の大切なものを守るように、誰かのそれもきっと守ってみせる――胸の内に決意を秘めた氷辻のナイトメアが戦場を疾走する。
 黒髪の女が、声もなく消えた。
 さすがに危険を感じたのか、それまで目の前の二人に執着していた男が妖狐の元へ参じようとする――が。
「余所見は赦さんぞ」
 亮弥が敢然と立ちはだかった。
 ぎりと歯噛みし、男が体勢を低く落とし振り抜くように刃を放つ。咄嗟に弾いた白刃に軸をぶらしながらも、男は幾度も刃を返し、風を引いて亮弥の身を斬り裂いた。
 延々と続くかに思われたその斬撃を、梅花の鍔ががきりと捉える。
「妖狐への援護など断じてさせん。――抜かせるか!」
 ぱた、ぱたたと血が滴った。
 ざり、と砂利が鳴る。
 妖狐が息を呑む。いつの間にか自身への包囲網が狭められていることに気がつき、彼女は今度こそ駆け出した。仲間の声に反応した颯軌が素早く立ち回り、シュカブラと景もまた前へ。
 退路など、最早。
「逃げるなよちっさいの、おにーさん達は怖くない」
 長身のシュカブラが小さな娘を見下ろした。うっと声を詰まらせ、けれど彼女はやはり威勢良く噛み付く。
「ち、ちっさいっていうな!」
「ちっちゃいからって負けてあげないよ♪」
「だから、ちっさいっていうな!!」
「今ちっさくても多分、大きくなれると思います、よ?」
 理都にも噛み付く娘を、結花子が枕を抱えながら小首を傾げ見た。
「ほ、ほんと!?」
 きらっと瞳が煌めく。結花子はこくりと頷いて、こだわりの快眠投げ枕を思い切り投げつけた。
「ぶっ」
 クリティカル!
 ちっさい妖狐、ばたんきゅー。
 残る敵は――颯軌の視線が三メートルはあろうかという巨壁を上へ上へと辿ってゆく。
 ――でっかいのにはもっと容赦しません。
 きらんと颯軌の瞳が月光を弾いたのは気のせいか。彼はざっと土煙を撒き上げ鬼へ迫る。
「ところで戦う時ってものすごい怒った顔相手より、ものすごい笑った顔の方が怖いね……!」
 確かにギンギンの笑顔で殴りかかってくる鬼はちょっと怖い。若干青筋立っているのは踊り疲れたせいかもしれない。
 闇を駆ける颯軌がぐっと握り締めた拳に螺旋を纏う。
 強く地面を蹴りつけ、月へ舞う。
 堅い拳が強かに敵を撃ち据えた瞬間、その背後の闇に煌めく銀雫のカルネヴァーレ。
 煙を撒き上げ靴底が大地を捉える。
 翳された白刃が月の雫を受けて艶めく斬撃を放った。
 具に最後の敵に視線を流すシュカブラの傍らに、軽やかな着地音が響く。
 舞い降りた淡い丁子の髪がふわりと風を抱いた。
 どうっと豪快な地響きを鳴らし、背後で最後の巨壁が崩れる。
 震動に、男を抑えていた二人の視線が動く。
 目の前の男が最後の敵となれば、やることはただひとつ。
 赫い靴がとっと地面を蹴り出した。
 男の元へ黒塗りの刃が迫る。
 斬音は無。
 影を縫い直走る風が男の腕を切り裂いた。
 霞の如き雄麗な龍が闇天を駆け抜け、跡には朱華が花開く。
 二対の玄哭剣が男の闇色の胸を引き裂いた。
 黒狼夜に紅蓮に紅蓮を重ね凝縮したような焔が宿る。
「――赤の地獄に焼け堕ちろ、命の遣り取りは終わりにしようぜ?」
「付き従うのはいいが、……盲従とは感心せんな」
 深い紅蓮の焔が駆け抜け、白刃が煌めき退紅の結紐が闇を滑る。
 最後の一撃は、ほぼ同時。
 蓄積、より苛烈な攻勢。
 一溜まりもなかった。
 がしゃりと、刀が地に零れる。
 男は、地に臥すより先に闇へ消えた。

●相当ちっさい
「お仕事終わりっ☆ 妖狐の子は連れて帰るのかな? かな?」
 理都の言葉を受けて、地面の上できゅーっと伸びる妖狐に結花子が語りかける。
「一緒に学園へいこうよ。ご飯食べてゆっくり休んで、それからお話しようよ」
「アンタ達と話すことなんてなーいー!」
「そう簡単に喋ってはくれないか」
 ぷいっと顔を背ける狐に、慎はあっさりと頷く。
 這ってでも逃げようと地面に腕をついた妖狐は、はっとして顔を上げた。逃げられるわけがない。亮弥、遥斗、菊里のでっかいお兄さんズが油断なく見張っている。
 妖狐は咄嗟に目を泳がせた。しゃがんだ体勢でじっと自分を見詰める颯軌と目が合って、またぷいっと顔を背ける。
「喋んない! 絶対喋んない! アンタ達みたいなでっかい奴らにー!」
 何か色々根に持ってるっぽい。
「はいはい、羨ましいなー」
 小さな妖狐をひょいと抱え上げ、捕獲完了、とばかりにシュカブラが歩き出す。
「はーなーせー!」
 景はじたじた暴れる子狐を一瞥し。
「……にしても、何か愉快なご一行だったな。でっかくてちっさくて」
 呟いた直後、髪をぴーんと引っ張られるような感覚を覚えて彼女は振り向いた。
「ちっさいって、いうな……っ!」
 最後まで。


マスター:珠樹聖 紹介ページ
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いまいち
参加者:10人
作成日:2010/04/27
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冒険結果:成功!
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