ビルサック米農務長官が8日、農林水産省内で赤松広隆農相と会談、米国産牛肉の輸入条件緩和を要求した。背景には、11月の中間選挙も絡み、米議会で日本の市場開放を求める声が高まっていることがある。長官は、月齢制限の全廃を求めたブッシュ前政権の強硬路線との違いを強調。「30カ月未満」への緩和も視野に日米協議の再開を要請した。赤松農相も再開には応じたが、日本の民主党は昨年の衆院選マニフェスト(政権公約)で「食の安全・安心確保」を掲げた経緯がある。「柔軟路線で緩和を迫る」米国への対応に苦慮しそうだ。【行友弥、太田圭介】
「米国では牛の検査態勢を強化しており、BSE(牛海綿状脳症)はこの3年間、発生していない。過去の感染例も3件しかない」。8日の会談でビルサック長官は米国産牛肉の安全性を訴えた。これに対し、赤松農相は「日本の消費者は敏感だ。米国産がスーパーで売られていても、本当に安全と思わなければ手を出さない」と指摘。科学的な検証が重要との立場を改めて強調した。
米国側が「安全」と主張する根拠は、家畜の衛生基準を定める国際獣疫事務局(OIE)から07年5月、月齢にかかわらず輸出できる「リスク管理された国」と認定されたことだ。ブッシュ前政権は月齢制限の撤廃を強く要求。これを受け、同6、8月に日米の実務者協議が開かれたが、議論は平行線をたどった。その後は首脳会談などで主張をぶつけ合う場面はあっても具体的な交渉はなく、牛肉問題は事実上棚上げされていた。
しかし、最近になって米議会で11月の中間選挙を意識した強硬論が再浮上。先月11日にはジョハンズ元農務長官ら超党派の上院議員が輸入制限撤廃を求める決議案を提出した。景気浮揚策の一環として「輸出倍増」を掲げるオバマ政権も、日本や中国への市場開放要求を強めている。農務長官の来日が、こうした動きと連動していることは明らかだ。
日本側にとっては撤廃一本やりのブッシュ前政権より、柔軟路線のオバマ政権の方がある意味で手ごわい相手と言える。韓国やロシアなど多くの国が採用する「30カ月未満」への緩和は日本政府も検討した経緯があり、妥協案として現実味があるからだ。
しかも「20カ月以下」を基準としているのは日本だけ。日本では生後21カ月の感染例があるが、病原体が微量で他の動物への伝染性は確認されなかった。専門家は「危険部位さえ確実に除去すれば、月齢制限は必要ない」との意見も出ている。
ただ、食の安全を重要施策の一つとする鳩山政権には、今夏の参院選を前に「安易な妥協をした」と受け取られたくない事情がある。野党時代から米国産牛肉の危険性を訴えてきた山田正彦副農相は1日の記者会見で「条件緩和は時期尚早」と指摘。鳩山由紀夫首相も8日夜、記者団に「大事なことは国民の安全を守るという立場」とした上で、「日本の月齢制限は非科学的」との米国の批判に「私どもの科学的知見に基づいて今日まで議論してきた」と反論した。
2年以上の「停戦」を経て動き出した牛肉問題だが、決着までの道のりは険しそうだ。
輸入再開後も米国産牛肉の輸入量は低迷している。09年の輸入量は約7万トンと、ピークだった00年の5分の1にとどまった。安全性への消費者の疑念がぬぐい切れていないことが背景のようだ。
主な需要先の外食産業のうち、牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーは03年の輸入停止以来、BSE未発生国である豪州とニュージーランドに調達先を切り替えた。牧草で育てる豪州産は、脂肪分が少なく牛丼に不向きとされていた。だが、最近は穀物飼料も与え、日本人好みの肉質を実現したといい、ゼンショーは「米国産を使う予定はない」としている。
輸入条件の緩和を期待する声もある。米国産にこだわる吉野家ホールディングスは「日本向けの米国産牛肉は、月齢の確認など特別の出荷態勢を取るため割高。日本が(月齢制限を不要としたOIEの)国際基準に合わせれば仕入れコストを削減できる」と指摘。同じく米国産牛肉を使う松屋も「輸入条件が緩和されれば経営メリットがある」とする。
輸入再開から4年近く過ぎ、消費者の不信感も徐々に薄らいでいるようだ。東京・新宿の松屋で牛丼を食べていた男性会社員(29)は「米国産牛肉の検査態勢は改善されているようなので、さほど不安を感じない」という。
牛肉問題について、全国消費者団体連絡会の阿南久事務局長は「規制全廃は受け入れがたいが、30カ月未満なら検討に値する」とみる。消費者運動に長く携わる日和佐信子・雪印メグミルク社外取締役も「危険部位を完全に除去すれば月齢制限は必要ない。リスクが全くない食品はなく、消費者もバランスの良い食生活を心がけるべきだ」と話す。
毎日新聞 2010年4月8日 21時13分(最終更新 4月9日 0時53分)
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