衆院本会議で殺人事件などの公訴時効を廃止する改正法が成立。傍聴席には目頭を押さえる殺人事件被害者遺族の会「宙の会」の会員の姿が見られた=27日午後、国会内、松谷常弘撮影
法改正をめぐっては、日本弁護士連合会が「事件から長い期間がたつことで証拠が散逸し、アリバイ立証ができなくなって冤罪を生む」などとして反対。また、日弁連や刑法学者らの間では、時効が完成していない過去の事件に適用することについても、さかのぼって処罰することを禁じた憲法39条に違反するのでは、という意見も出ていた。
民主党も当初、政権交代前に「特定の事件について、検察官が時効の中断を裁判所に求める」とする政策案を発表した。だが、法相が諮問した法制審議会では民主党案は否定され、自公政権時代に森英介元法相が開いた勉強会の最終報告に近い案を答申。法相は法制審の答申に沿った法案を提出した。
27日の法務委員会の審議では「刑罰の基礎となる制度の法改正に、生の被害感情を持ち込むのは問題ではないか」「時効見直しでも検挙率は上がらない。むしろ捜査の充実が重要だ」といった意見が出た。しかし、民主党の政策の転換によって、与野党双方から法案への目立った批判は出なかった。
法成立を受けて、法務省は今後、未解決事件の証拠品の管理など捜査実務上の課題について、警察庁と協議する方針だ。(河原田慎一)