涙を流しながら発言する国労闘争団全国連絡会議の神宮義秋議長=26日午後、東京・永田町、川村直子撮影
国鉄の分割・民営化に伴うJR不採用問題で、国鉄労働組合(国労、高橋伸二中央執行委員長)は26日、東京都内で臨時全国大会を開き、政府が示した政治解決案の受け入れを全会一致で承認した。今後、関連訴訟の和解手続きを急ぎ、人道的見地から雇用確保に応じるようJR各社に求めていく方針も確認した。
「家族の中で、親戚(しんせき)の中で、闘争団の中で、激しく厳しい葛藤(かっとう)がありました。泣き、怒り、ちょっとだけ笑い、傷つき、くじけそうになりながら、つらい厳しい季節を繰り返すこと23年。一筋の光が差し込んで参りました」。大会で涙を流しながら発言した国労闘争団全国連絡会議の神宮義秋議長(61)は、運動のまとめ役を長く務めてきた。今回の政治決着について「このタイミングしかなかった」と振り返る。
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解決案では1人平均2200万円が遺族を含めて910世帯に支払われる。「ゴネ得」だという批判もある。
「国労の組合員というだけで、幹部でもない一般の組合員が不当に差別され、採用の道が閉ざされたことを分かってほしい。言葉は人を殺す。国鉄の不当労働行為は司法も認定した事実なのに、どうして『ゴネ得』という言葉が出てくるのでしょうか」
国鉄の分割・民営化を進めた中曽根康弘元首相は後に「国労が崩壊すれば、総評(日本労働組合総評議会)も崩壊することを明確に意識してやった」と語った。
「一国の総理大臣を務めた人がそこまで言うのかと。職場では国労を脱退しないと、『意識が低い』とされ、人事評価が必ず低くなる管理台帳があった。助役から何度も、『国労を抜けないと採用されない』と迫られた。最初から国労つぶしが目的だった」
国鉄が赤字体質に陥った背景には、自動車社会の到来や採算性を無視した政治の利益誘導もあった。しかし、国民の批判は国労に集中した。
「お上のやることは世間一般は正しいと思う。赤字の責任は労働組合にあると宣伝され、国民は『そうだそうだ』となった。20万人もいれば事件を起こす職員もいて、国鉄職員は悪い、というイメージもついた。ストライキへの共感も失われていたのに、我々の側も、そうじゃないと理解してもらえる活動が足りないままだった」