2010年3月10日 13時26分 更新:3月10日 23時40分
環境省は10日、新潟県佐渡市の佐渡トキ保護センターで、国の特別天然記念物のトキ9羽が死んだと発表した。施設内に侵入した野生動物に襲われたものと見られる。被害にあったのは今秋、3回目の放鳥に向けて訓練中のもので、今後の野生復帰計画への影響が懸念される。
死んだのは、09年に生まれた雄2羽と、04~08年生まれの雌7羽。10日午前8時ごろ、出勤してきたセンター職員が、放鳥前に飛翔や餌を取る訓練をする施設「順化ケージ」を監視するカメラ映像にトキが映っていないのに気づいた。ケージ内を確認すると、訓練中の11羽のうち8羽が死んでいるのを発見。このうち1羽は動物に食べられた跡があった。他の2羽も重傷を負い、うち1羽は死んだ。1羽は無事だった。環境省は侵入したのはテンやイタチなどの小動物と見ており侵入方法を調べている。
また、侵入経路を特定し再発防止策を取るまで、当面ケージ内での訓練は中止する。環境省は今秋、死んだ9羽を含め21羽の放鳥を予定していたが、16日の専門家会合で対応を協議する。
順化ケージは07年3月に完成。広さ約4000平方メートル、高さ約15メートルで、池や樹木などを設け、周囲の自然に近い環境を再現している。今回の事故で、飼育されているトキは同センターなど国内3カ所で114羽となった。【大場あい】
いったん国内で絶滅したトキを、中国産のトキの人工繁殖で、野生に戻す計画。トキは明治時代以降、狩猟や農薬の使用などで激減。03年に国産最後の「キン」(雌、推定36歳)が死に絶滅した。中国から贈られたペアで99年に初めて人工繁殖に成功。環境省は03年に保護増殖事業計画を改定、15年までに60羽を佐渡島内に定着させることを目標に、放鳥による野生復帰の試みが始まった。