根本敬が語る伝説の漫画雑誌「ガロ」と蛭子能収のアブない裏話
2010年04月24日15時20分 / 提供:日刊サイゾー
作品の新しさや、独創性を重視した編集方針で白土三平や水木しげる、つげ義春、蛭子能収、みうらじゅん、内田春菊......等々、漫画界の異才、奇才を多数排出して一時代を築いた漫画雑誌「ガロ」(青林堂)。4月10日、高円寺・西部古書会館において、そんな「ガロ」を語るトークイベント「昭和のカルチャー、漫画、そしてガロ」が開催された。
出演者は、いわゆる「ガロ系」と呼ばれるアングラ漫画界においても極北に位置し、海外の現代アートシーンからも注目を受ける特殊漫画家・根本敬氏と、かつては「ガロ」副編集長であり、現在は実質的な後継誌である「アックス」(青林工藝舎)の編集長を務める手塚能理子氏。一応「ガロ」を切り口に昭和の漫画カルチャーを語るイベント......という予定だったのだが、このふたりのトークがまともなカルチャー話になるハズもなく、「ガロ」周辺の編集者、漫画家の暴露トークがバンバン飛び出した。
手塚能理子氏(以下、手塚)「ガロ」編集部の建物って本当にボロかったんですよ。材木屋の二階を借りていたんですけど、トラックが出入りするたびに建物全体が思いっきり揺れてましたから。
根本敬氏(以下、根本) しかも編集部の中に入るとものすごい量の返本の山があってさ。本当に床が抜けるんじゃないかっていう感じだったもんね。
手塚 ある時、本当にこれはヤバイということで大家さんに頼んで修繕してもらったんですが、どこを直したのかと思ったら、土台のコンクリートと柱の間にカマボコ板を打ち付けただけだったんですよ。
根本 かまぼこ板一枚で建物を支えていた(笑)。でもそういう、その場しのぎの精神っていうのが「ガロ」編集部にピッタリだよね。ヘタにそこだけちゃんと工事してたら、全体のバランスが狂ってたちまち崩れ落ちてたと思いますよ。
「ガロ」といえば、名物編集として知られる初代編集長・長井勝一氏の「儲かったら払う」という方針から、原稿料がほぼゼロだったというのは有名な話だが、そんな状況でも「ガロ」で作品を発表したいという漫画家は後を絶たなかったという。そこには「お金」には変えられない、描き手と雑誌との強い結びつきがあったのだ。
手塚 「お金がなさそうなのによく続いてますね」って言われるんですけど、ただ続けるだけなら実はそんなに難しいことではないんですよ。それよりも、こういう同じ皮膚感覚を持った仲間が集まる場所を作るっていうことの方が難しいですよね。
根本 「ガロ」や「アックス」って、学校の中で友達がいなかった、行き場がなかった人たちが吸い寄せられる場所だった。だから長井さんが新人漫画家を採用する時の基準って漫画自体の良し悪しとかじゃなく「とりあえずウチで何かやらせておかないと事件を起こしかねない」っていうことだったんじゃないかと思うんですよ。
手塚 「漫画なんか描いてれば誰でも上手くなるんだ」ってよく言ってましたからね。それよりも「人間」っていう部分を見ていたと思います。私も新人を入選させるかどうかの判断基準って「生命力」ですからね。
根本 それは一般に言われる体力とかそういうことじゃなくて、それ以前のところでの「生命力」だよね。たとえば蛭子(能収)さんなんて体力はないだろうけど、無人島で遭難したらみんなを食べ尽くして自分だけ生き残りそうな生命力は持っていますから。
そんな苦境から這い上がる生命力を持っている漫画家の例として挙げられたのが『刑務所の中』の花輪和一氏。改造モデルガンを所持していたということで、半ば見せしめのような形で懲役三年の実刑判決を受けたが、出所後、刑務所での経験を描いた『刑務所の中』で大ヒットを飛ばした。
手塚 実はあの頃、会社が倒産寸前まで行ってたんですよ。『刑務所の中』が爆発的に売れてくれたおかげで持ち直せたんですけど、ある意味犯罪者に会社を助けてもらったってことですよね(笑)。それから「『刑務所の中』に手塚治虫文化賞を」っていう話が来たんで、もっと売れるだろうな......と思ってたら、花輪さん「手塚漫画の影響を受けた覚えがないから結構です、入りません」って断っちゃって。
根本 「賞金200万円もらえるからもらっておけばいいじゃない!」ってみんな止めたんだけどね(笑)。これが蛭子さんだったら「あ、200万ですか! いいですよ、もらいます」ってなったろうに......。でも花輪さんと蛭子さんって行動パターンは真逆なんだけど、生き物としての強さを持っているという部分は共通してるんですよ。ふたりとも妖怪に近いですからね。
ここからは根本氏のイベントではもはや恒例、蛭子さんの邪悪話に突入。奥さんが妊娠したので堕ろさせようとしたら断られて「女の人って堕ろすの嫌いなのかな? ワシは女心が分からんからなぁ......」と相談しにきたなど、一般的に知られる蛭子さんのニコヤカなイメージからはかけ離れたダーク過ぎる本性に会場は爆笑の嵐だったが、さすがの日刊サイゾーでもアウトじゃないかというヒドイ話の数々だったので割愛。
とにかくこんな濃い人たちを長年に渡って一手に引き受けてきた漫画雑誌「ガロ」「アックス」ってすごいなぁ......と再確認させられたのだった。こんなディープな漫画の世界があるって知らなかった人たちも、是非一度足を踏み入れてもらいたい。
(取材・文=北村ヂン)
【関連記事】
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出演者は、いわゆる「ガロ系」と呼ばれるアングラ漫画界においても極北に位置し、海外の現代アートシーンからも注目を受ける特殊漫画家・根本敬氏と、かつては「ガロ」副編集長であり、現在は実質的な後継誌である「アックス」(青林工藝舎)の編集長を務める手塚能理子氏。一応「ガロ」を切り口に昭和の漫画カルチャーを語るイベント......という予定だったのだが、このふたりのトークがまともなカルチャー話になるハズもなく、「ガロ」周辺の編集者、漫画家の暴露トークがバンバン飛び出した。
手塚能理子氏(以下、手塚)「ガロ」編集部の建物って本当にボロかったんですよ。材木屋の二階を借りていたんですけど、トラックが出入りするたびに建物全体が思いっきり揺れてましたから。
根本敬氏(以下、根本) しかも編集部の中に入るとものすごい量の返本の山があってさ。本当に床が抜けるんじゃないかっていう感じだったもんね。
手塚 ある時、本当にこれはヤバイということで大家さんに頼んで修繕してもらったんですが、どこを直したのかと思ったら、土台のコンクリートと柱の間にカマボコ板を打ち付けただけだったんですよ。
根本 かまぼこ板一枚で建物を支えていた(笑)。でもそういう、その場しのぎの精神っていうのが「ガロ」編集部にピッタリだよね。ヘタにそこだけちゃんと工事してたら、全体のバランスが狂ってたちまち崩れ落ちてたと思いますよ。
「ガロ」といえば、名物編集として知られる初代編集長・長井勝一氏の「儲かったら払う」という方針から、原稿料がほぼゼロだったというのは有名な話だが、そんな状況でも「ガロ」で作品を発表したいという漫画家は後を絶たなかったという。そこには「お金」には変えられない、描き手と雑誌との強い結びつきがあったのだ。
手塚 「お金がなさそうなのによく続いてますね」って言われるんですけど、ただ続けるだけなら実はそんなに難しいことではないんですよ。それよりも、こういう同じ皮膚感覚を持った仲間が集まる場所を作るっていうことの方が難しいですよね。
根本 「ガロ」や「アックス」って、学校の中で友達がいなかった、行き場がなかった人たちが吸い寄せられる場所だった。だから長井さんが新人漫画家を採用する時の基準って漫画自体の良し悪しとかじゃなく「とりあえずウチで何かやらせておかないと事件を起こしかねない」っていうことだったんじゃないかと思うんですよ。
手塚 「漫画なんか描いてれば誰でも上手くなるんだ」ってよく言ってましたからね。それよりも「人間」っていう部分を見ていたと思います。私も新人を入選させるかどうかの判断基準って「生命力」ですからね。
根本 それは一般に言われる体力とかそういうことじゃなくて、それ以前のところでの「生命力」だよね。たとえば蛭子(能収)さんなんて体力はないだろうけど、無人島で遭難したらみんなを食べ尽くして自分だけ生き残りそうな生命力は持っていますから。
そんな苦境から這い上がる生命力を持っている漫画家の例として挙げられたのが『刑務所の中』の花輪和一氏。改造モデルガンを所持していたということで、半ば見せしめのような形で懲役三年の実刑判決を受けたが、出所後、刑務所での経験を描いた『刑務所の中』で大ヒットを飛ばした。
手塚 実はあの頃、会社が倒産寸前まで行ってたんですよ。『刑務所の中』が爆発的に売れてくれたおかげで持ち直せたんですけど、ある意味犯罪者に会社を助けてもらったってことですよね(笑)。それから「『刑務所の中』に手塚治虫文化賞を」っていう話が来たんで、もっと売れるだろうな......と思ってたら、花輪さん「手塚漫画の影響を受けた覚えがないから結構です、入りません」って断っちゃって。
根本 「賞金200万円もらえるからもらっておけばいいじゃない!」ってみんな止めたんだけどね(笑)。これが蛭子さんだったら「あ、200万ですか! いいですよ、もらいます」ってなったろうに......。でも花輪さんと蛭子さんって行動パターンは真逆なんだけど、生き物としての強さを持っているという部分は共通してるんですよ。ふたりとも妖怪に近いですからね。
ここからは根本氏のイベントではもはや恒例、蛭子さんの邪悪話に突入。奥さんが妊娠したので堕ろさせようとしたら断られて「女の人って堕ろすの嫌いなのかな? ワシは女心が分からんからなぁ......」と相談しにきたなど、一般的に知られる蛭子さんのニコヤカなイメージからはかけ離れたダーク過ぎる本性に会場は爆笑の嵐だったが、さすがの日刊サイゾーでもアウトじゃないかというヒドイ話の数々だったので割愛。
とにかくこんな濃い人たちを長年に渡って一手に引き受けてきた漫画雑誌「ガロ」「アックス」ってすごいなぁ......と再確認させられたのだった。こんなディープな漫画の世界があるって知らなかった人たちも、是非一度足を踏み入れてもらいたい。
(取材・文=北村ヂン)
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