昨年9月の堺市長選で落選した前堺市長の木原敬介さん(70)が、回顧録「我、知事に敗れたり」を出版した。市長選で橋下徹知事は、当時新人候補だった竹山修身市長を支援。3選を目指した木原さんは、4万7000票差で大敗した。回顧録で木原さんは、橋下知事の進める大阪都構想を痛烈に批判している。【山田英之】
市長選で民主、自民、公明、社民の4党は事実上相乗りで現職候補の木原さんを支援。市議会(定数52)の約8割にあたる41市議が木原さんを応援した。橋下知事は街頭演説で、国政で対立する政党の相乗りを「なれ合い」「談合政治」と指摘して、有権者の共感を集めた。
告示前まで圧倒的優勢が予想された木原さんの落選は「堺ショック」と呼ばれ、府内の首長や議員を震え上がらせた。木原さんは、堺の政令指定都市実現、シャープ新工場誘致、市財政健全化など実績を訴えたが、支持を得られなかった。
回顧録で「橋下知事は分権改革を豪語しながら、自分の言いなりにならない首長は、例え実績があってもつぶしてしまう」「堺市長選の理不尽さを世に問わなければ、自由都市・堺の再生はない」「候補者に負けたのでなく、橋下知事の巧みな世論操作に負けた」と主張している。
橋下知事が進める大阪都構想について、「市町村が輝いてこそ、府が光を帯びる。それが真の地方自治。知事の方向性は間違っている」「大阪都知事は大阪の独裁者になる」「知事の野望が実現すれば、真の地方自治は大阪から消える」と批判した。地方自治についても「地方自治は地方が自ら治めるもの。知事の主張は自分が治める自治」「橋下丸に乗船しようとしない私は邪魔者であったのでしょう」とつづっている。
選挙戦を振り返り、「府と対等の政令指定都市の市長として、知事に唯々諾々と従わなかったのは当たり前」「橋下知事の意向に沿う下請け的な堺市政を行うわけにはいかない」と改めて持論を記した。
また、「再び市長に返り咲くことは、微塵(みじん)も考えていない」と政界から引退することを明らかにしている。
回顧録は1500円(税別)。問い合わせは、論創社(03・3264・5254)。
毎日新聞 2010年5月1日 地方版