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【西淀川女児遺棄】「虐待致死傷罪新設を」事件きっかけ署名活動
虐待事件の加害者への処罰が軽すぎる−。自らも虐待を受けたつらい経験からこんな疑問を持った女性が、厳罰化を目指して虐待致死傷罪の新設を求める署名活動「ひまわり署名プロジェクト」を始めた。今年4月に大阪市西淀川区の市立小4年、松本聖香さん=当時(9)=が虐待死した事件で、加害者の母親と内縁の夫が殺人罪に問われなかったことに違和感を覚えたのがきっかけという。聖香さんの祖父母らも協力を約束、活動に加わった。女性は「虐待に苦しむ子供たちを救いたい」と話している。
活動を始めたのは川崎市麻生区の会社員、成田浩子さん(33)。成田さんは子供のころ虐待を受けて育ったという。ささいなことで髪をつかまれ家中を引きずり回され、殴るけるの暴行を受け、真冬には家を追い出されて公園のベンチで一夜を過ごしたことも。一方で弟はかわいがられ、「私は家族に要らない子供なんだ」と思い続けて幼少期を過ごした。
成人して結婚し、普段は虐待されたことも忘れて暮らしていたが、聖香さんが受けた虐待の悲惨さをニュースで知り、心をえぐられるようなつらい記憶がよみがえった。
聖香さんは、実の両親が離婚した後、母親の美奈(34)と内縁の夫の小林康浩(39)の両被告の下で暮らしていた。
捜査当局の調べでは、両被告は今年3月中旬から、聖香さんを殴ったり、ベランダに閉め出したりする虐待を続け、歩けないほど聖香さんが衰弱させた。しかし医療機関の診察も受けさせず、4月4日夜には聖香さんが失禁したことに腹を立てて暴行、玄関やベランダに放置し、5日ごろに衰弱死させたとされる。
成田さんは「2人は当然、殺人罪に問われ、死刑になる」と思っていた。しかし大阪地検の判断は、最高刑が懲役20年の保護責任者遺棄致死罪などでの起訴。
このとき抱いた「2人が聖香ちゃんを“殺した”のは明白なのになぜ」という疑問は、やがて「聖香ちゃんのような被害者を二度と出さないために虐待そのものを取り締まる新法が必要」という確信に変わった。
インターネットにホームページ(HP)を開設して賛同者を求め、駅前など街頭で署名活動を始めた。
10月18日には聖香さんが亡くなった現場の大阪市西淀川区の賃貸マンションを署名活動のメンバー2人と訪ね、実父の佐光哲也さん(39)や祖母の真佐子さん(60)、祖父の健治さん(60)にも面会した。
実家の祭壇に安置された聖香さんの骨壺は思った以上に小さく、哲也さんから事件の話や聖香さんの思い出を聞くうちに、成田さんは涙が止まらなくなった。
成田さんも自分自身の虐待された経験を打ち明け、署名活動について説明。哲也さんら遺族は「聖香の死を無駄にしないためにも協力したい」と活動に加わった。
署名活動の名前は、聖香さんが亡くなる前につぶやいたという「ヒマワリを探しているの…」という最期の言葉から採ったという。
成田さんは「ヒマワリは聖香ちゃんが探し求めていた優しい親がいる温かい家庭の象徴だったと思う。必ず虐待致死傷罪を新設し、虐待に苦しむ子供たちの希望にしたい」と話している。
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ひまわり署名プロジェクトのHP(http://www.maylibridshope.syarasoujyu.com/)で署名用紙をダウンロードできる。活動へのカンパも募集している。