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【コラム 撃戦記】

バレロとの握手今も忘れない

2010年4月29日

 驚異の破壊力で世界2階級制覇を成し遂げたエドウィン・バレロ(ベネズエラ)の自殺は衝撃だった。デビューから27戦無敗。それも全試合KOのまま亡くなった世界王者は、後にも先にもバレロだけ。アジアの英雄、マニー・パッキャオ(フィリピン)とのスーパーファイトも目前だっただけに悔やまれる。

 バレロは一時、帝拳ジムと契約し、家族で日本に滞在していたから親しみがある。スピードとパワーが特出したアスリートだった。握手した時の感覚は今も忘れられない。

 KOパンチャーの多くは「狙って倒せるものではない」と言う。だが、バレロのKOはファンの期待に応えて「狙った」ものだった。手前みそになるが、私はキックボクシングの現役時代、カンナンパイ・ソントーン(タイ)戦で、2回に右ストレートをテンプルに当ててKOしたが、「グローブに石が入っているのでは」とレフェリーがチェックを求めてきた。空手は約15センチ幅の板に縄を巻いた「巻きわら」をたたいて拳を作る。当てる瞬間に固く握らないと打てない。肩の力を抜き、脇を締めて突くのが基本だ。拳は人さし指と中指の付け根関節を一度壊し、骨に肉を食い込ませて接着。その上に肉たこを重ねていく。

 バレロの拳は、空手家のようだった。KOパンチはナックルの硬さに秘密があったと思う。 (格闘技評論家)

 

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