高橋洋一の民主党ウォッチ民主やっぱり官僚肩たたき 拒否ほぼゼロの理由はこれ
2010年04月29日17時00分 / 提供:J-CASTニュース
昨2009年、民主党は政策集INDEX2009を出し、その中で「天下りの背景となっている早期退職勧奨を廃止します」と公約した。07年5月15日衆議院本会議において、馬淵澄夫議員は、「天下りに起因する数々の諸問題の抜本的解決を図るには、この肩たたきの禁止が不可欠であります」、「肩たたきがなくなると組織の活性化が維持できないなどとするのは、組織みずからが自己変革のマネジメントを放棄しているのに等しいものではありませんか。国民の理解を到底得るものではありません」と主張していた。
退職勧奨というのは、いわゆる肩たたきである。どんな組織でも同じであるが、ランクの高いポストは少なくなっていく。民間、特に大企業であれば、トップ層まで行かない人は途中で関連会社へ出たり、転職したりする。一部の人は転職先の面倒を見てもらえるが、そうでない人も多い。
1221人中拒否は2人だけという不自然
ところが、役人は、肩たたきを受けるときには、転職先のあっせんを受けるのが普通である。要するに、役人は退職後も再就職に心配はないのだ。これは、霞ヶ関の役人であれば、常識である。
09年の民主党の公約どおりであれば、肩たたきをやめてみんな役人のままで、窓際ポストを増やさざるをえない。一方で、民主党は「国家公務員総人件費を2割削減」と公約していたので、肩たたきなしで役人が役所に残ると、かなりの給与カットにならざるをえない。給与カットは簡単にはできないので、民主党の公約である肩たたきの禁止はできないだろうといわれていた。
案の定、鳩山政権になってからの09年9月16日から今10年3月12日までの間に、課長・企画官以上で83人、課長補佐以下で1138人、合計1221人に肩たたきを行っていた。これは、今国会での国家公務員法改正案の審議において、山内康一議員(みんなの党)からの質問主意書(3月12日)への政府回答や、4月16日と21日に総務省から衆議院内閣委員会に提出された資料で判明した。なんのことはない、民主党は、肩たたきを廃止すると公約しておきながら、こっそりと公約破りを行っていたのだ。上記資料によれば、なんと、政権交代直後の09年10月6日以降、肩たたきが恒常的に行われていたのだ。
さらに、興味深いことも明らかになった。肩たたきを受けながら拒否した人は、課長・企画官以上で83人中ゼロ人、課長補佐以下で1138人中たった2人、合計で1221人中2人、0.2%というのだ。民主党は、肩叩きがあったことは認めてしまったので、これらは「あっせんのない」肩たたきだったことになる。しかし、あっせんのない肩たたきで、拒否した人が0.2%というのはあまりに少なすぎて不自然だ。肩たたきされると、多少は退職金が割増になるが、それでも役所に居座るほうが、給料は高い。99.8%の1219人も、再就職のあてがないまま肩たたきを受け入れて退職するとはとうてい考えられない。
省庁OBらによる天下りあっせん「裏下り」がある
国会等に提出された資料には、再就職先が記載されているものもあるが、未定で記載されていないものも多い。それは、09年9月16日から10年3月12日という調査期間によるものだろう。再就職先の事情で、年度を超えてからとか、6月に予定されている株主総会後とかに採用されるので、それまで待機という場合も多いからだ。課長・企画官以上の83人は、いずれ再就職状況を公表せざるをえないので、あと半年から1年ぐらい待てば、再就職先が判明するだろう。これまでは、あっせんがあったので、ほぼ全員が再就職できた。
ところが、民主党政権になって、あっせんはないという建前なので、それが本当であれば、再就職率は大きく低下するはずだ。もし、これまでどおりにほぼ全員が再就職できたとすると、あっせんはないという建前はウソということになる。もしあっせんがあれば、これは民主党の批判していた「裏下り」だ。府省庁による直接のあっせんはないが、省庁OBらによる事実上の天下りあっせん慣行がある、というやつだ。
というわけで、1219人は、現時点での「裏下り」候補者リストである。そのまま、裏下りになるのではないだろうか。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。
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