守って攻めた中村屋　さよなら歌舞伎座インタビュー（３）

　歌舞伎俳優の中村勘三郎（５４）と勘太郎（２８）、七之助（２６）親子が、建て替えのため３０日に閉場式が行われる東京・歌舞伎座の思い出を語った。

　勘三郎（以下三）「歌舞伎座がない間の３年間はいろいろ、考えている。それは、こうご期待ということで。でもやろうと思っているのは、守り（古典）７、攻め（新作）３の割合になるんじゃないかな。前は五分五分とか６対４だったけど。そうそう攻め続けてもね。それに（息子の）２人が新しいことをやっていくだろうから」

　七之助（以下七）「自分は今は女形が多いけど、両方やっていきたいと思いますね。（父や祖父が）やっていない役も突きつめて『こういうのも中村屋はやれるんだ』みたいな。家のレパートリーを増やしたいと考えています」

　勘太郎（以下太）「僕は勘太郎として、歌舞伎座と名のつく劇場に出るのは２８日が最後だった。１２年には勘九郎を襲名しますが、プレッシャーは、いまのところまだあまり感じていませんね」

　三「勘九郎だもん。大した名前じゃないよ（笑い）。そんなこと言ったら、オレの（勘三郎襲名の）方が大変だったよ。だから、お前が勘三郎を継ぐときは大変だよ。そういう（名前にふさわしい）役者になっておかないといけないから。オヤジやオレがいい名前にしたのを、ガタッとさせちゃいけない。それが襲名の面白さでもある」

　太「そうですね。でも、結果は後からついてくるもの。評価を気にしていたら、この職業はできないですし。でもどこかで評価されたい気持ちもある」

　七「歌舞伎座で襲名はできないけど、いいじゃないですか！　中村座での襲名、見たいですよ。そこでの口上なんて」

　三「うちのオヤジの勘三郎襲名も、東劇（築地）だったし。それに、（襲名披露興行を）２か月できるわけだから。（新橋）演舞場と中村座で」

　太「これから、どんどん忙しくなると思うけど、妻がいるのは精神的にも本当に楽です」

　七「僕は結婚、今はあんまり考えていない。兄貴がしてくれたので。安心しました。僕はまだいいかな、なんて」

　太「いや、でも（七之助は）パッと結婚しそうだけどね」

　七「今は歌舞伎が人気だけど、常に危機感を持たないといけない。諸先輩が作ってくれたものを引き継ぎ、プラスしていかないといけない」

　太「信じることは、けいこをして、いい芝居を届けること。ありきたりのことですけど、それが一番大切なことでしょうね」

　三「２人はこのまま真っすぐにやってくれればいい。今は厳しく言うと、殴られそうな感じだし（笑い）。オレは師匠ではあるけど、酒飲んでるときは、敬語でなくタメ口でもいいんだよ。大事なのは、共に歌舞伎という強敵に向かっていくこと。強敵というか、大いなる味方かもしれないし。『中村屋スピリッツ』を大切に、やっていきたいね」