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きょうのコラム「時鐘」 2010年5月1日
作家の嵐山光三郎さんは下駄の愛用者である。昨年秋、金沢で革靴を履いていたので理由を聞くと「下駄では飛行機に乗せてくれない」とのことだった
大阪万博のあと、5000年後に向けたタイムカプセルが埋められ、中に下駄があった。日本の和装文化を支える履き物の代表だった。が、わずか40年でハイジャックの凶器になると疑われている。生活様式の変化はかくも早い 中国の上海万博が開幕した。これまで中国4000年の歴史と言ってきたのが、昨年の北京五輪で「中国5000年」が定着してしまった。5000年という時間感覚はどこの国でも文化継続の最長基準と思われているのだろうか 日本人の下駄姿は昭和初期まで醜い西洋漫画の対象だった。下駄は野蛮で非近代的。靴はスマートで現代的。文明の基準で言えばそんな見方だったのだろう。「人類の進歩と調和」を歌った大阪万博から既に40年。上海万博は「より良い都市、よりよい生活」がテーマである 5000年後を夢見るのも楽しいが、国の歴史や文化の価値観の違いを理解し合い、足元の生活を見つめる機会にもしてほしい。 |