桂治も穴井も破った！高橋和彦が日本一

決勝で立山（下）に大外刈りを決め有効を奪う高橋 Photo By スポニチ

　全日本柔道選手権は２９日、東京・日本武道館で行われ、ともに初の決勝進出となったフレッシュな顔合わせは、高橋和彦（２５＝新日鉄）が立山広喜（２４＝日本中央競馬会）を下し、初優勝を飾った。国士舘大在学中は鈴木桂治（２９＝国士舘大教）の付け人だった苦労人は、その鈴木を準々決勝で破り、準決勝では昨年覇者の穴井隆将（２５＝天理大職）も撃破。大会終了後の全日本柔道連盟の強化委員会で、９月に東京で行われる世界選手権の男子１００キロ超級代表に選ばれた。

　決勝前は「本当に戦えるんだろうか」と思ったという。高橋のこの日５試合目、最後の相手は大牟田高、国士舘大で同級生だった１４５キロの立山。先に有効を奪われたが「残り２分は覚えていない」中で、必死に技を繰り出した。残り１分１７秒、大外刈りで追いつくと、最後は消極的になった相手に注意が与えられ逆転。高校時代から“ツインタワー”と並び称された同級生を死力で振り切り「うれしいの半分、疲れたの半分です」とひげ面をほころばせた。

　意識の変化が１メートル８７、１２０キロの潜在能力を引き出した。昨年は東京予選で敗れ、全日本選手権に出場できなかった。昨年１２月のグランドスラム東京で鈴木に一本勝ちし世界選手権代表も見えてきたが、今月３日の選抜体重別は完敗。学生相手の稽古を見直し「このまま国士舘大にいたら甘える」と、関東近郊への出稽古を１週間。その後も２週間、大阪に乗り込み自分を追い込んだ。

　「技は切れないけど、１つだけ負けないものをつくりたかった」。前に出て、先に組んで、先に技を掛ける。そのため、最重量級にはきつい１時間のランニングをこなすのが日課。磨いたスタミナが、ともに判定までもつれこんだ鈴木、穴井との連戦でも生きた。国士舘大の山内直人監督も「我慢ができる高橋を、神様も見ていてくれた」と、鈴木の付け人だった男の成長に目を細めた。

　今も尊敬する鈴木とともに、世界選手権１００キロ超級代表に選ばれた。「まだまだいろんなことを（鈴木から）盗みたい」。きらめくような才能がなくても、日本一に成ることができると証明した２５歳は「全日本王者として背負わされるものは、歓迎します。勝った人しか味わえないものだから」と、責任感を口にした。

　◆高橋　和彦（たかはし・かずひこ）１９８５年（昭６０）４月３日、熊本県阿蘇市出身の２５歳。宮地小１年時に一の宮少年柔道クラブで競技を開始。同時に始めた相撲では小４で全国２位。一の宮中から柔道に専念し、大牟田高―国士舘大。昨年は全日本選抜体重別、講道館杯を制覇。今年１月のマスターズは３位だった。１メートル８７、１２０キロ。家族は父、母、兄２人。

[ 2010年04月30日 ]