元横綱・朝青龍(29)の電撃訪朝が波紋を広げている。朝青龍は北朝鮮に忠誠を尽くすかのように金日成バッジを礼儀正しく装着。訪朝の目的について、モンゴル政界進出への布石との見方がある一方で、「アントニオ猪木氏に近い人物から招きがあった。平壌でプロレスをやるつもりではないか」という仰天情報も流れている。
朝青龍の電撃訪朝は、朝鮮中央通信が22日に配信した写真で発覚した。平壌の万寿台議事堂で撮影されたモンゴル外交団の記念写真で、朝青龍は北のナンバー2、金永南・最高人民会議常任委員長の真後ろというベストポジションをキープしている。
「注目すべきは朝青龍の左胸に付けられたバッジ。朝鮮労働党旗に金日成主席の肖像画がデザインされたタイプで、写真では金委員長と朝青龍が左胸、もう1人が襟に付けているのが確認できる。ただ、北では背広の襟に付けないのが礼儀。金委員長と朝青龍だけが正しい付け方だが、一体誰が朝青龍に指南したのか」と民間の朝鮮研究者は驚く。しかも「外交団の一員が、わざわざ北のバッジを付けるのは異例」といい、朝青龍の北へのゴマすりぶりは相当なもののようだ。
朝青龍の訪朝理由については、さまざまな説が流れている。格闘技界の関係者は「アントニオ猪木さんとも交流がある在日朝鮮人の実業家が今回の訪朝に深く関与しているらしい」と明かす。猪木氏は1995年4月に日本の有名なレスラーを集めて「平和のための平壌国際体育・文化祝典」を開催。昨年3月に訪朝した際も、自身が経営するプロレス団体「IGF」の平壌事務所を開設し、第2回大会の実施を模索している。
「実は朝青龍が訪朝した同じ日、金委員長は朝鮮総連の訪朝団とも面会している。このメンバーと朝青龍が接触した可能性が高く、『朝青龍を第2回大会の目玉にするのではないか』という噂もささやかれている」(格闘技界関係者)。
朝青龍のモンゴル訪朝団は21日に北朝鮮北東部の港町、羅先市を訪れ、貿易と経済協力の覚書に調印した。元国立モンゴル大客員教授の宮田修氏は「モンゴルには豊富な鉱物資源が埋蔵されているが、港がないのが弱点。そこで将来的には羅先を物流基地にして、日本などと貿易を行う計画がある。モンゴル側はすでに広大な土地を押さえている」と語る。
宮田氏は「朝青龍は2年後の選挙で国会議員になることを狙っている。(訪朝は)将来をにらんだ動きではないか」と推測するが、一方で「サーカス団の売り込みとも考えられる」という。朝青龍のグループ企業は、首都ウランバートルのサーカス場の運営権を取得しているからだ。
朝青龍の将来は政治家か、ビジネスマンか。いずれにしても日本の相撲界とかかわる気はまったくなさそうだ。