PJ: 大谷 憲史
流出したデータを元にした記事はどうなんだろう?=日大事件で
2010年04月30日 14:31 JST
センセーショナルに伝えても市民感覚としてはどうなんだろう?(キャプチャ画像 作成:大谷憲史) 
【PJニュース 2010年4月30日】4月26日、報道各社は、日本大学の男性職員が自宅のPCでファイル交換ソフト「Share」を使用してウイルスに感染し、業務情報がインターネット上に流出した問題について報じた。27日には日本大学で記者会見が行われ、問題の経緯が説明された。ファイル交換ソフトを使用した問題についてはこれまでにも取り上げてきた。場合によっては自分や他人の人生が狂わされるような大事につながっていくのに、どうしてファイル交換ソフトが利用され続けているのか。しかし、それ以上に驚いたのは、今回の問題を取り上げたネットメディアである。
日本大学の記者会見では、男性職員は4月24日夜、異動情報や部内マニュアルなどをUSBメモリーに入れ、自宅に持ち帰った。自宅のパソコンで使った際、ファイル共有ソフトを通じてメモリー内の情報が流出したという。
2ちゃんねるでは、翌25日に取り上げられ始め、あとは祭り状態となってしまった。2ちゃんでは流出したとされるデータの一覧名とともにダウンロード先のURLも記されていたが、現在は削除されている。しかし、一度流出してしまったデータは2ちゃんの他のトピックに飛び火してしまい、過去のことで現在の仕事に支障が出てくる人も現れてしまった。
流出したデータを元にして、過去のことを蒸し返すようなことをしても良いのだろうか。
4月28日、J-CASTニュースに「50代男性教授3回セクハラ? 日大の寛大すぎる対応ぶり」というタイトルの記事が掲載された。日本大学の情報流出に関する記事なのだが、その内容を読んで目を疑ってしまった。
冒頭には、「最近退職した50代の男性教授は、2度もセクハラを指摘されながら、さらに執拗に繰り返していた。しかし、日大では、懲戒免職を公表しなかったり、論文盗用でも指導で済ませたりしていた」と書かれており、流出した資料が手元にないと書けないような記述があった。
さらに読み進めると、「複数の女子学生を執拗にデートに誘う」「盗用では、論文指導だけに終わる」の見出しのもとに記事が続いている。記事の後半には、直接日本大学に取材したことが書かれているが、メインは、流出したデータを元にしたもの。
記事の元になった流出データはどこから入手したのだろうか。
また、zakzakの4月28日付け記事「セクハラ、不倫、盗作にチクリ…日大不祥事流出の“驚がく中身”」も酷い。「実際、事実かどうかは不明ながら、流出した文書に掲載された『不祥事』は唖然とするものばかりだった。」として、その一部を掲載している。事実かどうかを取材することもなく、記事にするのはいかがなものだろうか。
また、日本大学の記者会見を報じたINTERNET Watchの記事では、報道陣との一問一答では大麻のことには触れていないが、J-CAST、zakzakなどの記事タイトルには「セクハラ実名、大麻、ハレンチ写真」の文字が躍る。
マスコミは国民の知る権利を保障するために事件・事故や問題などを詳細に報じるが、この記事は報じ方を間違っていないだろうか。まずは、大学当局の記者会見に基づいた記事をきちんと書くべきである。
PJニュースでは取材を行う際、「2ちゃんねるなどの情報は参考程度に留めて置くこと」と言われているが、J-CASTやzakzakでは2ちゃんで流出したデータを入手し、それを元にして記事を書いていたとすれば、お粗末な話である。
日本大学を擁護するわけではないが、教員不祥事に対して日本大学が寛大なのかどうかが問題ではない。また、センセーショナルに伝えるべきものでもない。明日は我が身であることも肝に銘じなければならない。
問題にすべきは、「ファイル共有ソフトを通じた情報流出による被害を防ぐ」ことにある。が、2ちゃんねるを取材源の一つにしているようなネットメディアには、そのような解決策を提案するような記事は書けないだろう。【了】
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