日蓮正宗　立正安国論、正義顕揚七百五十年

さて、私には兄貴が一人います。

この兄貴が奇想天外な人間で歳は随分離れており、私は東京で誕生したのですが、兄貴は横浜で誕生しております。１９歳も年が違っています。いわゆる『腹違い』なんです。

この兄貴、終戦直後米軍の仕事を手伝っており、ここでたくさんのアメリカ人と友人関係を築き上げたのでしょう。また英語も非常に堪能でした。当時の私は父の仕事の関係上大阪に家族と移り住んでいたのですが、兄貴は横浜です。終戦の色がいまだに濃く残る日本でありました。

とにかく金回りがよかったのでしょうか、横浜の日本人で最初にタキシードをあつらえ桜木町界隈を闊歩していたそうです。・・そうです、というのは私は大阪にいたので知りません、兄を知る友人から聞いたことです。

この兄がアメリカに憧れ、友人と一緒に密航をたくらんだのです！！
「プレジデント・ウィルソン号」アメリカの豪華客船です。当時日本人は海外渡航をすることは不可能で、勿論パスポートなど一般人には発行してくれません。苦肉の策だったのでしょう。

守備よく客船に乗りこみ、毎日毎夜ねぐらは甲板の上！　何せ１０００人も乗っているのですから、誰が密航者か分からなかったそうです。

そして数日後、いよいよハワイ諸島が見えてきました。深夜です。ホノルルの町の光が目の前に近付いてきた時です。腰に赤い布を垂らし、海へ飛び込んだそうです。赤い布を垂らしたのは、サメに狙われないようにする為だったそうです。

夜の光というのは凄く近くに見えるそうですね。わずかホノルルまで数マイルと思って飛び込んだのはいいのですが、実際には５０（８０キロ）マイル以上もあったのでしょう。途中で力尽き、気がついた時は地元の人に海岸で見つけられ、オアフ島ではなく、マウイ島だったということです。

まぁ、話は長くなりますので、ここら辺で失礼致しますが、この話は当時週刊誌でも話題となり、「勇敢な日本青年が密航！」と書かれマスコミを賑わしたのは確かです。

これを耳にした、当時まだ駆け出しの石原慎太郎が「短編小説・密航」と題し作品を発表しております。

本屋さんではありません。廃刊になっておりますので、私の北海道の友人がわざわざ図書館で見つけてくれ、送ってくれました。

写真がそれです。

で、その兄が数年後アメリカに渡り、商売で大成功し、それを縁として私が渡米することになるわけです。その話はまた後日に致します。

「石原慎太郎短編集・密航」

Ｐｒｅｓｉｄｅｎｔ　Ｗｉｌｓｏｎ

海外に行くのが庶民にとっては手の届かない夢や憧れであり、それも船の利用でした。その当時ホンコン、神戸、横浜、ホノルル、サンフランシスコを結ぶ太平洋航路には、アメリカン・プレジデント・ライン（ A P L ）という船会社が定期客船を運航していましたが、船名にはプレジデント・ウイルソン号とかプレジデント・モンロー号のように、必ずプレジデントの名前を付けていました。写真は横浜のサウス・ピア（ South Pier ）で船飾をしているウイルソン号を撮したものです。
http://homepage3.nifty.com/yoshihito/hawaii.htm