堀江貴文が語るネットビジネス最前線 「iPadが出たらパソコンは捨てると思う」G24月26日(月) 18時55分配信 / 経済 - 産業
最近は、インターネットで有料のメルマガや動画を配信して収益化している人が増えています。たとえば、動画配信。ビデオジャーナリストの神保哲生さんが設立した有料動画サイト「ビデオニュース・ドットコム」(月額525円)には、1万人くらいの会員がいます。神保さんのように、かつてはテレビに出演してもわずかな出演料しか支払われなかった人たちが、いまや自分でメディアを持って大きな収益を得だしたということです。 芸能レポーターの梨元勝さんは、有料の芸能情報(月額315円)を配信して読者を獲得しています。また彼は本業以外に、「梨元勝のオメデトウ!」というサービスも行っています。これは、依頼のあった新郎新婦に対して、梨元さんがテレビでおなじみのあの口調でお祝いのコメントを届けるというものです。その権利は、1回約3万円(笑)。これはビジネスになると思います。実は、僕も知り合いの結婚式業者に頼まれて、お祝いメッセージを50〜100本くらい撮ったことがあります。依頼者(結婚するカップル)は結婚式費用のオプション代金として結婚式業者に2万〜5万円を払うわけですが、かなりのニーズがあるらしい。なぜ、僕が結婚式のお祝いメッセンジャーに選ばれたのかは少し謎ですが、単に僕が有名人だからということでしょう。 またネット上では、情報商材ビジネスも流行っています。たとえば、パチンコの必勝法や競馬の予想会社。このような昔ながらのものから、最近は「ナンパで女の子を落とす方法」をネット上で売っている業者もあります。彼らは渋谷の路上でガチンコのナンパをしているわけですが、女の子に声をかけてからホテルに連れ込むまでの音声の一部始終をレコーダーで録音して、それを月額1万〜2万円でユーザーに配信しているのです。 iPhoneのアプリで言えば、東洋経済の『会社四季報』などが売れています。あんな分厚い本は持ち歩くわけにはいかないでしょう。でも、iPhoneの中に入っていれば、いつでもどこでも使えます。これは便利だと思います。 ネット業界には、各分野の専門家にコアな読者がつく傾向があります。特徴的なのは、ベンジャミン・フルフォードさんや植草一秀さんなど、いわゆる“トンデモ系”。一般のメディアではなかなか取り上げられない、極端な発言や行動をする人たちと定義できるでしょうか。ネット上では、そんなトンデモ系の人たちに、多くのファンがついています。 植草さんの場合は、経済学者としては真っ当な発言をする人だと思いますが、逮捕されて有罪判決を受けるなど、彼の人生はトンデモじゃないですか。元駐レバノン日本国特命全権大使で作家の天木直人さんもネット上で人気があります。彼の人気の理由もトンデモ系と分類されるかもしれません。彼の場合は、「アンチ小泉」というニッチな層の読者がいるので、メルマガでは月100万円以上は稼いでいると思います(天木氏は03年、現役の駐レバノン大使でありながら当時の小泉純一郎首相を批判し、外務省を辞めた)。同様に、ニッチな層を持っているのが、元航空幕僚長の田母神俊雄さん。“ネトウヨ(ネット右翼)”からも人気が高く、講演会の依頼も多い。以上のような方々は、5000〜1万人を集めて有料メルマガをやれば、かならず儲かります。 たとえば、月500円で2000人の会員がいれば、売上は総計100万円。会員1万人なら、売上500万円。このように、スーパーニッチの集合体で儲けるのは、いわゆる「ロングテール」のビジネスモデルと言えるでしょう。たとえば、本が2000部しか売れなかったらビジネスになりません。そういう書き手は、いままで本を出すことができなかったわけです。しかし、ネットで2000人の読者がいれば、お金儲けができる。ロングテールとは、いままで儲からないと思われていた需要の少ない商品が、ネットの出現で在庫や流通のコストがなくなり、儲かる仕組みができたという考え方です。 『フリー』は、ネット上のビジネスについて、僕たちが何気なく思っていたことが明確に書いてある本です。この本のなかで一番重要なポイントは、「デジタル化された情報は、遅かれ早かれフリー(無料)になる」という指摘かもしれません。 僕たちが“ブログビジネス”を始めたのは、04年頃です。ブログという言葉を誰も知らない時代に、「ライブドア」のブログは、フリーモデルとしてスタートしました。誰でも簡単な操作でブログを無料で作れるようにしたら、これが世間に受けたわけです。一般向けの無料サービスが浸透していく過程で、僕たちは企業や専門家向けにより高度なサービスを提供する有料ブログを設けました。そうしたプレミアムサービスを利用するのは、全ユーザーの5%程度。その当時から、無料と有料を組み合わせる「フリーミアム」のビジネスモデルが成立していたということです。実際に当時のライブドアの収益は、3分の1が有料ブログによるものでした。 出版界では今後どんなビジネスを展開していくべきか。僕はトークライブをやるべきだと思っているんですよ。古いビジネスモデルでいうと、講演会です。出版界より先にデジタル革命の洗礼を浴びた音楽業界を見ると、いろいろなヒントがあるのではないかと思っています。 以前、チェッカーズの元リーダーの武内享さんにお会いしたとき、失礼ながら「最近、何してるんすか?」と聞いてしまったことがありました。そのとき彼は、「自分たちでジャズ系のバンドを作った。狭い箱を借りて100人、200人を相手にライブをやっている。ファンは数千人しかいないけど、それだけで充分やっていけるんだよね」と言っていました。CDを出しても、何千枚かは売れるようです。彼らはプロダクションを自分で作り、ウェブを立ち上げてCDも直売で売っているから利益率はいい。要は、数千人単位、もしかしたら数百人の単位でも固定ファンがいればビジネスになるということなのです。そのファンとしっかり結びつくためには、ライブが重要ということではないかと思っています。 ■形態にこだわってはいけない デジタル化の勢いは凄まじいものがあります。今後の出版社の課題は、その波にどう紙媒体を位置づけていくかだと思います。僕自身は最近、紙媒体の雑誌をほとんど読まなくなりました。なぜなら、iPhoneとツイッターで情報量は充分だからです。iPhoneで仕事に必要なツールはすべて揃っています。ツイッターは約30分間を賞味期限に、ほぼリアルタイムの情報を入手することができます。ツイッターが社会現象にまでなっている原因のひとつは、このリアルタイム性でしょう。リアルタイムで発したことに対して、すぐに反応が返ってくる。いい言葉を呟けば、それ相応の反響がある。それは有名人だからではなく、まったく無名の人でもそのような現象が起きるのです。 iPadのようなタブレット端末が普及してきたら、僕はパソコンを捨ててしまうかもしれません。パソコンの起動の遅さ、消費電力の多さはどうしようもありませんから。同時に、タブレット端末が普及すると紙媒体は急速に消えていくような気もします。 ひとつ言えることは、デジタル時代には「形態にこだわってはいけない」ということ。たとえば、産経新聞は新聞の紙面の体裁のまま、iPhoneで記事を無料公開しています。「スゲぇ、iPhoneで新聞がそのままの形で読めるよ」って一度は驚きますが、毎回それで読む人って、きっといないでしょう(笑)。 今年は本の世界でも、便利なタブレット端末が発売されることで、日本人の読書習慣が大きく変わることになると思っています。出版社はそれに合わせた企画を絶対に作らなくてはいけません。デジタル時代には、情報の“見せ方”を工夫することが大事なんです。 僕が思い描いているのは、核となる人物が1人いて、そのまわりに編集者やライターがいるという新しいメディアの形です。オフィスがいらないぶん、組織としての効率はいい。完全デジタル入稿にすれば、iPad一台で充分です。利益率も高く、みんながハッピーになれる。そういう小集団がたくさん出てくるのがこれからの流れだと僕は思います。出版社は寄稿家という“タレント”を抱え、マネジメントも含めたことをする小さなプロダクションのような存在になるのかもしれません。 デジタル化により出版のビジネスモデルが徐々に厳しくなってきているなか、出版社は原点に返るのではないかと僕は考えています。だって、最初は出版社も机と電話一本で商売を始めたわけじゃないですか。 ■堀江貴文(Takafumi Horie) 1972年、福岡県生まれ。ライブドア元代表取締役社長。証券取引法違反容疑で逮捕され、現在上告中。近著に『人生論』(ロングセラーズ) 【関連記事】 ・ G2 Vol.3 ジョン・ダワー「現在世界で起きているコミュニケーション革命」
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