きょうの社説 2010年4月30日

◎事業仕分け マニフェストは「聖域」なのか
 独立行政法人を対象とした「事業仕分け第2弾」の前半が終了した。独法は官僚OBの 天下りの受け皿となり、税金の無駄遣いを生む温床になっている。そこに照準を定め、無駄と既得権益が絡み合う構図に切り込んだ。今回の仕分けで、天下り法人との癒着や契約の不透明さが明らかになり、非効率な業務の実態をあぶり出した点は評価できる。

 ただ、国家予算全体を眺めたとき、重箱の隅をつついた印象は否めない。仕分けの対象 を独法や政府系の公益法人に絞り込むだけでなく、メスを入れるべきもっと大きな対象があるのではないか。

 その一番手は、ほかならぬ民主党のマニフェスト(政権公約)である。子ども手当や農 家の戸別所得補償制度などで、多くの問題点が指摘されている。ガソリンの暫定税率廃止は事実上ほごにされ、高速道路の無料化は二転三転し、あらぬ方向へ舵が切られようとしている。政府・与党が優先すべきは、自分たちのマニフェストの「仕分け」ではないのか。マニフェストをあたかも「聖域」のように扱って、天下り法人を悪役に見立てた一種の政治ショーだけにスポットライトを当てるやり方は誠実とはいえない。

 財務省の試算によると、子ども手当の全額支給など、民主党のマニフェスト施策の大半 を実施した場合、2013年度の一般会計総額は106兆7千億円に拡大する。景気回復を見込んでも税収の伸びは鈍く、新規国債発行額は58兆4千億円にまで膨れ上がるという。野党時代、マニフェスト実現の財源は、予算の組み替えや無駄の排除でねん出できると豪語していたのに、その約束はどうあがいても果たせそうにない。

 事業仕分けで、自民党政権時代の施策や行政の無駄を減らすことも大切だが、新たな施 策の無駄を削ぎ落とすことも同じように重要だ。事業仕分けと同様に、さまざまな角度からマニフェストにメスを入れ、余分なぜい肉を削れば、国民はむしろ評価するだろう。有権者の顔色を気にして、マニフェストの修正を先延ばしするなら、夏の参院選で手痛いしっぺ返しを食わぬとも限らない。

◎金沢・まちカフェ 中心街巡りのオアシスに
 金沢市中心商店街の回遊性を高めるため、1日から竪町商店街で毎週土日祝日、オープ ンカフェ「まちカフェ」がオープンする。市内中心部では、ラ・フォル・ジュルネ金沢「熱狂の日」音楽祭や、金沢JAZZSTREETなど、街頭も舞台にした大型イベントが定着しているだけに、それらとの相乗効果も生かしながら、にぎわい創出を演出するオアシスのようなスポットにしてもらいたい。

 金沢市の都心部のオープンカフェは、金沢経済同友会の提言により、にぎわいづくりの 社会実験として広坂通りに設けられ、多くの利用者があったが、今回が本格的なスタートと言えるだろう。

 まちカフェは、オープンカフェのノウハウを持つ竪町を皮切りに、開設エリアを広げて いく計画というが、近くで開かれるイベントと連動して開催日程を柔軟に設定したり、それぞれの商店街で独自の特典を設けるなど、カフェめぐりを楽しめるような統一感のある仕掛けも考えていきたい。

 金沢市中心部では4月から、特に若者の呼び込みに狙いを定めた、にぎわいづくりが本 格化し、金沢市の中心商店街まちづくり協議会(5タウンズ)が、大学・短大、専門学校生を対象に、商品割引などの「学得」サービスを実施している。また県、市も、大学コンソーシアムと連携し、石川で学ぶ学生の特典として、兼六園周辺などの文化施設の無料パスポートを提供している。

 さらには、金沢市が今年度に創設する「金沢まちづくり学生会議」が主体となって企画 を練り上げ、飲食街の新天地・木倉町商店街一帯で、夜間講座やカフェテラスを開き、若者たちに交流の場を提供するプランがスタートする。

 日中だけでなく夜間もにぎわいを持続させる試みであり、近接する北陸有数のファッシ ョン街の雰囲気と好対照を描く庶民的でわい雑な飲食街の魅力を生かした談論風発の「場」を演出すれば、多様な金沢の魅力を発信できるだろう。まちカフェは、こうした動きとも連動して、まちなか歩きの欠かせぬスポットにしてほしい。