覚せい剤取締法違反(使用、所持)と麻薬取締法違反(所持)の罪に問われた人気バンド「JAYWALK」のボーカル・中村耕一被告(59)の初公判が28日、東京地裁(藤井敏明裁判官)で開かれた。中村被告は起訴事実を認め、検察側は懲役2年を求刑、即日結審した。法廷では同被告が職務質問を受けた際、密売人の連絡先を書いていたしょうゆせんべいを食べて証拠隠滅を図ったことや、1977年8月に大麻取締法違反の罪で執行猶予付きの有罪判決を受けていたことなど、新事実が明らかになった。判決は5月12日に言い渡される。
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絶妙な証拠隠滅の手口が明らかになった。
検察側論告によると中村被告は、昨年2、3月ごろから覚せい剤を密売人から購入し使用を繰り返してきた。その際、密売人の電話番号は「メモに残すとまずい」と考え、せんべいに書き込んでいた。警察官から職務質問を受けそうになる度に、せんべいを食べて隠滅を図ってきた。
3月9日に逮捕された際は港区西麻布の路上に止めていた車内にいたところ職務質問され、約1時間車内から出てこなかった。この際も密売人の連絡先を書いていたしょうゆせんべいを食べたという。
検察側は過去の薬物所持についても明らかにした。1977年8月22日に函館地裁で大麻を所持していたとして懲役1年6月、執行猶予2年の有罪判決を受けていた。
中村被告は黒いスーツに白いワイシャツ姿で入廷。トレードマークの長いヒゲはそのままだった。最初は上を見上げて何か思いふけっているようだったが、やがてうつむき、最後までその姿勢だった。傍聴席を見ることもなく、多くの人を魅了した独特のハスキーボイスはマイク越しでも聞き取れないほどだった。
覚せい剤の使用について「興味本位で始めた。想像していた効果はなかった」と話し、幻聴や幻覚などもなかったという。自宅でのみ使用し、水などに溶かしたり、オブラードに包んで飲んだりしたという。
内縁の妻でタレントの矢野きよ実(48)が情状証人として出廷。「専門の病院で治療して名古屋で一緒に暮らし、更生していきたい」と話すと、中村被告は目頭を押さえた。「彼女が10代から築き上げてきたものを、僕が壊してしまった。これからは僕が守っていきたい」と中村被告が誓うと、傍聴席の最前列右端に座った矢野の嗚咽(おえつ)が法廷に響き渡った。
検察側冒頭陳述などによると、被告は昨年2、3月ごろから覚せい剤を繰り返し使用。今年3月8日ごろ、東京・南青山の駐車場に止めた車の中で若干量を飲んだ。