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車の楽しさを伝えたい――。若者の車離れを防ごうと、自動車雑誌やメーカーが、体験型のイベントを相次いで企画している。都心を疾走するレース車への同乗や、ハイブリッド車(HV)による燃費競争など趣向も様々。携帯電話やゲーム機にお金をつぎ込む若者のハートを取り戻せるか。
東京・お台場の専用道路をレースカーが爆音を響かせ、後輪を振りながらカーブを駆け抜けていく。
17〜18日にトヨタ自動車系の展示施設「メガウェブ」で開かれたイベント。目玉の一つが、世界ラリー選手権で活躍した「スズキSX4」の同乗だ。車から降りた参加者は「経験のない速さで、面白かった」と声を弾ませた。
このイベントは「ベストカー」や「ドライバー」など、日頃はライバルの自動車専門6誌が初めて手を組んで企画した。トヨタやホンダ、日産自動車も、量販車の改造レース車「スーパーGTカー」を展示。元F1ドライバーの鈴木亜久里氏らのトークショーも開かれ、2日間で5万人超が来場した。
ライバルが協力した背景には深刻な若者の車離れがある。2009年の国内新車販売台数(軽自動車を含む)は461万台とピークの90年から4割減。自動車雑誌の部数も97年の1億7千万部から現在は約7千万部に激減した。
ベストカーの勝股優・編集長は「読者の高年齢化が進み、業界の危機感は大きい。自動車評論家やプロのドライバーたちも含め、みんな手弁当で参加した」と話す。
自動車メーカーも国内市場の底上げを目指し、体験イベントを増やす。トヨタは、豊田章男社長肝いりで、社内の車好きによる「GAZOO(ガズー) Racing」を立ち上げ、各種イベントで、オリジナルのHVスポーツ車の同乗走行などで盛り上げる。系列の富士スピードウェイも今年、「草の根レース応援キャンペーン」をはじめ、6月には無改造のHVで燃費やスピードを競うレースを実施する。
このほかホンダも5月16日、参加型イベント「エンジョイ・ホンダ」を熊本県で初めて開催し、自動車や二輪車の試乗のほか、子どもの電動バイク体験やレーシングカー展示もする。(中川仁樹)