邑智郡3町で運営する邑智病院(邑南町)が、常勤小児科医が半減した済生会江津総合病院に対し、定期的な医師派遣を決めた。小児科の常勤医はいずれも1人の両病院。邑智病院も余裕があるわけではないが、同じ救急圏内の江津市での医療崩壊を避けるため決断された▲「石見地方で医師の足りた病院はどこも無いでしょう。それでも各拠点が最低限維持されなくてはならないんです」。邑智病院の日高武英・事務部長は意義を説明した。自身も救急救命士として10年間、郡市の医療現場を駆け回った経験からの言葉だ。過疎の進む地方で子を抱える住民にとって一番の不安は「診てもらえる場所」そのものが無くなることだという▲幼い子を持つ身として取材中も切実に思えたこの問題。応援を出す側、受ける側とも綱渡りで精いっぱいの維持努力をしている。だが、この努力は本来、現場だけに押しつけられるものではない。医師の不足・偏在が解消される全国的な政策が一刻も早くなされるべきだと改めて感じた。【鈴木健太郎】
毎日新聞 2010年4月29日 地方版