「法廷の場で真実の事実関係と責任の所在を明らかにすべきだ。これこそが善良な市民感覚だ」。民主党の小沢一郎幹事長が絡む政治資金規正法違反事件をめぐり、11人の市民からなる検察審査会(検審)は「起訴相当」の議決でこう指弾した。政界の絶対的権力者を窮地に追い込んだ11人は一体どんな人たちなのか−。
検審は地裁などがある各地に165の審査会があり、検察側の不起訴処分が妥当かどうかについて審査する。有権者名簿からくじ引きで選ばれた審査員11人が「市民の一般的な感覚で審査する」(司法関係者)機関だ。
任期は半年。3カ月ごとに5人または6人ずつが改選される。内訳は、主婦や公務員などさまざまだ。
ただ、いつ誰が審査員に選任されたか、審査はいつ何回開かれたかなどは一切非公開で、結論は議決書として示されるだけ。審査員は守秘義務を負い、審査案件の情報を第三者に漏らすことは終生禁止。守秘義務違反は6年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される。もちろん今回も、小沢氏を追い込んだ人物が誰なのかは不明だ。
審査では捜査書類を読んだり、捜査を担当した検察官の意見を聴取できる。「審査補助員」と呼ばれる弁護士の助言を求めることも可能だ。そのうえで「起訴相当」「不起訴不当」「不起訴相当」のいずれかに◯をつける。
「起訴相当」は、8人以上が◯をつければ決定。小沢氏の審査は2月下旬から8回行われ、今月いっぱいで任期が切れる6人を含む11人全員が「起訴相当」を選んだ。
検審の制度は1948年に導入されたが、司法に市民感覚を反映させる司法制度改革の一環で、昨年5月の法改正で権限が強化された。
それまでは議決に強制力はなかったが、法改正後は「起訴相当」議決後も検察側が起訴しなければ、検審による再審査が行われることになった。ここで8人以上が「起訴相当」に賛成すれば、有無を言わさず「強制起訴」に持ち込める。実際に法改正後、兵庫県明石市の花火大会事故で県警明石署元副署長、兵庫・尼崎JR脱線事故ではJR西日本の3社長が強制起訴されている。
来月からは新しい審査員6人が加わり、場合によっては小沢氏の再審査が行われる。新たな11人は、どう判断するか。