平成22年4月17日
時事通信世論調査で内閣支持率続落23.7%、首相退陣論が現実味
56・5%が不支持
比例投票先みんなの党3位に
時事通信社が9〜12日に実施した4月の世論調査によると、鳩山内閣の支持率は前月比7・2ポイント減の23・7%となり、政権運営の「危険水域」とされる2割台に落ち込んだ。不支持率は同8・0ポイント増の56・5%と初めて過半数を占めた。小沢一郎民主党幹事長らの「政治とカネ」の問題に加え、米軍普天間飛行場移設問題で鳩山由紀夫首相が「5月決着」を公言しながら進展していないことなどへの批判が背景にあるとみられる。
調査は、全国の成人男女2000人を対象に個別面接方式で実施。回収率は67・1%だった。
参院選比例代表の投票先では、民主が17・7%(同3・4ポイント減)、自民が16・8%(同3・7ポイント減)とほぼ拮抗(きっこう)。みんなの党は7・2%(同4・0ポイント増)となり、5・2%の公明を抜いて「第3党」に躍進した。
鳩山内閣への評価を支持政党別に見ると、支持政党なしの無党派層は、「支持」が17・4%にとどまり、「不支持」は57・6%だった。民主支持層では、支持が64・5%、不支持が23・8%。一方、連立を組む社民支持層は、不支持53・8%が支持30・8%を上回った。
不支持の理由(複数回答)は、「期待が持てない」が35・0%(同9・1ポイント増)に急増。「リーダーシップがない」32・1%(同5・6ポイント増)、「政策が駄目」21・0%(同6・1ポイント増)が続いた。支持する理由は「他に適当な人がいない」8・4%、「政策が良い」4・8%、「首相の属する党を支持している」4・6%の順。
小沢氏の進退については、「幹事長を辞めるべきだ」が46・2%(同2・3ポイント減)、「幹事長だけでなく衆院議員も辞めるべきだ」が29・7%(同1・6ポイント減)と、合わせて75・9%(同3・9ポイント減)が幹事長辞任を求めている。
政党支持率は、民主が17・2%(同2・1ポイント減)、自民が14・2%(同1・0ポイント減)といずれも減少。以下、公明は3・8%(同0・6ポイント増)、みんなの党2・1%(同0・9ポイント増)、共産1・4%、社民1・0%などの順。支持政党なしは6カ月連続で増加して57・5%だった。
首相退陣論が現実味 参院選へ動揺広がる−民主
時事通信社の4月世論調査で鳩山内閣の支持率が23・7%にまで落ち込んだことで、民主党内では16日、動揺が広がった。懸案の米軍普天間飛行場移設問題で、鳩山由紀夫首相が約束の「5月決着」を果たせなければ、さらに支持率は低下しかねない。参院選を前にした首相退陣が、現実味を持って語られ始めた。
「参院選マニフェスト(政権公約)の表紙(に載せる顔)をどうするかという話になってくる」。あるベテラン議員は、いずれ「鳩山降ろし」の動きが出てくると指摘。若手の一人は「参院選では与党での過半数獲得も厳しい」と危機感をあらわにし、党幹部も「政権の末期症状」と厳しい現状を認めた。
ただ、小沢一郎幹事長や菅直人副総理兼財務相ら政府・民主党の実力者は、鳩山首相の下で政権浮揚を図り、参院選を乗り切ることを想定しているとされる。不人気を理由に首相を交代していては、「自民党政権と同じになってしまう」(幹部)などの理由からだ。輿石東参院議員会長は「政策実現に頑張るだけだ」と、首相を支える姿勢を強調した。しかし、難問が山積し、支持率を大きく押し上げる要素が見当たらないのも実情だ。
一方、政権への逆風が日ごとに強まるのに伴い、小沢氏の進退をめぐる「小沢系対非小沢系」の駆け引きは沈静化しつつある。党内で主導権争いなどやっていられないほど、取り巻く状況が悪化した結果だ。党関係者は「小沢幹事長が交代しても、有権者の支持は戻らない」と分析する。党内で小沢氏の進退に言及するのはもはや、ベテランの渡部恒三元衆院副議長ぐらいだ。
こうした中、鳩山首相自身は政権維持になお強い意欲をもっているようだ。先のワシントンでのメドベージェフ・ロシア大統領との会談で、領土問題の進展を目指し、年内に3回の首脳会談を開くことで合意している。政府内の一部からは、普天間問題の決着が先送りになった場合、「首相に責任が及ぶのを回避するため、平野博文官房長官が辞める」(関係者)との観測も漏れる。
「国会に提出している法案を成立させ、政策遂行につなげる」。平野長官は記者会見で、支持率低下について聞かれ、厳しい表情でコメントした。
安倍政権より支持急落
鳩山内閣の支持率が2009年9月の発足からわずか7カ月で23・7%と、「危険水域」とされる20%台に落ち込んだ。夏の参院選を控える鳩山由紀夫首相の政権運営に、「赤信号」が点滅し始めた格好だ。07年の前回参院選で自民党が大敗を喫した際の安倍内閣よりも下落のペースは激しく、政権へのダメージは深刻だ。
鳩山内閣発足直後の09年10月の調査で60・6%だった支持率はほぼ一本調子で下がり続け、10年1月の47・1%からはさらに23ポイント余り下落した。安倍内閣発足直後の06年10月に51・3%あった支持率は、07年1月に40・7%に下落し、同4月は40・6%と横ばい。参院選直前の同7月に25・7%に下落した。鳩山内閣の急落ぶりはそれ以上だ。
不支持の理由をみると、「期待が持てない」「リーダーシップがない」が上位を占め、有権者が民主党政権に失望し、首相の指導力欠如に不満を募らせていることは明らか。特に、選挙の行方を左右する無党派層の支持率は2割を切り、今や政権末期の様相だ。
参院選比例代表の投票先も、民主党と自民党の差は2カ月連続で1ポイントを切り、みんなの党が急上昇した。このうち、無党派層の投票先を見ると、民主9・7%、自民9・1%、みんな6・6%。69・5%は「分からない」と回答した。無党派層の多くがどの政党に投票すべきか、まだ決めかねている状況がうかがえる。
首相退陣なら衆参同日選−仙谷氏 「信頼回復」にも全力
仙谷由人国家戦略担当相は16日夜、TBSの番組収録で、鳩山由紀夫首相が今夏の参院選前に退陣した場合、「ダブル(選挙)を問う可能性があるというか、論理的にはそういうことになる」と述べ、衆参同日選の可能性に言及した。
民主党は、自民党政権下で繰り返された衆院選を伴わない首相交代を批判してきた。仙谷氏の発言は、こうした経緯を踏まえ、首相が辞任した場合は衆院を解散して国民に信を問うべきだとの考えを示したものだ。
ただ、主要閣僚が首相退陣と早期解散に言及したことは党内外に波紋を広げそうだ。内閣支持率下落に歯止めが掛からない首相の一段の求心力低下を招く可能性がある。
番組収録では、仙谷氏は同時に「1年ごとに首相が代わることによって、政党政治そのものに対する不信感、絶望感が国民に生まれてくる」と指摘。「日本が今、直面している課題をちゃんと解決していくことで、この政権に対する信頼感を取り戻さなければならない」と述べ、首相を全面的に支え、政権立て直しに努める考えを強調した。