2010年4月29日0時3分
先日、中国経済を論じるセミナーを聴講した。専門家が、中国経済の潜在力や成長の展望、とくに中国が米国を抜いて世界の経済大国となる可能性を、肯定的に論じた。
彼らが「日本は中国を見習うべきだ」と言った時、聴衆から拍手がわいた。筆者は、強い既視感と違和感を覚えた。1990年代の米国駐在時、米国は経済政策や不良債権問題、市場開放に関して日本批判を強めていたが、米国人に同調して「日本は駄目だ」と自虐する日本人を数多く見た。同じことが、今度は中国に対して、繰り返されている。そして、反論が出なかったことにがっかりした。
問題は、現在ではなくこれからだ。たしかに、経済規模では中国に抜かれ、成長率もはるかに低い。しかし日本は、財政赤字や不良債権、バブルとその崩壊、通貨高や少子高齢化など、中国がこれから直面する問題をすでに経験し対応を学んでいるし、それを今後の政策運営や制度設計に生かす知恵を持っている。また、環境・エネルギー問題への対応や柔軟な産業基盤など、持続的な経済社会システムを構築できる潜在力も有している。
それを、現在の中国が持っているのか。持っていなければ、今度は中国が世界経済を混乱に陥れるリスクとなることを、参加者は指摘すべきだった。
ウォールストリート・ジャーナル紙が、支離滅裂な日本の政治を見て、「ジャパン・ディッシング」(ばかばかしい日本)という論説を掲載した。それに拍手し自虐し、納得する人も少なくないだろう。しかし反発し奮起する日本人もたくさんいるはずだ。そのエネルギーを、日本の再生に向かわせる仕組みを構想し、作りたい。(山人)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。