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【甦れ!! ニッポン】第2部(2)存在感際立つ“ガリバー” (2/2ページ)
同社はバスケット男子を含め35ものスポーツ部を抱え、選手の大きな受け皿を担っている。各部の位置づけは「社員の士気を高め、一体感を培う会社の宝物」(藤原グループ長)。日本独特の「企業スポーツ」の典型といえる。
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同社の35の部は、日本一を目指すラグビー、硬式野球、バスケット男女、陸上長距離の5つが強化部。残る30は一般部という位置づけだ。
強化部の部員には優遇措置があり、例えば、シーズン中には午後3時に仕事を終え、練習に向かえるといった具合。一般部には、ウエートリフティング、銃剣道など、競技人口が決して多くない部も含まれている。
2008年秋に起きた金融危機、いわゆる「リーマンショック」で多くの企業がスポーツ部の統廃合を発表したが、トヨタは1つの部もその対象とせず、各部の経費削減で対応した。
背景には同社が05年に社員約1400人から回収したアンケート結果がある。各部が勝った場合に意欲が上がると答えた社員が30%近くに上り、敗れた場合に低下する7〜8%を大きく上回った。部の活躍が社員の意欲に好影響を与えている実態が示された。まさに「会社の宝物」とされる理由だ。
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プロ化への慎重姿勢には、皮肉にも1993年に始まったJリーグの苦い経験を指摘する関係者もいる。トヨタ自動車はJ1・名古屋の責任企業。仮に赤字が出た場合は補てんする義務を負う。JBLの日立、パナソニックもそれぞれJ2・柏、J1・G大阪の責任企業で、この3社が、プロ化への反応が鈍いとされる。藤原グループ長は「本当なのか分かりません。間違いないのは、弊社の部が社員の士気高揚に重要な存在だということです」。
同社内の35の部で活動する部員は638人(強化部で121人)。受け皿がなく、競技をあきらめざるを得ない選手もいる中で、その存在感は際立つ。日本トップリーグ連携機構に加盟する球技の9リーグ中6リーグにチームを抱え、影響力の大きさも計り知れない。
競技力向上への期待を込め、プロ化に舵を切った日本協会は、企業スポーツ界の“ガリバー”と折り合いをつけられるだろうか−。