年間売上高の8割がJICA関連 OB企業、集中受注

2010年04月22日03時02分

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 外務省所管の独立行政法人・国際協力機構(JICA)と関連法人の渡航・航空券手配や海外からの研修生の受け入れの業務について、JICAの天下りOBが歴代の社長を務める会社が受注を繰り返していることが分かった。JICA関連の受注は、同社の年間売上高の8割前後に上っている。

 JICAの渡航費用をめぐっては、昨秋の事業仕分けで「割高だ」と批判されていた。渡航の業務発注で、JICAの公金が天下り会社に流れ込む構図が明らかになった。JICAは、23日から始まる事業仕分け第2弾でも対象となっている。

 この会社は、「国際サービス・エージェンシー」(本社・東京)。同社やJICAの説明によると、同社は1983年、損害保険代理業務を行うことを主な目的に設立され、86年から旅行代理業務も手がけている。過去5代の社長はすべてJICA出身で、現在の社長と専務の2人もOBだ。また、2000年以降、OB3人が役員として同社に再就職している。

 同社が受注しているJICA関連のビザ取得や航空券を手配する業務には、(1)JICAからの直接ルート(2)関連法人を経由した間接ルートの2通りある。

 (1)では、役職員や海外に派遣する人たちの航空券の手配などで、受注額は06〜08年度の3年間で計41億8千万円。JICAは毎年、旅行業者十数社を会社の実績などに応じて指定業者に選定、職員らがその中から自分で発注する仕組みになっている。同社の08年度の受注額は指定業者14社のうち2番目に多かった。

 職員らは予約やビザ取得の早さ、連絡の頻度などで選ぶケースが多いという。だが、ある元職員は「ある年の同社の取扱額が少なかったため、上司から海外出張の際に使うように指示されたことがある」と打ち明ける。

 また、(2)では、JICAから事業を受注し、OBを受け入れている関連法人の財団法人・日本国際協力センター(JICE)と財団法人・日本国際協力システム(JICS)からも同社は渡航・航空券手配業務を受注。この間接ルートの受注額も06〜08年度で計27億5千万円に上る。JICEは同社への発注について「JICAの業務を取り扱っているため、業務効率が良かった」などと説明する。JICE受注のJICAの研修監理事業では、会計検査院から割高な航空券手配により08年度で約7千万円を節約できたはずと指摘されている。

 さらに、国際サービス・エージェンシーはJICA発注の海外研修生受け入れ業務を07年度まで随意契約で受注。08年度は3年契約を前提とした提案型の入札方式だったが、同社だけの「1社応札」で受注に成功した。08年度の受注額は5億5千万円。

 同社の売上高は08年8月期で35億2千万円、09年8月期で41億4千万円。JICAや関連2法人から同社への08年度の発注総額は31億2千万円。JICAなどと同社の決算期がずれているため一概には比較できないが、同社の年間収入の8割前後がJICA関連といえる。

 JICA関連の受注が多いことについて、同社幹部は「海外出張などでの的確な手配のノウハウを蓄積し、営業活動を一生懸命やって契約を取っている。正々堂々と勝負している」と話した。

 JICA広報室は「OBの役員がいるという意味では特別だが、他にも取引額が多い業者はいる。優遇していることはない」としている。(野口陽、勝亦邦夫)