政府の行政刷新会議(議長・鳩山由紀夫首相)が独立行政法人を対象に実施する「事業仕分け第2弾」は23日、初日の作業を行い、労働政策研究・研修機構の労働政策研究(10年度事業費8600万円)など4法人の8事業を「廃止」と判定した。また、国際協力機構(JICA)の事業を中心に7法人の14事業は「事業縮減」となり、厳しい判定が相次いだ。政府は各独法に判定結果を尊重し10年度事業費の抑制的な執行を求めるほか、国の11年度予算案に仕分け結果を反映させる方針。
「ほとんど民間でやってるのと同じか、それより乏しい内容だ」
仕分け人の寺田学衆院議員は、労働機構の労働政策研究事業で実施している「職業情報データベース」を酷評した。民間仕分け人の市川真一氏が「プロ野球選手」の項目を取り上げ、「ボールを打つ、投げる、走る。実際の試合では判断力が求められる。学歴は必要とされていない」と紹介すると、会場からは失笑が漏れた。機構側は「40年間職業情報を集め、その成果をインターネットで公表している。ある高校では誰でも知っている」と反論したが、尾立源幸参院議員は「事業廃止です。これまでご苦労様でした」。あえなく廃止に仕分けられた。
今回も活躍したのが蓮舫参院議員。沖縄科学技術研究基盤整備機構の「運営委員会」経費に関し、「委員への謝金1万ドルの積算根拠は?」「会議をサンフランシスコで行ったのはなぜ?」などと追及。「これから予算をかなり節約していきます」と担当者が白旗を掲げ、「事業縮減」判定となった。
JICAは仕分け対象で唯一、第1弾で受けた指摘への対応を聞く時間が設けられた。JICA側は、調査研究費を指摘通り3割縮減したことなど見直し案を提示した。
だが、海外勤務職員への在外手当を月額64万円(北京の次長クラス)から44万円に引き下げたとの説明に、田嶋要衆院議員が「給与以外に月44万円とは多くの国民にはショックだ。切り込んでもらいたい」と指摘するなど、「やぶ蛇」になる場面も。理事の平均年収が約1600万円に上ることには、枝野幸男行政刷新担当相が「理事ら13人は多い」と追い打ち。福山哲郎副外相は「十分検討したい」と答えるのが精いっぱいだった。
結局、JICAは有償資金協力を除く6業務が「事業縮減」という判定結果に。自ら見直し案の一部を説明した福山副外相は「かなり省内で激論して踏み込んだつもりだが……」と神妙な表情。JICAの粗信仁(ほぼ・のぶひと)理事は終了後、記者団に「もう勘弁してください」と述べ立ち去った。
「現状維持」判定は2事業だけ。いずれも、病院や老人ホーム、保育所などへ建設資金を貸し付けるのが主要業務の福祉医療機構。ただ、年金担保融資は廃止となり「2勝1敗」。同機構の長野洋理事長は記者団に「去年に比べるとフリーな議論が進んでいいと思う。互いの意見を聞く感じだった」と感想を語った。
中小企業基盤整備機構には、貸し出しに利用されずに残ったままの資金2000億円程度の国への返納を求めるとの判定が出た。
「廃止」と判定された事業の合計額は8841億円に上った。事業額が大きいのは、住宅金融支援機構の住宅資金貸し付け業務だが、両事業の原資は貸し付けの回収金などで、09年度当初予算での国費依存率は1%未満。歳出削減効果は大きく見込めない実態も浮かんだ。【影山哲也、小山由宇、吉永康朗】
毎日新聞 2010年4月23日 22時10分(最終更新 4月24日 0時53分)