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きょうの社説 2010年4月29日
◎もんじゅ再開へ 「夢の原子炉」の道険しい
高速増殖炉「もんじゅ」(敦賀市)の運転再開は、使った以上の燃料を生み出す「夢の
原子炉」の商業化に向けた希望の一歩であると同時に、長く険しい道の始まりでもある。増殖炉が本格稼働し、核燃料リサイクルが軌道に乗れば、ウラン燃料の利用効率は一挙に数十倍まで高まる。北陸電力が2015年度までに志賀原発への導入を目指している使用済み核燃料の再利用(プルサーマル)計画の大きな支援材料にもなるだろう。もんじゅが描き出す未来はまさにバラ色だ。計画通り進めば、2100年過ぎにはウラ ンの輸入が不要になり、エネルギー危機の不安から解放される可能性がある。だが、商業化へ至る過程で、重大事故が起これば、開発が止まり、計画そのものが頓挫する危険性もはらむ。そもそも、もんじゅが14年間も停止する原因となったナトリウム漏れ事故は、発電開始からわずか3カ月後のことだった。 冷却剤として使われるナトリウムは酸化しやすく、空気や水に触れると爆発・炎上する 。運転再開前にもナトリウム漏えい検出器が故障し、関係者を慌てさせたが、このやっかいで危険極まりない冷却剤を完全に制御する技術が確立できるかどうかは、まだ分からない。だからこそ、もんじゅは、安全性を最優先すべきであり、事故の再発防止によほどの覚悟を持って取り組まねばならないだろう。福井と県境を接する石川県にとっても、もんじゅの安全性は重大な関心事である。科学的な見地から高速増殖炉の将来性を冷徹に見極めていく視点が欠かせない。 一連の交渉では、北陸新幹線の延伸が「陰の主役」になった。延伸の確約を国に強く迫 った西川一誠知事はじめ、福井県関係者の心境は痛いほど分かる。西川知事は川端達夫文部科学相、直嶋正行経済産業相との3者協議の席上、「特に新幹線などについて、夏の参院選までにぜひ決定を願えればありがたく思う」と述べ、川端文科相は「地域振興に関して関係大臣とも話し合っている」と応じた。 福井延伸は私たちにとっても大きな希望であり、政府の決断に期待したい。
◎「桟橋案」提示 打開の道筋描けるのか
これなら現行案にも近く、米国の理解が得られやすいうえ、沖縄にも一定の配慮を示せ
るという腹づもりなのか。普天間飛行場移設問題で、政府は現行案を修正する「くい打ち桟橋方式案」を米側に示し、この案を軸に最終調整を図る方針を固めた。さらに鹿児島県徳之島への移転案についても、海兵隊1千人規模を移す具体像が明らか になった。政府案は絞られてきたように見えるが、「5月末決着」まで1カ月に迫り、追い立てられるようにたどり着いた苦肉の策にも思える。 たとえ米側が歩み寄ったとしても、政府への不信や不満を募らせる沖縄県民や徳之島住 民をどのように説得するのか。打開の道筋はまったく見えない。鳩山由紀夫首相が来月4日に沖縄を訪れるなら、「県外移転」に過大な期待を抱かせた自らの非を率直に認め、それこそ職を賭す覚悟で地元に説明を尽くすしかない。5月末決着が無理なら、その理由も丁寧に示す必要がある。 「桟橋案」はキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市辺野古)を埋め立てる現行計画を修正 し、くい打ち桟橋方式を軸に代替施設を建設する。2本のV字滑走路を1本にし、沖合に移動させる構想が有力である。現行案の策定前にも日米間で検討された経緯がある。 鳩山首相は全面埋め立てによる現行案を「自然への冒涜」と、これ以上ない厳しい言葉 で否定した。「桟橋案」は現行案より環境の影響は少なく、住宅地の騒音被害も軽減される。米側も修正案には柔軟に応じる姿勢を示している。この案が浮上したのは、そんな理由からだろう。だが、連立を組む社民党や沖縄側は早くも反発を強めている。 一方、鳩山首相は徳之島を地盤にしていた徳田虎雄元衆院議員と都内で会談し、ヘリ部 隊を最大1千人規模で移すか、訓練を一部移転する案を示して協力を求めたが、徳田氏は拒否したという。有力者の地ならしに期待したのだろうが、地元の理解を得るのは一段と困難になったのではないか。そうした手順一つとっても、首相の調整能力には不安がつきまとう。
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