【コラム】小説『1Q84』と日本の極右(下)

 石原は今月17日、「日韓併合は韓国の選択」という妄言を振りまいた。作家として個人的に発言したのであれば無視できる。ドイツの作家の中からも、「わたしたちが被疑者だが、アウシュビッツでわたしたちをおとなしくさせようとするな」と声が上がることもある。

 しかし、ドイツ政府が周辺国に謝罪している状態で作家の個人的発言が出るのとは異なり、日本政府はまだ国家レベルで過去の歴史を清算する責務を果たしていない。その上石原は、日本の極右派新党「たちあがれ日本」の支持者だ。「このまま行けば日本は滅びる」と称し、平和憲法の改正などを主張する政党だ。小説『1Q84』のリトル・ピープルの亡霊が現実に登場し、古い国家主義を叫んでいる。

 日本近代文学の父として挙げられる夏目漱石は、1914年、日本の軍国主義者が勢いを得たとき、「わたしの個人主義」というテーマで講演を行った。その一部を、21世紀の日本の「リトル・ピープル」アジテーターに想起させたい。「日本が今滅んだり、滅亡の懸念があるという非常事態ではない以上、それほど“国家、国家”と騒いで回る必要はないのです。それは、火事が起きる前に消防服を着て、心配しながら市内を走り回るようなものです」

 夏目漱石は、国家主義の狂風に立ち向かう良識ある個人主義が、より大きな次元で日本の助けとなる、と力説した。20世紀初め、夏目が日本の「リトル・ピープル」ブームにのみ込まれず、近代的個人の声を上げたことが、今日の小説『1Q84』につながっているわけだ。

 『1Q84』第3巻が出版された日、東京では韓国の歌手Rain(ピ)のコンサートが盛大に行われた。両国の民間文化交流は、好みを同じくする個人の出会いだ。韓国は、「小さな国民」の日本ではなく、他者を受け入れ自分を省察する「大きな個人」の日本を隣人としたい。

朴海鉉(パク・へヒョン)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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