「はい」「いいえ」で答えてはならない質問
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【まえおき】
以下に掲載するのは、5年前の秋に、ある読書会の会報に掲載した文章です。
なぜそんな前の文章をいまさら、というと。
それを読んでいて、急に思い出したからです。
【以下、本文】
「はい」「いいえ」で答えてはならない質問 Ａさん 先日は私のつたない話につきあっていただいた上、朝鮮の子どもたちのためにカンパを集めていただき、ありがとうございました。皆様のご好意は粉ミルクに換えて、万景峰（マンギョンボン）９２号に載せて平壌（ピョンヤン）と元山（ウォンサン）の孤児院に届けさせていただきました。 さて、遅ればせながら、お手紙をさしあげたのは、先日Ａさんが電話をかけてこられた時の対話に、もう少し補足すべき点があることに気づいたからです。 Ａさんは私にこのように尋ねられました。 「米津さんは北朝鮮を支持しているのですか」 そのご質問に対して、私はすぐさま「いいえ」と答え、おおむね次のようなことをお話ししました。 「朝鮮の体制にも、当然問題はあると思う。だが、どのような国をつくるかは、そこに暮らす人々が決めるしかない。日本に住む私たちは、朝鮮の人々が平和に国づくりを進めていける条件を作る努力をすべきだ。軍事力についても、日本では誇張されて報道されている。実際には自分から戦争を仕掛ける力はない。将来の国づくりの主役である子どもたちの命を、いま救わなければならない」 その答え自体は、私が日頃思っていることをそのまま述べただけで、特に訂正することもないのですが、後から考えると、不十分な点があるのでは、と気になり始めました。そこで、あらためてお手紙の形で補足することにしました。 一つは、「北朝鮮を支持しているのか」という質問自体が持っている意味についてです。 あの日の集まりで、私は日朝首脳会談後の日本の政府やマスコミの対応を批判して、概ね次のように述べましたね。 「日本は百パーセント被害者であるという前提で、朝鮮を責め立てるような姿勢からは、拉致問題も解決することはない。『人の命を何と思っているのか』という声もあるが、そもそも日本は一度でも朝鮮人の命を大切に扱ったことがあるのだろうか」 もし私が朝鮮以外のどこかの国―例えば中国やアメリカ―についてお話をし、両国の関係において、日本側の対応を批判し、相手側にもそれなりの言い分がある、という主張をしたとしましょう。その時、「米津さんは中国（アメリカ）を支持しているのですか」という質問が、果たしてありうるのでしょうか。 どの国にも政府があり、民衆がいます。どの体制でも、政府と民衆の考えが完全に一致することはありえません。また、政府の中でも強硬派もいれば穏健派もいます。さらに政府の政策にも、正しい政策もあれば間違った政策もあります。 とすれば、ある国をまるごと「支持するのか、どうか」という質問は、本来はナンセンスなのではないでしょうか。 ところが、「あなたは北朝鮮を支持するのか」という質問は、いまの日本ではしばしばありうる質問なのです。 つまりＡさんのご質問は、朝鮮民主主義人民共和国という実在の国家体制を支持するかどうかを問うものというより、「あなたは日本の敵なのか、味方なのか」という意味に近いのではないか、と私は電話を切った後で思いました。日本で流布されている「北朝鮮」のイメージは、部分的な事実を含んでいるにせよ、非常に断片的であり、相当に一方的なものだからです。つまり、日本の「絶対善」の立場を裏付けするための、日本にとってあらまほしき「北朝鮮像」なのです。そのイメージの作られ方を問題にすることなく、「北朝鮮を支持するのか」と問うことは、その日本で作られたイメージを受容するかどうか、を問うことと同じだと思えるのです。 一方で、私の「いいえ」という簡単な回答も、問題をはらんでいるように思います。 それは、日本に暮らしている多くの在日朝鮮人、とりわけ共和国を祖国と見なしている人たちのことに、思い至らなかったからです。 私には何人かの在日朝鮮人の友人がいます。その中には朝鮮総連の組織員として活動し、共和国を祖国と考えている人もいます。その人たちは、「あなたは北朝鮮を支持するのか」という質問が投げかけられたとき、何と答えればいいのでしょうか。 様々な問題を抱えていることに心を痛めながらも、それでも自分の祖先が日本から取り戻し、親兄弟たちが汗水流して作った国なのだ、そんなふうに思っている人が多いのではないか、と私は思います。彼らには、多くの日本人のように、娯楽の種としてワイドショーや雑誌の北朝鮮情報を見たり読んだりすることは、絶対にできないでしょう。彼らはわざわざ朝鮮の体制批判をしないかも知れない。でも、自分たちの係累が血の涙を流しながら建設した「祖国」のありようを心配しない人が、どこにいるでしょうか。 そういう人たちにとって、「北朝鮮を支持するのか」という質問に、簡単に答えることはできないのではないでしょうか。私もそういう友人たちの気持ちを思えば、「北朝鮮を支持しますか」という質問に対して、すぐさま「いいえ」と答えることは、やはり間違いだったと思うのです。 「支持しているかどうか」という二者択一の罠にはまらないこと、そしてその問い自体の持つ問題性を、日本のありようと結びつけて、深く考えること、それが私のとるべき道だったように思います。 もう夜も更けました。外は秋の雨が降っています。朝鮮も今年の秋は雨が多いということです。また農作物に被害が出るのでは、と心配です。Ａさん。ぜひまた、ゆっくりお話しする機会があれば、と思います。
※写真はウォンサン港にて。マンギョンボン92号で祖国訪問した
在日朝鮮人たちを迎える親戚の人々。（2004年10月8日） |
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この記事、いろいろ考えさせられました。
安易に「はい」「いいえ」で答えてはならない。
日常生活でも、度々直面することが・・・
うまく表現できませんが、腹にずしんと落ちました。
2008/12/20(土) 午後 5:38 [ buzzsari ]
buzzsariさん、コメントありがとうございます。
自分で言うのもなんですが、私もこの文章を久しぶりに引っ張り出して読み返してみて、改めていろいろ思うところがありました。
映画『ＪＳＡ』でイ・ヨンエ演じたスイスの女性将校の父親は、元朝鮮人民軍将校で南側の捕虜となり、停戦後は南北どちらも選ばず第三国に渡ったという設定でした（事実、そういう人たちが数十人いました）。
第二次大戦でも、米国に忠誠を誓わず、日本への送還も拒んで、収容所に入れられた日系人たちがいました。
そうした境界線上で生きている人たちのことに、もっと思いを馳せていけたら、と考えています。
2008/12/21(日) 午前 1:07
単純に答えられる問題では無いですね。よくアンケートでも「好きな国」、「嫌いな国」と単純化して答えさせますね。自分がほとんど知らない国に関してはマスコミが誘導するイメージで答えますので、本当の国民の声にはならないですね。
2008/12/21(日) 午前 9:59
itohさん、まったくそうですね。
その国のことを知れば知るほど、好きとか嫌いとか、言えなくなってきます。
気の合う友人もいれば、気に食わん奴もいるし、口に合う料理もあれば、どうにも箸の進まない食べ物もありますからね。
それらが一色に塗りつぶされて、生きている人間の顔が見えなくなると、制裁や戦争への抵抗感も薄れるのかも知れません。
2008/12/21(日) 午後 1:10
鍵コメさん、ありがとうございます。
おっしゃるとおりだと思います。
2008/12/21(日) 午後 3:40
難しいお話なので、中々簡単にコメント出来ないのですが、私もお仕事で朝鮮学校の生徒さんの修学旅行などで、触れ合う事もありますが、とても良い子供達に感心しました。何処の国とかお金持ちとか身分とか生れてくる時は、選べないんですよね。 詳しい事は、よくわかりませんが、子供達が、飢える事無く平和な国で勉強したり遊んだり出来る環境だったら良いなと思いますm(__)m
2008/12/30(火) 午前 9:41 [ ｿｿﾉﾝ ]
ソソノンさん、お仕事で朝鮮学校の子どもたちとも付き合いがあるんですね。
おっしゃる通り、朝鮮学校はとても素直で礼儀正しい子たちが多いと思います。
映画「ウリハッキョ」も、もし機会があればぜひ見てあげて下さいね。
2008/12/30(火) 午前 11:24
新年おめでとうございます。
素敵な記事を読ませて頂き、心を洗われるようです。
私の新年の目標は、
物事の見方、人との接し方を見直すために
深い見識や、広い視野を持てるよう
勉強していくことです。
その目標にぴったりの見解で、勉強になります。
思っていても、言葉や文章で上手く伝えるのって簡単ではないです。
在日朝鮮人の私たちの気持ちを思い図っての考えに
うならされます。
2009/1/8(木) 午後 6:26 [ ☆コッスレ☆ ]
ニョメン西東京さん、感想をありがとうございます。
在日朝鮮人が安心して暮らせるような社会にならない限り、この国は日本人にとっても、どんどん息苦しい場所になっていくのではないかと思っています。
2009/1/9(金) 午後 0:59
tnc*n9*6さん、何か憤っていらっしゃることだけはわかるのですが、全体として「誰に、何を」主張しようとしているのか、論旨が不明です。
他人のブログにきて、何のあいさつもなく、いきなり感情を一方的にぶつける行為がやっていいことなのか、やってはいけないことなのか、いちど「自己を省み」られてはいかがでしょうか。
もし主張されたいことがおありなら、ご自分のブログでどうぞ。次回からは削除しますので、あしからず。
2009/1/23(金) 午後 10:36
tnc*n9*6さん
人間同士のコミュニケーションでは、手段が何であれ、最低限守るべきことがあると思います。
> 日本人にお教えいただければ幸いです
私も日本人なのですけど……。私の意見をお聞きになりたいのなら、呉西湖さんのところに付けられたあなたのコメント「馬鹿でないのか?」がどういうことを言おうとしているのか、まずご説明いただけますか？
このような非常識なコメントを付けておきながら、誰とどんな対話をされるおつもりなのでしょうか？
2009/1/24(土) 午後 5:44
> 貴方が日本人であって、しかも高名な翻訳家であり
> そのような貴方に「馬鹿でないのか?」というコメントは、確かに非常識なコメントでした。
tnc*n9*6さん、まだ何が問題か、おわかりにならないようですね。
私が何者かなど、関係ありませんよ。
もし私が無名の朝鮮人なら、この「馬鹿ではないのか？」というコメントは非常識でなかったということですか？
相手が日本人か朝鮮人か、有名か無名かによって態度を変えるような人。
見も知らぬ他人に対して、いきなり「馬鹿ではないのか？」などと罵倒する人。
そんな人相手に、私はお話をする気になれないのですけど。
2009/1/25(日) 午前 8:56
tnc*n9*6さん
いきなり「馬鹿ではないのか？」というコメントを付けられれば、私でなくても怒って当然だと思いますよ。
私のことを「『触りたくない・係わりたくない』人種」だとお思いなら、わざわざコメントする必要もないでしょう。
では。
2009/1/25(日) 午後 11:28
おことわり
2009/1/23(金)午後10:36〜2009/1/25(日)午後11:28までの私の４つのコメントは、tnc*n9*6さんのコメントに対する応答です。
tnc*n9*6さんは自らご自分のコメントを削除されましたが、参考までに私のコメントはそのまま残しておくことにします。
2009/1/30(金) 午前 0:13
米津さん、こんにちは・・! 米津さんや皆さんは、こういう記事はどういう風に見ているのですか?
「北朝鮮の教育こそ、真実の教育だ」というような趣旨の発言があったと思いますが、その北朝鮮の真実の教育がこういう暴力を生み出してはいませんか?
●北朝鮮、対南政策責任者を処刑か
【産経新聞】5月19日8時0分配信
韓国の聯合ニュースは１８日、北朝鮮の朝鮮労働党統一戦線部の崔承哲副部長が、対南政策に失敗した責任を取り、昨年処刑されたとみられると報じた。
聯合ニュースは、対北朝鮮消息筋の話として「表面的な（処刑の）理由は南北経済協力事業をめぐる個人的な汚職だが、実際には韓国の新政権（李明博政権）の対北政策に対する誤った判断と、韓国の太陽政策が北朝鮮社会に及ぼした影響などに対する責任を問われた」と伝えた。
崔副部長は１９５６年生まれ。金日成総合大学卒業。南北閣僚級会談をはじめ、さまざまなレベルの南北会談を統括していた実力者で、金正日総書記の信任も厚く、直接、対南事業を報告していた。（ソウル 水沼啓子)
2009/5/19(火) 午後 9:03 [ tnc*n9*6 ]
tnc*n9*6さん
> 「北朝鮮の教育こそ、真実の教育だ」というような趣旨の発言があったと思いますが
誤読されているのか、何か根本的に思い違いをされているのではないでしょうか。
日本の朝鮮学校についてこちらの記事にコメントしたことはありますが……。
http://blogs.yahoo.co.jp/jap41234/45799076.html
2009/5/20(水) 午後 0:38
ああ、そうです! これですね。
日本で「真の教育」を実践しているのは朝鮮学校だけだと思います。
2008/11/30(日) 午後 8:41
それで米津さん
�‘�本で「真の教育」を実践しているのは朝鮮学校だけですか?
(どういう点で、そういうことを言うのですか?)
日本の朝鮮学校と日本の学校とでは、どう違っているのですか?
�∨鳴�鮮本国の教育は、どうなっているのですか?
米津さんは、それをどう評価しているのですか?
2009/5/22(金) 午後 9:29 [ tnc*n9*6 ]
なんか、目からうろこな感じですm(__)m
ウリハッキョアイたちがお褒めいただくのは、
自分が褒められる１００倍嬉しいです！！！
2009/11/9(月) 午後 10:43