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マカフィー製ソフトでPC利用不能に

 セキュリティー対策大手・マカフィーのセキュリティー対策ソフトによって、パソコンが利用不能になるトラブルが起きた。同社のミスによるもので、ウィンドウズXP(SP3)で再起動を繰り返すなどの問題が発生している。(テクニカルライター・三上洋)

4月22日深夜の更新でPCクラッシュ

マカフィーの「マカフィー・インターネットセキュリティ」。ウィンドウズXPのSP3でパソコンが利用不能になるトラブルが発生した

 セキュリティー対策ソフトのミスによって、パソコンが使えなくなる事件が起きている。マカフィー(McAfee)の個人向けセキュリティー対策ソフト「マカフィー・インターネットセキュリティ」や、企業向けのセキュリティー対策ソフトによるものだ。日本時間の4月22日午前1時から3時ごろに配信されたパターンファイル(最新のウイルスを検知するための定義ファイル)を反映していると、一部のパソコンが利用不能になってしまう。

 対象となるのはウィンドウズXPのSP3で、何度も再起動を繰り返したり、ブルースクリーンとなってパソコンが使えなくなるなどの問題が起こる。原因はウィンドウズXPの重要ファイルを、間違って隔離・削除してしまうためだ。

 アメリカでは半導体大手のインテルなどで被害が確認されているほか、IT関連の大手メディアのCNETによれば、ミシガン大学のメディカルスクールで8000台のパソコンがクラッシュするなどの被害が出ているという。

 マカフィーは「世界中の弊社の顧客企業の0.5%未満と、若干の個人ユーザーに症状があらわれている。日本では深夜の時間帯だったこともあって、0.5%よりも少ないようだ」としている。ただし、ツイッターや掲示板などには日本での被害報告があり、「起動したら異常メッセージが出て強制終了させられた」「復旧するのに半日以上かかった」などの書き込みが見受けられた。

ウィンドウズの重要ファイルをウイルスと誤検知

マカフィーが発表した誤検知の報告。日本時間の午前1時から3時にかけて配信されたパターンファイルに問題があった

 原因はマカフィーのセキュリティー対策ソフトが、ウィンドウズの重要なプログラムである「svchost.exe」をウイルスと誤検知してしまうことにあった。「svchost.exe」はウィンドウズに常駐しているプログラムで、ネットワーク関連のサービスなどで利用されている。日本時間の22日深夜に配信されたパターンファイルでは、ミスにより「svchost.exe」をウイルスと検知してしまい、自動的に隔離したり削除してしまう。そのためウィンドウズの動作がおかしくなってしまった。

 この「svchost.exe」は、ウイルスの偽装によく利用されている。ウィンドウズに複数常駐しており、見分けがつきにくいためだ。マカフィーは単純ミスで、本来の「svchost.exe」をウイルスに分類してしまったようだ。

 ミスのあったパターンファイル(定義ファイル)は、マカフィー側の番号で「5958」と呼ばれるもの。22日午前5時には修復した「5959」が出されており、こちらを反映していればトラブルは起きない。

 もしトラブルが発生している場合は、以下の手順で復旧できる。方法がよくわからない場合は、ユーザーサポートへ電話するといいだろう。

1:マカフィー製品のバージョンを確認する
http://www.mcafee.com/japan/mcafee/support/faq/answer_p_spec.asp?wk=SP-00001
2:DATのバージョンが「5958」の場合には下記の方法で復旧する
http://www.mcafee.com/japan/mcafee/support/announcement20100422.asp

繰り返される対策ソフトでの深刻トラブル

トラブルが起きた場合の対処方法は、このページににまとめられている

 今回のようなトラブルは、マカフィーだけではなく他社でも起きている。例えばソースネクストの「ウイルスセキュリティ」でも、4月10日ごろ、一部のパソコンで、ドライバーをウイルスと誤検知して削除したため、パソコンが起動しなくなるトラブルが発生した。また、2005年にはトレンドマイクロの「ウイルスバスター」でも、パターンファイルの問題によって、動作が重くなったり起動できなくなったりするトラブルが起きている。

 セキュリティー対策ソフトでのトラブルが続発する背景には、ウイルスなどの不正ソフトの種類が増え、対策用のパターンファイル(定義ファイル)の更新頻度が高くなったことがある。毎日、大量の新種ウイルス、不正ソフトが出回るため、セキュリティー対策ソフトメーカーでは対策ファイルを次々に出さなければならない。そのためチェックが甘くなったり単純ミスが発生したりして、パソコンのトラブルにつながっている。

 やむを得ない部分はあるものの、パソコンが起動しないトラブルを起こすのは大きな問題だ。今やセキュリティー対策ソフトはパソコンに絶対に必要であり、OS(基本ソフト)の次に重要なものになった。セキュリティー対策ソフトメーカーの責任は重大であり、今後はトラブルを起こさない厳重なチェック体制が求められる。

2010年4月23日  読売新聞)
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