平成21年1月10日
時効撤廃・停止を求める遺族会「宙(そら)の会」発起人から ~殺人事件被害者ご遺族の皆様へ~
なぜ!私たち遺族はこのように苦しまなければならないのでしょうか。
殺された本人のことを思うと、無念の極みだろうと胸が締めつけられる日々です。この思いは15年・25年の歳月で薄れることなど全くありません。しかし、刑事訴訟法には時効制度が存在し、15年・25年の月日が流れると犯人は何らの刑罰を受けることなく、堂々と!社会の中で生きてゆけるのです。命の尊さについて、被害者と犯人を比較した場合、あまりにも矛盾かつ残酷です。
殺された者は再び生きて返ることはありません。しかし、この世に正義が存在するなら、犯人に対し被害者の生命の尊厳に替りうる鉄槌(てっつい)を与えて当然と考えます。そのようにならなければいつまでも殺人という犯罪は無くならないと思います。
私たちの犯人への憤りは増すことがあっても薄れることはありません。他方、このような殺人事件が一件でも少なくならないかという強い願いがあります。その根底には、殺害された者そして遺族となった私たちと、同じような無念の生涯を味わっていただきたくないという思いがあります。そのためには、時効制度を撤廃し、人を殺害したら死刑に至るという条理が保たれてこそ叶(かな)うものと考えております。
加えて、現在、未解決殺人事件の中で、DNA等で犯人を特定する資料が残っている事件については、現在の法律をよくよく精査していただいて、起訴に持ち込んでいただきたい。そして、時効の停止を図っていただきたいと強く希望いたします。
日進月歩で科学が発達し、微物から犯人を特定できる時代になりました。さらに科学が発達する期待の中には、被害者の犯人を見据えた最後の網膜映像が抽出できないか、或(ある)いは、犬の嗅覚以上の科学ロボット犬が開発されないか、さらには、現場の温度や湿度等から定量性のある何らかのデータを基に、その場の犯人映像が復元できないかなどと、一般の人には笑い話でも私たちは真剣な思いで想像してしまいます。微物の鑑識技術の向上や、DNA分野における民族性・地域性が年々明らかになってゆく報道に接して、さらなる科学捜査の発展に大きな期待を抱いております。
このように発展する科学捜査を考える時、DNAでは犯人を4兆7千億分の1の確率で特定できるのに、時効によってそのデータがゼロ評価になることについては全く理解できないところです。犯人がどこの誰か判らなくても、DNA等で犯人を特定できる資料に人格権を与えて、その人格権を有する者を起訴して、時効を停止する措置は、差し迫る時効を前にした遺族にとっては喫緊の問題です。
一方、すでに時効になった事件の遺族も、今なおやり場のない消えることのない憤りを持ち続けております。その無念の思いを遺族の叫びとして、時効撤廃の運動に参加し、法律を改正することによって、被害者の“死”は無駄では無かったと墓前に報告出来ればと考えます。
以上のような遺族のそれぞれの思いを一つの力に結集して、これまで漫然と時効制度を事実上放置してきた国政担当者及び法務当局に対し、“遺族だからこそ”殺害された本人の代弁者として“雄叫び”を上げようではありませんか(殺害された家族の無念の慟哭=どうこく=を声枯れるまで訴え続けたい)。そして、殺人事件に対する「時効撤廃」、さらに、これまでの事件に対する「停止措置」を求めて、遺族の会を立ち上げたいと思います。
時はこうしていても刻一刻と過ぎてゆきます。時効問題について、昨年9月9日小林賢二、12月13日宮沢良行、12月27日入江杏が訴えたところ、すでに多くの方々から励ましのメールや手紙を頂いております。法務省も少しずつ動き始めようとしています。ご遺族の賛同を得て2月下旬には「第一回遺族会」を、そして5月上旬には賛同者を含めた「全国大会」へ進みたいと考えております。
ご遺族の皆様の、ご理解とご協力を賜り遺族会参加をここにお願い申し上げる次第です。
時効撤廃・停止を求める遺族会「宙(そら)の会」発起人
2009年1月10日