FTの一面は欧州委員会が格付け会社と今回の相場動乱の関係についての調査に入るという記事でした。だいぶ前のエントリーで一般に言われる「格付け機関」という誤訳(Rating Agencyというのは格付け代理店とでも訳すべきものだと思う)のせいで必要以上の信用力がMoody’sやS&Pに与えられていると書きました。BIS基準や金融庁の検査(すなわち日本の金融機関の自己査定など)においても、一定以上の格付けというのは無条件で信用力を与えられています。 ところが今回の問題のきっかけは、トリプルB以上の投資適格を与えた根拠の数字を見誤っていたことと、仕組みの相互作用を理解せずに安易にフィー欲しさに格付けを付与していたのではないかということです。もちろんその格付けを盲信して何の検討もしないで買った投資家の責任は免れませんが。所詮格付けというのはその程度のものだと考えるべきなのです。 そしてなによりも、ビジネスとして格付けを付与している以上、それの前提条件が変化した場合には速やかに正しく変更の可能性を、それを信じたはずの投資家に予告する必要がある、というのが今回の欧州委員会のクレームです。これまでもアジア危機のときをはじめ同じようなことが格付け会社に対する批判としてなされてきたにもかかわらず、またか、ということです。 個人的な意見ですが、この程度の能力しかない格付け会社に公的な裏づけ(つまりBIS基準への採用とか検査マニュアルでのお墨付きとか)を与えることが問題であり、これがあるから投資家が盲目的に購入してしまうのではないでしょうか。このシステムは投資家、監督当局双方にとって手抜きをするための格好の言い訳となり、なおかつ、主力格付け会社が米国にある事を考えると、米国のヘゲモニー維持のきわめて強力なツールとなります。格付け会社という存在は便利ですが、特にストラクチャー物については投資家の安易な判断を助長し、マーケットのゆがみを加速する危険な存在となりかねないのです。 |
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情報が増え頭の中でまとまらないうちに次の情報がきて、、、実はしっているふり情報はおおいが、本当の意味での守備範囲はあまりにも小さくなっている事に今回の事件できずいた気がしました。PS替え歌あちこちで話題になってましたね。楽しませていただきました。 |
うさこ 2007/08/18 00:16 |
うさこさん、どうもです。連鎖している経済がひとつのきっかけから崩壊していく様子を見ているような感じですね。あちこちに仕掛けてある爆弾がどんどん誘爆している感じでしょうか。 |
厭債害債 2007/08/18 06:40 |
格付会社の売上が証券化商品の格付にかなり依存していたということが、今回のサブプライム騒動の背景(リスクを反映していない甘い格付をしていた)にあったと思います(同様な問題は、会計監査にもありますね)。このように、投資家との利益相反の危険をはらんだ格付会社の行動を如何に監視していくかということを監督当局も考えていく必要があると思います。 |
SOS 2007/08/20 00:45 |
SOSさんコメントありがとうございます。ご指摘のとおりかと思います。実を言うとさらにその背景として、増収増益のプレッシャーを受けて証券化商品に依存せざるをえない一民間企業としての格付け会社の立場が浮かび上がります。いろんな意味で利益相反を内包するのです。その点からも存在そのものの位置づけを再検討する時期に来ていると考えます。 |
厭債害債 2007/08/20 06:48 |
サブプライム、CDOが最先端の革新技術か、格付は万能か、皆さんで議論していただけるよう、基本情報を記してみました。現実を認識しないで、議論した答えに意味がないので、そこからがスタートでしょう。 |
dataminer 2007/09/03 16:10 |
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