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【2009回顧】仙台経済圏「光と影」 オフィスビル“開店休業”状態

2009.12.30 02:20

 

自動車産業の集積…地域活性化なるか

 仙台市を中心とする経済圏は、首都圏と同様、平成19年以降に広がった世界的な金融不安、景気後退の影響をまともに受けてきた。津波のように押し寄せた不動産投資資金がほぼ完全に撤退し、市街地には空室やテナント募集の新ビルがあふれている。一方で、周辺地域には来年以降、自動車産業の進出など明るい話題もある。東北最大の経済圏は、光と影が交錯する1年だった。(高山豊司)

 ■新築空室70%超も

 「見たこともない空室率だ」−

 仙台市内のある不動産鑑定士はそうため息を漏らす。民間調査会社が発表した仙台市街地のオフィスビルの空室率は、6月以降上昇を続け、11月には平均で18%となった。新築ビルに限れば7月に70%を突破、9月には77%超を記録、“開店休業”状態のビルも少なくない。

 数年前まで、仙台市を中心に外資系の不動産投資ファンドなどが相次いで進出し、土地建物の売買が過熱、地価は急速に上昇した。路線価ベースで東北の最高価格となっている「仙台市青葉区中央1丁目の青葉通り沿い」は、平成20年度の路線価では前年度比約40%値上がりし、全国1位の上昇率を記録した。

 その後の不況の影響で、不動産市場は停滞。平成21年度の路線価で、「青葉通り沿い」の価格は前年比9・6%下落、下落率では全国4位とお寒い状態に陥った。“不動産バブル”の流れに乗って着工されたオフィスビルが今、相次いでオープンしている。一方、不況で仙台から撤退する企業も多く、続々と供給される真新しいオフィスとの間にアンバランスが生じているわけだ。

 ビル空室率の調査を行った三鬼商事では「オフィス縮小のために、古い小さなビルに移転する企業も多い。一等地の大型ビルもテナント集めに苦戦している。来年以降の景気拡大に期待するほかない」とあきらめ顔だ。

 ■生産や物流拠点続々

 足もとの景気低迷とは裏腹に、宮城県では仙台市に隣接する大衡村で、トヨタ自動車系のセントラル自動車の本社工場が移転する計画が進んでいる。来年には稼働する予定で、それと前後して関連企業が相次いで周辺エリアに生産や物流拠点を整備しつつある。村井嘉浩知事も、自動車産業の集積で「家族も含めれば数万人規模で人口が増え、地域経済の活性化が期待できる」と意気込む。

 「ここ1年辛抱すれば、東北のどこよりも明るい未来が訪れるはず」(県内地銀幹部)。そうした動きを先取りしてか、製造業以外で新たに仙台に進出する動きも出始めている。仙台市青葉区で建設中の超高層ビル「仙台トラストタワー」には、世界的な高級ホテルチェーン「ウェスティンホテル」が来年8月、予定通り開業する見込みだ。

 また、県境を超えた経営統合で注目を集めた荘内銀行(山形県鶴岡市)と北都銀行(秋田県秋田市)は今年8月、共同で設立する金融持ち株会社の本社を仙台市青葉区に置くことを決めた。仙台でどのような活動を目指すのか、現時点では明らかではないが、預金量では東北6位の地銀の進出を、七十七銀行を中心とする地元金融界がどう迎え撃つのか注目される。

 仙台圏は、名古屋圏のような自動車の企業城下町を目指すのか。一方で、輸出中心の自動車産業への依存を懸念する声もある。為替など、世界経済の影響を地域がまともに受けるようになるためだ。実際、進出する企業のある経営幹部は「採算ラインは1ドル=90円。それを超える円高が続けば、生産拠点の見直しも必要になる」と指摘する。今、為替相場はまさにその危険水域にある。

 県内の中小企業からは「トヨタグループの厳しい品質検査、製造管理などに対応できるとは思えない。今のまま、細々と営業できれば」と、後ろ向きな発言も目立つという。自動車産業の進出を、長期的な地域経済の活性化につなげられるかどうか、仙台圏はまだ課題山積の状態にあるといえそうだ。

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