牧太郎の大きな声では言えないが…

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牧太郎の大きな声では言えないが…:珍党だだっ子日本

 4月21日の党首討論。自民党の谷垣禎一総裁から「ワシントン・ポストに『最大の敗北者は、あわれで、ますます愚かな鳩山首相だった』とまで酷評された」と指摘された鳩山由紀夫首相。自信なさげに「確かにワシントン・ポストのいわれるように私は愚かな総理かもしれません」と切り出した。

 一瞬、与党席はシーン。でも、これは下手くそな口説き文句。「お嬢様を好きになるなんて……僕は愚かだ」と嘆いてみせる手口だ。

 「昨年の12月において、もし、『エイヤ』と、辺野古という場所に新たな普天間の移設先を決めていれば、どんなに楽であったか、計り知れません」と鳩山さん。「あの時、エイヤとキミを忘れていれば、どんなに楽だったか……」と同じである。

 恋のベテランは「すり替え」をする。鳩山さんの場合は「愚かだったから、愚直だったから」というくだり。ここですり替えた。その後は「愚か」と言わずグチョク、グチョク。記者会見でも7回も「愚直」と連発した。

 麻生太郎前首相は度重なる“誤読”で政権を棒に振ったが、鳩山流は<愚か=愚直>という図式を押し通す知能犯? ポスト紙が指摘したloopy(愚か)とは「考えが足りないさま」。「愚直」は「正直すぎて気のきかないこと」。意味がまるで違うのに……実にずるい。

 でも、恋い焦がれる男は、お嬢様に「バカ正直な僕。キミ一筋」と口説くから、まあ、許容範囲と笑っていた。

 しかし、その後の高速新料金騒動にはあぜんとした。「高速道路を建設しろ!」と言っていた民主党の小沢一郎幹事長。「それなら」と高速割引料金を削って建設費に回した前原誠司国土交通相。「一部値上げ」で合意していたと思っていたらさにあらず。小沢さんは「これじゃ値上げじゃないか!」と一喝。前原さんは怒り心頭で「見直しは絶対にしない」。その間で右往左往する鳩山さん。

 それにしても、小沢さんも、前原さんも、モノを買ってもらえないと、その場で泣いたり暴れ出したりする「だだっ子」と同じじゃないか。そのさばきもできない鳩山さんは、国民を“口説いて”も、決して責任を取らない「だだっ子結婚詐欺師」じゃないのか?

 「意見が通らないから」という理由の新党ラッシュ。右を見ても左を見ても「だだっ子」ばかり。みんなまとめて「珍党だだっ子日本」でも結成したら……と言いたい気分だ。(専門編集委員)

毎日新聞 2010年4月27日 東京夕刊

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