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希望みつけた:基町小・世界なかよし教室/上 学び合い真の国際人に /広島

 ◇未来を照らす日本語学習

 児童133人のうち約4割が中国など外国にルーツを持つ広島市立基町小(中区)。ここには日本語学習に重点を置いた「世界なかよし教室」があり、きめ細かい指導が行われている。人間らしく生きるうえで最も大切な「言語の獲得」に力を注ぐ教育現場を見つめた。【樋口岳大】

 「ごはん、みそしる、はんばーぐ……」。絵を指でなぞり、口の形に気を配りながら、一文字一文字発音していく。1カ月前に中国東北部・黒龍江省から来たばかりの6年生、藤間優美さん。中国人の楊潔先生(40)がマンツーマンで教える。

 校区はかつて、被爆者らがバラックを建てて住み「原爆スラム」とも呼ばれた。1968~78年の再開発事業で市営、県営住宅が建設された。現在は約3000世帯が居住。高齢化が進み、帰国した中国残留孤児やその子孫、中国人らが増加している。

 そうした中には、日本語学習の挫折から、授業についていけず、進路につまずく子もいる。中国東北部の農村から来た子、親だけが先に来日し祖父母に育てられた子、両親が離婚している子……。背景はさまざまだ。最悪の場合、非行につながることもあった。

 同校に03年に赴任した佛圓弘修(ぶつえんひろのぶ)校長(54)は「かつては、言葉が通じにくい子どもがいじめを受けたり、『中国へ帰れ』とののしられ泣いて訴えることもあった」と明かす。

 こうした状況の中、96年、専任教師による日本語教室が設置され、04年に「世界なかよし教室」と名付けた。現在、教諭3人と非常勤講師(週30時間勤務)2人が専任で日本語指導にあたる。広島市内の公立小中では最も手厚く、全国的に見ても充実した態勢だ。

 基本は「取り出し指導」と「入り込み指導」。「取り出し」では、対象児童を別の教室に呼び、個々の理解度に合わせて日本語や教科を教える。マンツーマンかごく少人数での授業は、多い子で週12時間にもなる。「入り込み」は、専任教師が通常授業を受ける子どもに寄り添い、きちんと理解できているか、自己表現ができているかに気を配る。子どもたちは、より深く学ぶための「思考言語」を身に付けていく。

 日本で生まれ育った児童も、外国から来た友人と接することで多くを学ぶ。「真の国際人になってほしい」。「世界なかよし教室」と命名したゆえんだ。

 柔らかい日の当たる教室。藤間さんが分からない言葉を聞くと、楊先生はにこやかに中国語で返す。「母国への誇りを大切にしながら、日本への定住にも希望を持たせたい」。佛圓校長は言葉に力を込めた。

毎日新聞 2010年4月27日 地方版

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