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普天間移設県民大会 「県内ノー」の声は重い '10/4/27

 沖縄の声が一つにまとまりつつある。米軍普天間飛行場(宜野湾市)を県外に移すよう求める県民大会がおととい、初めて超党派で開かれた。仲井真弘多知事をはじめ、県内の41市町村すべてから代表が参加した。主催者発表で約9万人も集まったという。

 飛行場の周辺や移設候補地に住む当事者にとどまらず、なぜ「県内移設ノー」の声がこれほど広がり、深まったのだろうか。

 大会で壇上に立った普天間の高校生は問いかけた。「フェンスで囲まれているのは基地なの? 私たちなの?」と。

 戦後、米国の軍政下に置かれた。1972年に本土復帰してからも約40年にわたって、日本にある米軍基地全体の75%を押し付けられ続けている。「明らかに不公平で、差別に近い」という仲井真知事の指摘に対し、返す言葉はないだろう。

 沖縄の人たちは15年前、米兵による少女暴行事件の時も県民集会の形で思いを示した。抗議の人波は8万5千人(主催者発表)に上り、「普天間」全面返還へと日米両政府を踏み切らせるきっかけとなった。

 その返還合意が実現されないまま、もう14年になる。飛行場の周りには小中高や大学、民家が立ち並び、昼夜の別なく墜落事故の危険や騒音にさらされている。

 ゼロベースから合意を見直し、最低でも県外に移設する―。鳩山由紀夫首相は、はっきりとそう約束したはずだ。期待するな、と言う方が無理だろう。

 「切り札」とみられていた普天間のヘリコプター部隊の鹿児島県・徳之島への移転案も、暗礁に乗り上げている。反対集会に全島民の半数以上が駆け付け、地元3町長からは話し合いさえ拒まれているからだ。

 5月末決着という公約の期限が迫ると、今度は米軍キャンプ・シュワブ沿岸部(名護市辺野古)を埋め立てる現行計画を下敷きにした修正案が浮上してくる始末だ。たらい回しの揚げ句、県内案に戻ることにでもなれば反発や怒りを買うのは間違いない。

 今回の大会決議では「現行案は新たな基地の県内移設にほかならない」と断じている。

 首相が自ら乗り出し、死に物狂いで事態の収拾に当たるしかない。「職を賭す覚悟」を口にしているのだから、退路は断ったはずである。

 首相は県民大会を「一つの民意」と受け止めているようだが、いまだ沖縄にも鹿児島にも足を踏み入れていない。これではとても民意と向き合ったとはいえまい。

 大会ではこんな訴えもあった。「基地問題は普天間だけでなく、沖縄県民だけでもなく、日本国民すべてが自分の問題として考えてほしい」

 ここに至ってもなお、政府は表向き「ゼロべース」「県民負担の軽減」を繰り返している。そんな政府はもとより、本土にいる私たちの覚悟をも問うていると受け取るべきだろう。




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