新聞報道によりますと、石原東京都知事は、永住外国人への地方参政権付与などに反対する集会で、親などが帰化した与党幹部が多いとした上で「ご先祖への義理立てか知らないが、日本の運命を左右する法律をまかり通そうとしている」と発言し「帰化された人や、お父さんお母さんが帰化された、そのお子さんという議員はいますか」と質問。「与党を形成しているいくつかの政党の党首とか、大幹部は多い」として、帰化人は形式的には日本人でも文化や習慣、伝統面で必ずしも日本人と同じとは言えないと言う趣旨の発言をされた由。
同じ日本国籍を有しながら、特定の人種やその先祖をを取り上げて、国家への忠誠を疑う石原都知事の手法は、日本人の血を持つと言う理由だけで日系人の土地や財産を没収し、強制収容所に送り込む事を正当化したルーズベルト米国大統領やウォーレン・カリフォルニア州知事の論理に共通した恐ろしい差別思想を感じます。

排日思想の影響を受けた1942年のロスアンジェルスタイムズ紙のある社説は、こんな主張をしています :
“日本生まれの両親を持ち、日本の伝統に育まれ、日本的な家庭環境で暮らした日系人は、偶々米国籍は持っているとは言え米国人として成長するのはごく稀で、殆どは実質的日本人として育って行く。従い、日系人を潜在的な敵国人として扱う事は、日本人と戦争関係にある現在、米国にとっては必要な手段である。”

ひょっとすると、博識な石原さんはこの記事を盗作されたのでしょうか?
石原発言に反発した福島社民党党首は「この発言は自分を指していると思われるが、私も私の両親も帰化した事はない。明らかな人種差別発言で、取り消しを求める」と抗議されたそうですが、石原発言は個人的な問題を超えた危険思想と言えましょう。

同知事は又、「小笠原村長選の当選票数は719票。村が抱える沖の鳥島はグアムと沖縄の中間にあり、その周辺で中国が潜水艦で調査をしている」と指摘。その上で、「日本人と違う意思を持つ外国人に(国益さえ)左右されかねない」と発言。

この発言に刺激されたのか、日本最西端に位置する沖縄余那国町議会や長崎県壱岐市議会、対馬市議会でも永住外国人の参政権賦与の法制化反対の意見書を採択するなど、「国境の島」からの相次ぐ反対決議には、参政権付与で国防上の危険が増すという危機感が醸成されたと聞きます。

与那国島は日本の国防の重要な場所に位置していながら、防衛の空白地同然で、町が自衛隊配置を求めていた経過があり、「参政権付与が現実となると、外国勢力の思惑が島内の選挙に持ち込まれる恐れがある」といった声が出る一方、壱岐市議会の採択文では「永住外国人に参政権を付与されたら、対馬を実質的に韓国領にされてしまうという悪夢が実現するのではないかと大きな懸念を持っている」とも報道されました。

参政権賦与の論議が益々過熱して、戦争前夜のヒステリー状態になる事を心から憂います。

真珠湾攻撃を受けた米国の反日ヒステリーは、日系人憎しに凝り固まり 1942年3月にはじゅうたん爆撃の考案者で、日系人の強制収用を指揮して、その過酷な取り扱いで悪名高い人種差別論者のデウイット将軍は、日系人はスパイの疑いがあるとして「敵国人の血を持つ人間(日系人)は、太平洋岸から160キロ以内に居住する事を禁じ、その地域から引越しの予定がある者はすべからく引越し先を登録する事を命ずる。」と言う軍令を発しました。この様な歴史は繰り返したくないものです。

私は、永住外国人に参政権を付与する事には反対で、小沢幹事長の昔のブログに有る、以下の様な意見には納得出来ません。:

“参政権が国家主権にかかわるものだという論理は正当であり「参政権が欲しければ帰化をすればいい」という考えは一番いい方法だと思うが永住外国人の大半を占める在日韓国・北朝鮮の人々は、日韓併合以来、敗戦までは大日本帝国の同じ臣民であった歴史的な経過があり、国籍を取得する要件が厳しく、永住外国人側も過去の併合の歴史やそれに伴う差別や偏見に対してわだかまりがある。 以上のような政治的側面、制度的側面双方から考え、一定の要件のもとに地方参政権を与えるべきで、その結果として帰化も促進され、永住外国人が本当によき日本国民として、共生への道が開かれることになる。”

小沢氏が「参政権が欲しければ帰化をすればいい」と言う考えが一番いいと信じているのあれば、帰化の障害になっている国籍取得要件の緩和に努力すべきであり、参政権を与える事が差別、偏見を無くすと言う主張は余りに政治的で、理屈に合わない珍論です。

私は寧ろ、参政権賦与反対の自民党都議が石原都知事に質問した「国会で(外国人地方参政権の)法制化をもてあそぶのは地方に失礼。地方自治体が議論すべきだ」と言う主張に理を認めます。

石原知事は影響力の強い人物だけに、粗雑な言葉使いで勢いをつけたり、他人や他人種の誹謗をする事を少し控え、国際的な論議に耐える理性的な論議をして欲しいものです

              ニューヨークにて        北村隆司