現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. サイエンス
  4. 記事

チンパンジーに弔う心? 母親、ミイラ化した子を背負う

2010年4月27日9時23分

印刷印刷用画面を開く

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真:死後17日、ミイラ化した子供を背負うジレ=京都大霊長類研究所提供死後17日、ミイラ化した子供を背負うジレ=京都大霊長類研究所提供

 チンパンジーの母親が死んだ子どもをミイラ化するまで背負い続ける例を、京都大学霊長類研究所の林美里助教、松沢哲郎教授らのチームが同じ群れで複数観察した。この群れの「文化」のようなもので、ヒトが死者をとむらう行動の起源ではないかとチームはみている。27日付米生物学誌に発表する。

 チームは、西アフリカ・ギニアで野生チンパンジーの群れの調査を30年以上続けてきた。ジレという名前のチンパンジーが1992年に病死した2歳半の子どもを27日間以上、2003年にも病死した1歳の子どもを68日間背負い続けた。ジレだけではなく、同じ群れの別の母親も死んだ2歳半の子どもを19日間背負った。

 3例とも死体はミイラ化したが、母親は生きている時と同じように毛繕いをしたり、体にたかるハエを追い払ったりして、子どもに愛情を示しているようだった。生きているときと背負い方が違い、「死んだことは理解している」とチームはみる。

 通常、チンパンジーの母親は生理的に妊娠可能な状態になると、成長した子どもを手放す。この母親は繁殖可能になっても、死んだ子を背負い続けた。群れの仲間も死んだ子どもから腐敗臭がしてもいやがらなかった。ほかの群れでは、死体は捨てられたり食べられたりして、観察されることはあまりないという。

 「92年に初めて見た時に報告しているが、3例も同じことがあった。若い母親は経験豊富なジレの行動をみて同じようにした。ヒトが死者をとむらう気持ちも進化の過程で生まれた。死んだ子供によりそうチンパンジーの行動に、その起源があるのではないか」と松沢教授は話している。(瀬川茂子)

PR情報

朝日新聞購読のご案内