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吉田、敗れて悔いなし…完全燃焼で涙の引退

 中村和裕(左)にパンチを繰り出す吉田秀彦=日本武道館
 中村和裕(左)にパンチを繰り出す吉田秀彦=日本武道館

 「吉田秀彦引退興行〜ASTRA〜」(25日、日本武道館)

 敗れて悔いなし‐。引退試合に臨んだバルセロナ五輪柔道男子78キロ級金メダリスト・吉田秀彦(40)=吉田道場=は、一番弟子の中村和裕(31)=吉田道場=との死闘の末、0‐3の判定で完敗。「本当に悔いはありません」と、すがすがしい表情でリングを後にした。今後は柔道界に復帰して指導者や選手として活動する意向で、今週、渡米してインターネット用のビデオ撮影やセミナーを行う。

  ◇  ◇

 最後まで戦う姿勢は捨てなかった。2回、吉田は右拳で右ほおを指して「打ってこい!!」とアピール。壮絶な殴り合いで傷ついていく、その顔には笑みが浮かんでいた。

 3回、吉田は「打ち合おう」と、柔道着の上を脱ぎ捨て最後の5分間に臨んだ。終盤、マウントポジションから腕ひしぎ十字固めに入られたが、堅いクラッチで守りきって終了のゴングを聞いた。0‐3の判定負け‐。両手をヒザについて判定を待つ姿が、すべてを出し切ったことを物語っていた。

 04年6月20日、マーク・ハント戦で左肩を負傷。骨頭軟骨はく脱で医師から引退を勧告された。それでもオファーを断らず戦い続けたが、09年1月4日、菊田早苗に敗れ「これで引退かもしれない」と、引退の2文字を口にした。

 昨年大みそか、北京五輪柔道100キロ超級金メダリスト・石井慧との大一番を引退試合と定めたが、試合がSRCからDynamite!!に移行。魔裟斗の引退試合に水を差すことを考慮して引退は年を越し、一番弟子・中村に後を託す引退試合となった。

 引退セレモニーでは、父・延行さんと母・みちゑさんから花束を贈られ、傷だらけの顔が涙でぐしゃぐしゃになった。最後のあいさつは「この8年間、総合をやってきて本当に悔いはありません。腹いっぱい、総合格闘技をやりました」‐。リングサイドで見守った柔道の先輩、五輪金メダリストの古賀稔彦氏の引退会見での言葉を引用したものだった。

 衝撃のデビューから2797日。この日、使った道着を丁寧にたたんで花道に置き、真っ白な柔道着に着替えた吉田は、深々と一礼して柔道界へと帰っていった。

(2010年4月27日)
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