「変わってる!?」と言われて 大人のアスペルガーを考える
(4) インタビュー 昭和大付属烏山病院 加藤進昌院長に聞く
孤立感防ぐ支援の充実を
社会で暮らす大人のアスペルガー症候群の人たちをめぐる問題を三回にわたって紹介してきた。まとめに代えて、成人の発達障害外来、デイケアに取り組む昭和大付属烏山病院(東京)の加藤進昌病院長に話を聞いた。(芦原千晶)
−どんな人が来院しますか。
二十〜四十代の男性が多いですね。その半数は失職しています。今は、インターネットの情報で自分の発達障害に気付く人が増え、中には、アスペルガー症候群の傾向を調べる「自閉症スペクトラム指数」(AQ)を自己採点してくる人もいます。引きこもりや家庭内暴力などの問題を起こして、家族が連れてくる場合もあります。
−診断の方法は。
本人や家族に、三歳ごろまでに他人との関係やコミュニケーションに問題がなかったか、反復的行動やこだわりなどのエピソードはあったか、などを聞きます。診断できる精神科医の数が絶対的に少ないのが問題です。AQも使いますが、単なる目安の一つです。
−アスペルガーと診断された人の反応は。
「他の人とどこか違う」「いじめられる理由が分からなかった」と思っていた人の中には、診断されて納得した、安心したという声がある一方、「障害者の烙印(らくいん)を押された」ととらえる人もいます。否定的に受け止めないように説明する配慮が必要です。
−アスペルガーの原因は分かっているのですか。
脳の機能障害といわれますが、どの部分かについての定説はまだありません。遺伝的な形質があるといわれています。
−二次障害の問題をよく聞きますね。
元の障害が原因で、会社や家庭などで対人関係がうまくいかず、心の傷が深くなり、うつ病や強迫性障害になる人は多いです。まずはこの治療をすることが大事です。
−有効な支援は。
社会生活を送る上で必要な技術を訓練する「デイケア」が有効ですが、大人の発達障害に対応する機関はまだほとんどありません。診断を受けても、支援を受けられない人が多いことも問題です。一般の人が容易に分かることを分からないという、一種の認知の問題ですから、支援は早いほどいいのですが。
−アスペルガーの人たちに助言を。
発達障害は本人のせいではありません。いじめられて不登校になるなど、自己評価が下がっている人も多いと思いますが、親などの周囲のせいにしたり、自暴自棄になったりしないでほしい。閉塞(へいそく)感を持った人は、デイケアや自助会のような環境で、孤立感を薄めるのもいいです。
優れた能力活用しよう
−周囲への助言は。
イライラしたり困ったりしている家族もいると思いますが、いい面を前向きに見てほしい。何かを伝える時は、直接的な表現を心掛けるといいですね。
職場でも、障害を理解することが何より大切で、対外交渉のような不向きな仕事は避けるべきです。でも、根気もあり、技術畑で評価を受けている人も多いし、アスペルガー症候群とみられる偉人もいます。ビジネスの難局を突破する際には異能が必要で、優れた能力を活用しない手はありません。=おわり
かとう・のぶまさ 1947年、愛知県稲沢市生まれ。東京大医学部卒。滋賀医科大教授、東大教授などを経て、2007年から昭和大医学部精神医学教室教授兼付属烏山病院長。著書に「ササッとわかる『大人のアスペルガー症候群』との接し方」「text精神医学」など。
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