2009-03-07
■[雑記]行列どころか誰も寄りつかない法律相談所

行政書士資格の取得を何となく初めてまだ半月で、民法の勉強を始めてまだ一週間経過したばかりのほやほやの法律初心者が考えた問題。
高等学校の生徒であるAは親のBが授業料を払わないことを理由に卒業証書の授与を拒否された。高校の処置は法的にみて妥当か。
私の見解
高校の処置は民法の規定に照らしても妥当ではない。従ってそもそも教育基本法か民法かどちらが先か、という問題ですらない。
そう考える理由。
高等学校の生徒は基本的に未成年、つまり制限行為能力者である。従って単独では特定の法律行為をのぞき、有効な法律行為を行えない。高校に入学するという契約も、「特定の場合」を逸脱しており、仮に契約が生徒本人であったとしても、必ず法的代理人を介在させなければならない。
つまり生徒Aと保護者Bと高校Cの関係は法的には「本人A」と「法的代理人B」と「相手方C」となる。
本件の場合、AからBに代理権が与えられており、Bは当然Aの代理であるという表示つまり顕名が成立している。Bの代理行為に対してCは高校に入学させ、卒業させる代わりに授業料を納入する、という契約を結んでおり、有効な代理行為は成立している。従って本件の場合、AとCの間にはBを代理人として法的行為を行うという代理の要件は成立している。その結果原則として本人と相手方の間に直接に法律効果が属することになる。高校側の卒業証書を渡さないという行為は本人に対して法律効果の帰属を求めていることになる。
しかしこの場合、相手方Cは本人Aに対して直接債務の履行を求めることはできない、と考える。その理由を次に述べる。
まず代理人Bの代理行為が権限内であると解釈した場合。この場合は民法99条に関連した判例(最判昭42・4・20)の示す「代理権限の濫用」に該当する。当該判例によれば「代理人が自己又は第三者の利益を図るため権限内の行為をしたときは、相手方が代理人の意図を知り又知ることを得べかりし場合に限り、民法九三条但書の類推適用により、本人はその行為の責任を負わない」とある。つまり相手方である学校が代理人Bつまり保護者の意図を知り、しることを得べかりし場合、つまり悪意であるか、有過失である場合は本人は代理人の行為の責任を負わないことになる。学校が代理人の意図を知り又知ることを得べかりしことは考えられない。つまり相手方に対して責任を負うべきは代理人である、と考える。
そもそも授業料を踏み倒す、という行為は「権限内の行為」であるかどうかが、問題となるだろう。代理人が権限外の行為を行なった場合は「無権代理行為」である。法定代理人が授業料を踏み倒す、という行為が代理人の権限外の行為であるならば、本人はなおさら責任を負う必要はない。責任を負うべきは無権代理行為を行った無権代理人Bつまり授業料を踏み倒した保護者である。無権代理人の責任は民法117条では「相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う」とある。しかし第二項によるとこの条項が適用されるのは相手方が「善意無過失」である場合となる。
ただ授業料を払う、払わないという決定も含めて本人Aに関する行為は基本的に法定代理人としての権限内であると私は考える。従って民法に従う限り、相手方である学校は法定代理人であるBに対して債務の履行を請求し、必要に応じては差し押さえなどの手段をとり得る、と考える。しかし卒業証書を渡さない、という形で本人の責任を問うことはできない、と考える。
- 12 http://b.hatena.ne.jp/hokusyu/
- 9 http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&rlz=1T4GPEA_jaJP305JP305&q=考えしめない
- 4 http://d.hatena.ne.jp/dj19/
- 4 http://www.yukimasami.com/sketchbook/index.php?id=9bb46a8e7d84eccd518dad30933eec6a
- 3 http://a.hatena.ne.jp/Bacchus19/simple
- 3 http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.asahi.com/national/update/0307/TKY200903070147.html
- 3 http://norevisionism.ring.hatena.ne.jp/
- 3 http://search.yahoo.co.jp/search?p=鉄コレ 10弾&search.x=1&fr=top_ga1&tid=top_ga1&ei=UTF-8
- 3 http://www.bloglines.com/myblogs_display?folder=77512906
- 2 http://a.hatena.ne.jp/D_Amon/
まず,本件事例について,代理人の権限濫用に関する法理が妥当することを前提にしても,「学校が代理人の意図を知り又知ることを得べかりしことは考えられない」とおっしゃるのですから,相手方に対して責任を負うべきは,代理人Bではなく,本人Cということになるのではないのでしょうか(ここは単純ミスですよね。)。
そして,そもそも,「授業料を踏み倒す。」という行為は,単に,債務の弁済をしないということにすぎないのですから,代理行為として意味のある行為とみなすことは困難であって,代理人の権限濫用や無権代理に関する法理を適用することはできないと思います(その代理行為によって,いかなる法律効果を本人に帰属させようとしたことになるのでしょうか。)。
一般に,代理人が,債務の弁済をしないからといって,もともと本人が負っていた債務が消滅するはずはなく,本人は,債務不履行の責任を負います。例えば,売買契約において,買主の代理人が,買主の意思に反し,不当不法な意図から,期日までに売買代金を支払わなかったため,売主が,商品の引き渡しを拒んだという事例を考えてください(売主の行為は違法となり得るでしょうか。)。
もちろん,上記は抽象論であり,純粋に民法ベースで考えるにしても,本件事例について論じるのであれば,当該在学契約の具体的内容,例えば,授業料弁済義務と卒業証書交付義務の関係などにも踏み込まねばならないでしょう。
ところで,話は変わりますが,2月23日付の記事について,「切生」は,手元の『新選古語辞典(改訂新版)』(小学館)にも,「切り斑・切り生」として載ってますね。Google ブック検索では,『保元物語注解』『曽我物語注解』の解説が読めます(http://books.google.com/books?hl=ja&as_brr=3&q=切生 &btnG=書籍の検索)。こっちは専門でもないので参考までにですが。
しかし、これは証書の授与と滞納の関係のことを言っているので、理由のない未納を免罪しているのではないと思います。島根県教委もですが、授業料回収を「その手法でするべきでない(他の方法で
やれ)」と言っているのではないかと。
「教育課程を修了した生徒への卒業証書の授与が義務付けられ」とは、未納だろうがなんだろうが卒業証書を授与せよ、というわけではなくて、未納(の程度のひどい場合)には出席停止、退学の措置がとられることはあり、そうなれば教育課程を修了できないから卒業できず当然に証書も授与されないわけです。そうした措置プロセスがなく、未納からストレートに「証書を授与しない」は不適切だ、ということではないでしょうか。
なお、鳥取県には未納の場合の規定があり、督促や相談、出席停止通知などのプロセスを経ても6カ月納付をせず、今後の納付見込みもないと判断した場合に退学処分があるとしています。「未納なら卒業証書授与せず」の通知をした高校は、1月に通知、2月が納付期限、3月に卒業式ですから、上記規定に比べてもえらく早いですね。受験シーズンでもあるし、相談する暇もないのでは(教師のほうも)。
私は個人的には学校にも同情するし、分からんでもないんですが、現職の教育者が「授業料未納にも関わらず学校と生徒の関係が維持されていることはおかしい」ということを放言することに違和感を感じてました。この問題を法律でどうこうしようというところで本当は間違っていたのかもしれません。