2010年4月26日 11時35分 更新:4月26日 12時53分
鳩山由紀夫首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」(友政懇)を巡る政治資金規正法違反事件で、東京第4検察審査会は26日、東京地検特捜部が首相を不起訴(容疑不十分)にした処分に問題はなかったとする「不起訴相当」を議決したと公表した。一方で「鳩山首相は虚偽記載や母からの莫大(ばくだい)な資金提供をまったく知らなかったというが、素朴な国民感情として考えがたい」などと付言した。
議決は21日付。国民から無作為に選ばれた11人の審査員が、元公設第1秘書、勝場啓二被告(59)=1審有罪=や会計責任者だった芳賀大輔・元政策秘書(55)=罰金30万円などの略式命令=の供述調書や、偽装献金の原資を提供した首相の実母(87)や首相の上申書などを基に審査した。多数決の結果、11人の過半数が、首相の不起訴処分に問題はないと判断した。
一方で、審査会は、特捜部が首相の聴取を見送った経緯も踏まえ「検察官の取り調べがなされなかったことも相まって、(母からの資金提供を知らなかったなどとする)鳩山首相の一方的な言い分にすぎない上申書の内容に疑問を投げかける声が少なからずあった」と付言した。
また、鳩山首相のような政治団体の代表者に対し、会計責任者の選任、監督の両方に落ち度がない限り刑事責任を問うことができない政治資金規正法について「政治家に都合のよい規定になっている」と言及。「監督責任だけで会社の上司が責任を取らされている世間一般の常識に合致していないので(規正法は)改正されるべきだとの意見が強く主張された」とも付言した。
鳩山首相の不起訴処分を巡っては、事件を告発した「鳩山由紀夫を告発する会」と名乗る団体が1月28日、審査会に不服を申し立てていた。【大場弘行、三木幸治】
鳩山首相の事務所関係者は不起訴相当の議決について「とりあえずほっとした。厳しい議決内容になるという予測もあって、実は総理も気にしていた。道義的な話はともかく、(起訴相当や不起訴不当で)再捜査となれば打撃だった。『国民からお墨付きをもらった』と開き直ることはしないが、厳正に審査をしてもらったと思っている」と歓迎した。
【09年】
6月16日 友愛政経懇話会の収支報告書で、故人から献金を受けたとする記載が発覚
30日 鳩山民主党代表側が計2178万円の虚偽記載があったとする調査結果を公表
7月3日 市民団体が政治資金規正法違反容疑で鳩山代表らの告発状を提出
9月16日 鳩山内閣発足
下旬 東京地検特捜部が捜査を開始
12月24日 特捜部が勝場啓二・元公設第1秘書を政治資金規正法違反で在宅起訴、会計責任者だった元政策秘書を略式起訴。鳩山首相は容疑不十分で不起訴処分に
【10年】
1月28日 市民団体が首相の不起訴を不当として検察審査会に審査申し立て
3月29日 勝場被告の初公判、即日結審
4月22日 東京地裁が勝場被告に禁固2年、執行猶予3年の有罪判決
26日 東京第4検察審査会が「不起訴相当」とする議決を公表(議決は21日付)
鳩山由紀夫首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」と関連政治団体「北海道友愛政経懇話会」の04~08年分の収支報告書に計4億円余の虚偽記載や不記載があったとされる政治資金規正法違反事件。東京地検特捜部は昨年12月、故人を含む延べ270人の名前を使って虚偽の記載をしたり、母や姉からの献金を記載しなかったなどとして会計事務担当者だった元公設第1秘書、勝場啓二被告(59)を在宅起訴し、東京地裁は22日、禁固2年、執行猶予3年(求刑・禁固2年)の判決を言い渡した。鳩山首相については共謀の事実がなく容疑不十分で不起訴とされた。