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検察審査会議決の要旨

 鳩山由紀夫首相の資金管理団体などの収支報告書虚偽記入事件で、首相らの不起訴処分を相当とした検察審査会議決の要旨は次の通り。
 【被疑事実の要旨】
 首相は友愛政経懇話会の代表者、元政策秘書は同会の会計責任者。
 (1)首相は元政策秘書と、会計責任者の職務代行者で元公設第1秘書の勝場啓二被告と共謀の上、2005年から08年にかけて4回にわたり、04年から07年の政治資金収支報告書に寄付者の氏名、金額を虚偽記入して総務大臣に提出した。
 (2)首相は会計責任者の選任及び監督について相当の注意を怠った。
 (3)首相と元政策秘書は09年6月、提出済みの収支報告書に、05年から07年に同会が首相から計約1771万円を借り入れたと虚偽記入した。
 【不起訴処分】
 各被疑事実につき嫌疑不十分。
 【検察審査会の判断】
 ▽被疑事実(1)
 (勝場被告の供述調書)
 1995年から09年まで会計責任者の職務代行者として会計事務を統括、収支報告書を作成・提出していた。元政策秘書は経理に口を出さなかった。鳩山事務所では元政策秘書が陳情処理などを、自分が経理全般を統括して役割分担していた。収支報告書は誰にも相談せずに一人で作成した。首相は事務所の経理に興味はなく、収支報告書を見せたこともない。虚偽の収支報告書作成は00年からで、会社や労働組合からの寄付が禁止されて資金繰りが苦しくなり、首相からの持ち出しが多くなったが、首相からきちんと資金を集めるように言われていたため虚偽の記入を始めた。
 (元政策秘書の供述調書)
 収支報告書の作成・提出の実務は勝場被告に全面的に任せていた。自分が収支報告書の内容を確認すらせず、虚偽の記入が見過ごされた。会計責任者として最低限の職責を果たしていなかった。
 (首相の上申書)
 自分は政治活動に専念していたので虚偽記入は知らない。2人から相談や報告もなく、適法に処理していると思っていた。会計責任者の選任・監督に落ち度があったとは思っていない。
 以上、関係者の供述は、首相が一切関与していないことで一致し、これを否定する証拠はない。
 なお一連の証拠によれば、02年ごろから09年まで同会などには首相の母親から1年間で1億8千万円が入金されている。首相は母親の資金が使われていることは知らなかったというが、審査会では、素朴な国民感情としてこのようなことは考え難く、首相の取り調べがなかったこともあり、首相の一方的な言い分にすぎない上申書の内容に疑問を投げ掛ける声もあった。
 ▽被疑事実(2)
 元政策秘書は首相の側近として長年重要なポストに就いてきた。人柄、能力の面で問題がある人物とは考えられず、会計責任者として選任したことに相当の注意義務を怠ったとはいえない。
 政治資金規正法25条2項で規定されている「選任および監督」の「および」とは、選任と監督の両方の要件を充足しない限り、相当の注意を怠ったとして責任を問えない。選任で問題がないとの結論になった以上、監督面を検討するまでもなく、刑事責任を問えない。
 なお「選任および監督」については、検察審査会の審査で「この要件は過多を要求し、政治家に都合のよい規定になっている。選任さえ問題がなければ監督不十分でも刑事責任に問われないというのは、監督責任だけで会社の上司らが責任を取らされる世間一般の常識に合致しない。本条項は改正されるべきだ」との意見が強く主張された。
 ▽被疑事実(3)
 勝場被告は、友愛政経懇話会に対する実際の寄付やパーティー収入による資金と、首相から預かった個人資産とを一体として管理し、懇話会の経費などを支払っていた事実が認められる。
 不足分は首相の個人資産から充当したことになるが、個人資産からの充当分は、返済の約束や予定もないので借入金と積極的に認定するのが困難。首相は自分が勝場被告に手渡していた資金がどのように利用されたかや、母からの資金提供があったことも全く認識していないので、首相からの寄付とも認定しがたい。
 資金の性質は、その時点では一義的に定まらない「仮受け金」的な性質を有するとみるのが妥当。収支報告書には「仮受け金」などの項目がなく、虚偽記入発覚後、最も近い性質を有する「借入金」項目を利用し、借入金に訂正したもので、直ちに虚偽とまではいえないとの検察官の考え方は首肯できる。
 【結論】
 不起訴処分は相当。


2010年04月26日月曜日

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