「民主主義は与えられるものではなく、奪い勝ち取るもの」。日本の教科書にはないが、そんな歴史を沖縄県民は先人から学んだ。
その教えと教訓が25日、読谷村で開催された「普天間飛行場の早期閉鎖・返還と、県内移設に反対し、国外・県外に移設を求める県民大会」で発揮された。
初の超党派の大会には出席が危ぶまれた仲井真弘多知事も登壇し、思想信条を超え、県民が心を一つに危険な基地の早期撤去と県内移設反対を日米両政府に突き付けた。会場には10万人近い県民が押し寄せ、戦後65年間、復帰後38年間も変わらぬ基地の過重負担に強い異議を唱えた。
政府の揺さぶり
「最低でも県外」と県民に公約した鳩山由紀夫首相は、もはや後戻りはできまい。新たな基地の県内建設という野望を捨て、危険な基地の撤去を急ぐべきだ。
県民大会で県民が口にしたのは、未来への約束、子どもたちへの誓いだ。それは「基地のない平和な沖縄の実現」だ。
次代の子どもたちに米軍基地の被害と負担を残さないこと。私たちの世代で基地被害や基地依存から脱却し、明るい未来を描く真っ白なキャンバスを残すこと。それが、県民大会に参加した人々の共通する願いであり、誓いだ。
仲井真知事は、大会直前まで参加をためらった。参加見送りを促す政府の圧力に悩んだか。
政府に盾を突くことで2年後に更新期を迎える政府の沖縄振興計画や振興策に悪影響が出ないか。財政依存度が全国に比べ突出する県経済だ。「ムチ」の痛みはどれほどか。
新基地建設容認と引き換えに自治体に支払われる基地交付金、基地建設に伴う大型の公共事業は、建設業の比重の高い沖縄にとって、手を伸ばしたくなるアメだ。
しかし、知事は大会出席を選択した。「日米同盟を肯定する」という知事でさえ「沖縄の負担は応分をはるかに超えている」と壇上で訴え、「普天間の危険性の早期除去」「過重な基地負担の軽減」の二つを政府に要求した。
同時に沖縄の次期振興計画の柱となる「沖縄21世紀ビジョン」の基本が「基地のない平和な沖縄」と強調した。
2030年までの長期ビジョンだが、知事は次代の子どもたちに「米軍基地の撤去」を誓った。
稲嶺進名護市長は、県民大会のうねりを「国民の民主主義を取り戻し、県民の人権を取り戻す闘い」と表現した。
ことし1月の市長選で普天間の辺野古移設現行案反対を訴え当選した稲嶺市長は、「オール沖縄で反対する原動力となり、先導役を担った名護市民を誇りに思う」と語り、政府内で再浮上する「辺野古回帰」の動きにくぎを刺した。
沖縄には在日米軍専用施設の74%が集中する。日米再編で合意された普天間など嘉手納基地より南の5基地が返還されても、占有率は70%を超える。
政府は「矛盾」解消を
「過重負担に耐え続ける県民に、世界一危険な基地一つ撤去できない政府」(伊波洋一宜野湾市長)への不信感が会場を包んだ。
高嶺善伸県議会議長は、「歓迎しないところに基地は置かない」と語った米元国防長官の言葉を引き合いに、「受け入れを歓迎、決議したテニアン、北マリアナになぜ移設しないのか」と矛盾を突いた。
「4・28」(1952年)は、サンフランシスコ講和条約が発効した戦後日本の「独立記念日」だ。だが、沖縄にとってその日は日本政府が沖縄を切り捨て、米軍統治に委ねた「屈辱の日」だ。
米軍統治下で沖縄住民は「銃剣とブルドーザー」で土地を収奪され、犯罪の限りを尽くす米兵らの被害に耐え、命を自衛し、「自治は神話」とさえ豪語する米支配者の圧政をはねのけ、自らの手で自治を奪い民主主義を勝ち取った。
政府が米国に委ねた施政権を返還させたのも、祖国復帰への心を一つにした住民運動だった。
痛めつけられてもくじけず、過重な負担に耐え、侵害された人権や奪われた権利、脅かされた生活を、常に県民は自らの手で取り戻し、勝ち取ってきた。
政府は5月末までに移設先を決断するという。大会決議をいかに実現するか。闘いはこれからだ。
4・25県民大会を、将来の基地撤去に向け県民の新たな挑戦が始まった日として胸に刻みたい。
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