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【産経抄】4月26日

2010.4.26 03:15
このニュースのトピックス産経抄

 上海万博のPRソング盗作疑惑は、てっきり解決済みだと思っていた。万博の実行委員会が、そっくりだと指摘された「そのままの君でいて」の作者、岡本真夜さんに使用許可申請を行ったからだ。ところが中国の報道によると、PRソングの作曲家側は、盗作疑惑を完全否定した。

 ▼万博をめぐっては、中国館の建築デザインや公式マスコットにも、模倣や盗作疑惑が出ている。岡田克也外相は会見で、「著作権保護の姿勢が出ている」と中国を評価しているけれど、実情はほど遠いようだ。

 ▼かつての日本も盗作天国だった。幕末から維新にかけて、深刻な被害に遭ったのが福沢諭吉だ。『西洋事情』から『学問のすゝめ』まで、当時のベストセラーとなった著作に、版元の発行部数を上回る海賊版が出回ったという。

 ▼業を煮やした福沢は、西洋の概念だった「コピライト」を「出版官許」と訳して、啓蒙(けいもう)に努めた。やがて訳語を「版権」に改める。「出版官許」ならば「政府より其出版を許すの趣意」となってしまうからだ。

 ▼「書を著はし事を記すは人々の見込にて勝手次第、他人の著述を盗むにあらざれば毫(ごう)も差支(さしつか)えあることなし」。海賊版の取り締まりを求めた東京府知事への願書のなかに、書いている。政治学者の丸山真男は、「『自由』の思想家福沢の方法意識がただ一語の翻訳にも見事に貫徹している」と称(たた)えた。

 ▼ところで福沢の名前は、19世紀末から日本の近代化に関心を寄せる中国の知識人の間ではよく知られてきた。ただ戦後は、「脱亜論」や日清戦争支持の言説から、批判の対象になることが多い、と聞く。著作権の保護を説き、それ以上に言論の自由の大切さを訴えた福沢の思想から、今こそ中国は学ぶべきではないか。

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