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きょうの社説 2010年4月26日
◎いしかわエコハウス 需要の創出に役立てたい
環境省の21世紀環境共生型住宅モデルとして完成した「いしかわエコハウス」(金沢
市鞍月2丁目)には、最新の家庭用風力発電機や地中熱を利用した換気システムなど、これからの家づくりに欠かせない省エネ設備・技術の粋が詰まっている。また、真夏の日射を防ぐ深いひさしや自然風が通り抜ける構造など、北陸の伝統的な暮らしの知恵を取り込んでおり、環境負荷を減らし、かつ快適な暮らしを実現するアイデアがめじろ押しである。不動産市況の低迷で、住宅産業の現状は厳しいが、北陸の持ち家需要はこのところ上昇 に転じている。住宅のエコポイント制度ともども「いしかわエコハウス」を住宅需要の創出に役立てたい。 いしかわエコハウスには、能登ヒバなどの県産材、県内企業が製造・販売している緑化 基盤材や風力発電装置、LED照明などが使われている。省エネ住宅としてだけでなく、県内産品を売り込むショールームとしての機能も期待できるのではないか。 最近の住宅は、高性能の断熱材や二重ガラス窓を取り入れ、冷暖房のエネルギーを外に 逃がさず、冬暖かく、夏涼しい省エネタイプが主流になっている。ただ、やみくもに断熱をすればよいわけではなく、換気や日射、通風、蓄熱、家屋の構造まで、トータルで考えた構造でなければ、省エネ効果が十分に発揮されない。 いしかわエコハウスは、北陸の気候風土に適した構造と、身近に手に入る地域の材料を 使うことを基本に、環境になるべく負担を掛けない方法で建てられた。風力や太陽熱、地熱など自然エネルギーを巧みに利用した設備や構造は、さすがによく考えられている。景観に配慮した住宅用太陽光発電パネルなど最先端の技術もさることながら、建物の向きや窓の位置等を工夫し、自然風を多く取り入れる構造など、先人の知恵を現代に生かす発想も新鮮だ。家庭からの二酸化炭素排出量を無理なく減らすためのヒントがここにある。 これから住宅を建てる人だけでなく、地元の工務店や業界関係者が技術を学び、共有し ていくために活用してほしい。
◎エネルギー計画 迫られる資源外交の強化
経済産業省が2030年を目標とする新たなエネルギー基本計画案を公表した。エネル
ギーの安全保障のため、原発を14基以上新設することや石油など化石燃料の自主開発比率の引き上げ、レアメタル(希少金属)の自給率向上などの目標を掲げているが、最近の資源需給動向で留意しなければならないのは、鉄鋼原料の鉄鉱石と原料炭の価格高騰である。その背景には、中国などアジアの鉄鋼需要の増大と、資源メジャーによる寡占化があり、政府はこの面からも資源確保の戦略と外交の強化を迫られている。新日本製鉄など国内の大手鉄鋼メーカーが4〜6月にブラジルの資源大手から輸入する 鉄鉱石価格は、09年度より約90%も引き上げられることになった。鉄鉱石は国際資源メジャー3社が約7割のシェアを占めるとされ、価格支配力を強めている。中国の粗鋼生産の急拡大などで鉄鉱石価格が上昇するなか、粗鋼生産のシェア縮小で価格交渉力の低下した国内鉄鋼メーカーは、資源メジャーの2倍近い値上げを受け入れざるを得なかったという。製鉄用の石炭も55%の値上げで合意した。 さらに鉄鉱石、原料炭ともこれまでの年間契約から3カ月ごとの短期契約となり、市場 の変動の影響を受けやすくなったことも見逃せない変化である。 鉄鋼原料の急騰は鋼材価格にはね返ってくる。鉄鋼大手と自動車メーカーなどとの間で 、厳しい鋼材価格交渉が進められているようだが、需要不足と競争の激化で商品価格への転嫁をしにくいデフレ経済にあって、資源高が企業の重荷になっている。 経産省の新たなエネルギー基本計画案では、開発権益を持つ日本企業による化石燃料( 石油、天然ガス、石炭)の自主開発比率を現在の26%から50%超にする目標を立て、資源国との関係強化や日本企業の権益獲得支援といった戦略を掲げている。こうした取り組みはエネルギー資源だけでなく鉄鋼原料などの確保でも当然欠かせない。資源獲得競争はいまや国同士の「総力戦」という認識を官民でさらに強める必要がある。
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